機動戦士ガンダムSEEDシリーズに登場する架空の推進システム。
名前は仏語で『光り輝ける運び手』を意味する…とのことだが「voiture lumière」を直訳すると「車のライト」になる。
初出は「機動戦士ガンダムSEEDC.E.73STARGAZER」の「スターゲイザーガンダム」で、稼働させた際の副産物としていくつもの緑の光輪を身に纏う。
ウイング・バインダーとして搭載した後続機は光の翼のように描写される。
概要
太陽から放出される太陽風や、荷電粒子をリング周囲に展開した微細な量子の膜で受け止め、何らかのエネルギー変換を経て推進力とする惑星間航行用の推進器。
適切な太陽風の供給があれば、推進剤を全く消費する事無く理論上永続的に加速し続ける事が可能である(無論、機体強度の限界を無視した場合の仮定である)。最も、稼働時の量子被膜形成には電力がいるようで、『STARGAZER』作中では金星圏から離脱する際にストライクノワールのエネルギーを拝借している。また、スターゲイザーに搭載されたタイプはエネルギー変換の際に荷電粒子が周囲に対流する副次効果があり、これで対象物に攻撃する事もできた。
劇中に言及されていた通り太陽風から受けられるエネルギーは小さいため、加速力は非常に緩慢なものであり、急激な加減速を必要とする戦闘機動には全く向かない。ただし、装置が元々荷電粒子ビームを受けてレーザー推進できる代物であったためにスターゲイザーがストライクノワールを掴み太陽目掛けて急加速したときには、コロニーからレーザーを照射することで推力を得ている。
備考
公称では『ソーラーセイル』の一種とされているが、ソーラーセイルは光子が対象物に当たった際の光圧を用いたある種の作用反作用による推進を行うものであるため、太陽風や荷電粒子を推進力に利用するヴォワチュール・リュミエールの技術はかなり変化球な代物である。
SF世界では比較的ポピュラーな宇宙船の推進方法であり、外部からのレーザー照射で加速も可能なタイプは1974年の『神の目の小さな塵』においても登場する。これは作中で『ライトセイル』と呼ばれたもので、船内に存在する光子源と反射鏡をセットにし自発的な推進も可能な光子ロケットの一種でもあった。
ソーラーセイルそのものは現実でも一部で研究が進んでおり、2010年にはJAXAの『イカロス』によって実証された。
軍事用のMSへの転用
元々は純粋な惑星間航行システムであったこの技術は、とある事件をきっかけに流出してしまい、デスティニーガンダムやストライクフリーダムガンダムといった軍事用のMSののウイング・バインダーとして搭載される結果となり、あろうことか民間のジャンク屋にまで流出したため、ガンダムアストレイレッドフレーム・改や火星開拓団のモビルスーツ「ターンデルタ」にも搭載されてしまった。
上記の通り本来は急激な加減速に対応できないシステムであるが、レーザー推進の応用によりある程度の加減速を行えるようになった。ただし膨大な電力が必要となり、バッテリー駆動のMSでは起動したとしても、ほんの数分間しか稼動することが出来ない。ヴォワチュールは本来、エネルギーを使わない長距離移動用の推進システムである。レーザーを使用する推進で、なおかつ高速移動に使われるのは想定外であるため、稼動に大電力が必要なのも頷けよう。
これらの導入された機体の半数(主に軍事用)は核動力あるいはハイパー・デュートリオンで稼働しており、核動力機で懸念されていた推進剤切れという弱点を(ある程度ではあるものの)フォローする結果となってしまい、より強力なMSの開発を後押しする形となってしまっている。
なお、本システムは基本的にスラスターとしての使用がメインではあるが、システムを搭載した機体を中心に展開する事でエリア内の物質を検知するセンサーとして機能する側面を持つ。このセンサーはミラージュコロイドステルスを展開した機体の捕捉に活用できる。