竪穴式住居は、地表を掘りくぼめ、屋根をかぶせた住居のこと。古語では「穴居」(けっきょ)という。対して地面を掘り下げない住居を「平地住居」、基礎の上に床を張る住居を「高床式住居」という。
「竪穴」といってもほとんどは1メートル未満の浅いものだが、北海道の一部住居では2メートルから2.5メートルもの深いものがあり、梯子を下って出入りしたものと推測される。
竪穴式住居は世界各地の石器文化で広くみられ、日本では旧石器時代末期から造られはじめたと考えられている。縄文時代に北海道から沖縄まで盛んにつくられ、弥生時代以降にも引き継がれた。古墳時代から高床式住居に移行していき、飛鳥時代から平安時代にかけて庶民の住居も平地住居に移行していくが、寒冷な東北地方では鎌倉時代までつくられていた。
また近世に至っても樺太や千島列島のアイヌは、トイチセと呼ばれる竪穴式住居を冬の住居として利用していた(春になると平地に建てたチセに移る)。
長所と短所
地面に掘った穴に屋根をかぶせるだけでよく壁を作らなくてよいので施工が簡単。また素人施工ではどうしても隙間風が吹き込んでしまうが、屋根に土をかぶせることでとても暖かく過ごせた。
しかし、通風が非常に悪く夏でも中は暗く、日本のように湿潤な気候の地域では湿気に悩まされること請け合い。竪穴住居には必ず炉が設けられているが、湿気対策として夏でも住居を煙で燻すことが欠かせなかったためと考えられる。
どちらかといえば寒冷地向きの住居であったが、沖縄でも竪穴式住居に住むのが縄文人のライフスタイル。弥生時代になると平地式や高床式の建物が建てられるようになるが、これらの建物は倉庫であり、弥生人の多くは相変わらず竪穴式住居に住んでいた。竪穴式住居に住まうことは、合理的理由というより原日本人のアイデンティティに根差したものだったのかもしれない。