アブラゼミ
あぶらぜみ
カメムシ目セミ科の昆虫。
日本に棲息する蝉でも代表的な種の一つ。
近年は温暖化と都市開発から、徐々に姿を消しつつある。
概説
ヒグラシ、クマゼミ、ミンミンゼミと並ぶ、日本に棲息する有名なセミの一種。
蒼黒い体に、胸部背面に赤茶の斑点、胴体に白い筋をもち、褐色の翅を有する。
バラ科の樹木を好む。そこからリンゴ・梨農家からは害虫指定される場合がある。
名前の由来は「翅があぶらとり紙に似る」から、「油で揚げるような鳴き声だから」など、諸説ある。
その鳴き声は「ジジジ……」と、一定の時間を継続的に鳴き続ける。
鳴くのは主に午後から、特に夕方近くからが多い。そのため「夜鳴き」の性質を持ち、地域によってはヒグラシに混じって日暮れまで鳴いていることがある。
幼虫期は地下に6年の間潜伏するが、地上ではわずか1週間ほどしか生きられない。
アブラゼミの減少
近年、アブラゼミの生息域が大きく狭まっている。
最大の原因は生息域の都市化であるという。
アブラゼミは森林に適用した種であり、比較的に涼しく湿度の高い場所で繁殖する性質を持つ。
そのため夏場に過熱し、また乾燥しやすい都市部は、アブラゼミにとっては棲みづらく、また繁殖力と乾燥に強いクマゼミと比較して、都会に適合できなかったことから都市部からは姿を消してしまった。
特に東北地方と北陸地方など北日本の都市部ではその影響が顕著で、暑さに強いミンミンゼミの勢力拡大も手伝って、劇的に数を減らしてしまった。
また鳥などの捕食者に対する対抗策も、クマゼミは「逃げるが勝ち」とすぐさま飛び去るのに対し、アブラゼミは「動けば負け」と相手が去るのを待つことが多い。身を隠す物の少ない都市部では不利な生存戦術ゆえ、そうした面でも都会との相性は良くないらしい。
ところがアブラゼミもやられっぱなしというわけでもないようで、北陸地方、特に石川県白山周辺では、近年ミンミンゼミを追い散らす勢いで大繁殖しているという報告が上がっている。