初出:第7巻、実際の登場は…
史実のアレイスター=クロウリーには異母姉妹含めて娘が4人・息子が1人いる。本作でも「ローラ」という妹(※ローラ・ザザ・クロウリー)がいる事が判明した。
概要
アレイスター=クロウリーとローズ=ケリーの第一子。女の子。
正式にはニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリス。寿限無寿限無のように長いので、後世の魔術研究家はリリスと呼んでいる。
彼女自身は史実でも本作でも腸チフスによって生後1年半でこの世を去った為、他の妹弟との面識は無い。
史実通り、クロウリーはリリスの死でローズに八つ当たり・責め立て、酒浸りにさせアルコール中毒に至らせたと一世紀後に自嘲している(二人目の娘ローラにも嫌われたとか)。
初出は第7巻、つまり彼女の父親クロウリーに纏わる〈法の書〉の話。
7巻 ステイル:
エドワード=アレクサンダー。またの名をクロウリー。今はイギリスの片田舎の墓の中で眠っている。一言で言えば、最悪の人間だったと記録されているね
ある魔術実験では守護天使エイワスと接触する器として共に世界旅行に出かけていた妻の体を旅先で使っているし、娘のリリスが死んだ時も顔色一つ変えずにmagickの理論講築を行っていたそうだ。しかも、その実験では娘と同い年ぐらいの少女達を犠牲にしていたらしい
……一応、それらの功績として別世界───天界や魔界などと呼ばれる『層の異なる重なった界』の新定義を見出し、それまでの魔術様式を一新したんだがね
学園都市/科学サイドの成立へ
後世ではステイルの台詞の様に伝わっているが、人物の心情は全く違う。
彼女は両親から愛された。それはクロウリーが長ったらしい魔術的意味を込めた名前を付けたことからも明らかである。
なにせリリスの「死」がクロウリーをテレマに奔らせ、さらに学園都市つまり科学サイドの誕生にも繋がっているのだから。
リリスの真の死因
魔術の火花(飛沫)は、人の運命そのものだった。
あらゆる神話/宗教観が投影された「位相」は魔術の根本である。だが統合された魔術理論は幾重にも重なった位相同士の軋轢・接触を誘発し、結果として火花・飛沫とも呼ばれる人の運命が生じ、世界に作用してしまう。
人の生死、コイントスの表裏、出会いと別れ、その日のコース料理の順番だって魔術から生じた火花(運命)の影響とされている。
アレイスター=クロウリーは、絶対の師であり友と仰ぐアラン=ベネットから将来的に生まれるクロウリーの子が、その運命の影響で死ぬ事を予言された。
そして黄金系の通常の追儺儀式では火花を防げないが、黄金だけが火花を遮断する方法を確立、すなわち究極の追儺霊装の庇護下にあるとも…。
この後クロウリーは〈ブライスロードの戦い〉を仕組み、黄金を破滅・分裂に追い込む。そしてローズ=ケリーがリリスを身ごもっている時期に聖守護天使エイワスをローズの体に召喚し、新たな時代の到来を告げる〈法の書〉の霊智を授かった。
クロウリーはリリスの死を回避するために奔走した。かの有名なクロウリーのK2登山だって、その一環だった。それでもリリスの死を回避することは出来ず、手紙で彼女の死を知り、死に際に傍に居ることも出来なかった。
その後クロウリーの人生は転落していく。サハラの砂漠で弟子のニューバーグと共に悪魔を召喚したり、テレマ僧院を設立した後、西洋に悪名を轟かせて1947年に死亡した。
第二次世界大戦後、実は生きていたクロウリーはリリスのような悲劇を起こさせないために、何よりも人が自分の運命を自分の選択で勝ち取るために、科学に偽装したテレマの僧院「学園都市」、つまり科学サイドを創った。
クロウリーが世界を2つに切り分けたのも、彼女の「死」に起因すると言っていい。
お嬢様リリス?
新約13巻で「運命論に命を奪われた私の娘」として、さらに新約14巻と新約17巻でも地の文で部分的に触れられたが、本人は新約18巻の過去幻視(回想シーン)で初登場。魔術師のクロウリーが科学(テレマ)を掲げる理由であることも確定した。
そして新約19巻、浜面仕上は追われている最中に放置された車のトランクにてリリスという赤ちゃんを発見(衣服付のタグに英語で名前が書かれていた)。リリスは浜面・滝壺の新アイテム構成員に保護された。
リリスとエイワス
浜面が発見したリリスは、まさにクロウリーの娘ニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリスその人である。1904年にエイワスがローズの体に召喚された際、リリスの存在を解析し、生命力を位相に待避させていた様子。
エイワスは報われないクロウリーへの救済のために、わざわざローズの体に憑依した。一世紀もの間、幸福のための努力を怠らなかったクロウリーの血と汗と涙の重さが、リリスとして現世に結実した瞬間であった。クロウリーがリリスの肉の器を作るまでの間、位相側で保護しておいたとか(だがその理由は……)。
リリスは霊的な格が高く、術式や量子力学に頼らずに思念だけで超常現象を発生させる事ができる。聖守護天使エイワスを通して何らかの力が浸透しているという。
現状、「肉の器」は間に合っておらず、むき出しの魂と生命力だけのリリスも非常に不安定であり、現世に生誕してすぐ「高熱」に悩まされる。
治そうにも病院は学園都市の医療データベースにアクセスできないため機能しなかった。その理由がA・O・フランキスカとのスーツ同士の競合によるものと判明、追われる浜面はフランキスカを迎撃したが窮地に立たされた。
しかしリリスは言葉を発し、その思念の力で浜面を助けた。何故かお嬢様言葉だったが……順調に成長していればこうなっていたという事だろうか。
木製の乳母とベビーカーを自身の手足の代わりに用い、言葉も乳母を介して発している。だからなのか「~と代読中」という禁書史上最大級に変な語尾がつく。
父クロウリーとの再会
大人気がなさ過ぎでしてよクソ野郎!! 何ですのその格好?人がわざわざ奇跡の大復活を遂げて感動のご対面をしようって時にどうしてあなたが私以上に女の子女の子しているんですの!?知らぬ間に性転換して下手すりゃ自分の娘よりかわゆく変貌した『父親』を私はどんな顔で迎え入れたら良いっていうのでして!?普通にしていれば無理なく泣きに繋がるこの場面を無理矢理笑いに変えるんじゃねえよまったくもおーっ!! と代読中
とりあえず助走をつけてぶん殴った。クロウリーも接し方が分からずに暫く言及を避けていたが、
「たとえ君がどのような人間だろうが、それでも幸せになるための努力を常に怠るな」
「しあわせになる事から、怯えて逃げるな。アレイスター=クロウリー」
それは幸せになることから怯えて逃げていただけだと、記事では要約したがこのようなエイワスとミナ=メイザースの言葉を受け取った。クロウリーは力を使い果たして眠っている娘を腕の中に抱く。それが魔術師クロウリーの冷え切った魂に再び火が灯った瞬間だった。
新約19巻の最後~あとがき後には、ただ父(?)と娘の姿があった。
新約20~新約22巻リバース
ひとまずミナ=メイザースに保護されている。
しかし新約21巻では木原脳幹とアラン=ベネット(スワミ=マイトラナンダ)を名乗るカエル顔の医者がクロウリーの指示を受けてふらりとエジプトに立ち寄り、リリスの記憶や人格などの各パーソナルデータを完璧に保管する肉の培養を進めている。
新約22巻で“彼女達”の目的が判明する。
「原罪なき魂」のリリスはコロンゾンを対消滅させる唯一の手段だった。だからこそエイワスは不可解なタイミングでリリスを再誕させたのである。
(正確にはアンナ=シュプレンゲルの指示。彼女の暇つぶしのためにリリスの魂を退避させ、また現世の表層に再誕させたとその巻の最後で判明した。だが同時にエイワスの思惑も異なる可能性が示唆されたため確定してない)
クロウリーはコロンゾンを消滅させる方法に気付いた。リリスはそれを肯定、クロウリーは子供のように駄々をこねて反発する。
しかし上条は真正面から救済の意思を示し、それに同調して各々リリスの魂を消費する行為に反対する。リリスは狼狽したが最終的にはミナ=メイザースの一喝で黙らされた。彼女が言う通り、誰も幼子の自殺みたいな胸糞悪い話は見たくないのだ。
結局、シュプレンゲル嬢の期待に応える(※クロウリーがリリスの魂を消費する)ことは無く、一連の騒動は収束を迎えた。
リリスの「妹」
マッチ売りの少女の死後の物語に例えられる彼女だが、「妹」や「死亡して表舞台から退場したクロウリー」とのその後など、まだまだ気になる要素が残っている。
特に新約19巻では「悪魔に支配された私の妹」という台詞が強調されているが、新約21巻のコロンゾンの正体を知っているような彼女の反応とは全く噛み合わない。
ちなみに新約19巻の発言の際、近くには当時コロンゾンの支配下に置かれたインデックスと烏丸府蘭もいた。ミスリードか、もしくは単なる誤解か…。
関連タグ
ローラ=スチュアート:同じく7巻が初出。史実での実妹ローラ・ザザ・クロウリーを連想させる名前だがその正体は…?
インデックス:読者の間ではクローンか同一人物と予想されている。理由としてはクロウリーと同じ銀髪碧眼だったり、ローラ・ザザ説があるローラ=スチュアートのデザインが成長したインデックスを想定しているため(はいむら公式サイトより)。