美智子はかつて、素晴らしい芸者だった。
赤い着物を着た彼女がひらひら舞うと、それはまるで羽根を広げた赤い蝶のようだった。
しかし今となっては、彼女の舞を直視する勇気のある者はいない。
概要
芸者とはスマートフォンアプリIdentityVに登場するキャラクター、ハンターの一人である。
本名は「美智子」。苗字は不明。
容姿
芸者という呼び名の通り、小刀を仕込んだ扇子片手に赤い着物に身を包み、結い上げた長い黒髪を二つにしておろしている。普段はその状態でしずしずと歩くが、激怒すると豹変し、般若の面をつけ髪を振り乱しながら宙を舞う。
性能
スキルは視界内にいるサバイバーに高速で接近する「刹那生滅」、空に飛びあがって広範囲の索敵を行う「離魄移魂」の二種。刹那生滅は存在感0から使用でき、最大まで溜めると性能がアップしてより速く接近できる。
外在人格「三役」
芸者は行動によって下記の三種類の形態に変化する。
同じように複数の形態を持つ白黒無常(IdentityV)と違い、任意のタイミングで切り替えることはできない。
- 美人相
ゲーム開始直後の基本形態。移動速度は高く、警戒半径も狭い。窓枠超えなど、一部を除いた何かしらのアクションを起こすと下記の般若相に変化する。
この形態では楽しそうに鼻歌を歌ったり、何も操作せずに放置していると舞を踊ることがある。意外と声が可愛いので必見。
- 般若相
攻撃をする、スキルを使用する、板を壊すといったアクションの他、サバイバーから攻撃されるなどするとこの形態に移行する。美人相と比べて移動速度は低く、警戒半径は大きいなどデメリットが多い。
般若相になると画面中央下あたりに左右で表情の違う芸者の顔を模したゲージが出現。時間経過とともにゲージが減っていき、ゼロになると美人相に戻る。
ゲージがなくなるまでに般若相になる条件を満たすとゲージが最大になり、最初からやり直しになる。
- 狼狽相
美智子は他人の視線を非常に恐れている。それは狩る対象であるサバイバーであっても例外ではなく、顔を見られると扇で顔を隠してしまう。
この形態になると移動速度が落ちる(般若相の時はさらに遅くなる)上、スキルも使用不可能になるなどいいことが一つもない。
ちなみに扇で顔を隠しているが懐中電灯の効果は無効化されない。寧ろ移動速度低下と相まって怯ませられやすい点に注意が必要。
長所
やはり存在感0から使用できる刹那生滅による索敵と追跡が最大の武器。視線さえ通っていれば倒した板や窓枠、背の低い障害物などを無視してサバイバーに肉薄することが可能なため、聖心病院外周など見通しのいい開けた場所では有利。特質の瞬間移動などと違ってクールタイムも8秒と非常に短い。
刹那生滅の範囲内にいる相手の頭上には赤い鬼のアイコンが、顔を合わせている相手の頭上には青い扇子のアイコンがそれぞれ表示される。プレイヤーがサバイバーを視認できていなくても自動でアイコンが表示されるため、内在人格の「耳鳴り」と併用するとサバイバーを見つけるのは非常に簡単である。
短所
長所の項では「刹那生滅による索敵と追跡が得意」と書いたが、敢えて悪い言い方をするならば「それが全部」なハンターである。
特に芸者の攻撃は他のハンターと比較しても発生の遅さ、リーチ、範囲ともに極端なまでに狭く慣れないと非常に当てづらい。リッパー(IdentityV)の霧の刃や断罪狩人のフックといった遠距離攻撃スキルもない。その上当たったか否かに関わらず、攻撃すると自動で足の遅い般若相に変化してしまうのも難点である。サバイバーの中でもチェイスが得意なうえ、最初から懐中電灯を装備している泥棒は芸者の天敵といえる。
最大の特徴である刹那生滅についても、スキルでの接近中にサバイバーに注視される、サバイバーが障害物の後ろを通るなどして視線が切れてしまうとその時点で追跡を中断してしまう上に、この時も般若相になってしまうため、スキルのクールタイムが終わるか美人相に戻るまでは般若相の状態でゆっくり追いかけるしかない。また、道化師(IdentityV)のダッシュと違って刹那生滅自体に攻撃判定はないため接近したあとは直接攻撃を加えないといけず、前述した攻撃の当てづらさ、移動速度低下のデメリットを背負って的確に攻撃を当てる腕が要求される。高ランクだと芸者相手に慣れたサバイバーにすいすい攻撃を躱され、一人に時間をかけ過ぎた結果敗北なんて珍しくもない。
なんとか攻撃を当ててサバイバーをロケットチェアに拘束しても、復讐者(IdentityV)のパペットや結魂者(IdentityV)のクモの巣といったサバイバーを監視・牽制できるスキルがないのも厳しい。上空に飛び上がる離魄移魂で一応周囲の索敵はできるものの、上記の通りサバイバーが芸者の方を向いていると刹那必滅は使用できず、ましてや飛行中は刹那生滅以外の移動手段がないためにスキルを空振りすると地上に降りる以外に何もできない。離魄移魂発生前後の隙も非常に大きく、迂闊に使用するとかえってピンチを招きやすい。
なおあまり知られていないが、離魄移魂で地上に降りる際に攻撃判定が発生する。といってもこれも範囲は狭く、狙って出すのはお勧めできない。
当然ながら天井のある建物内や湖景村の廃船ではスキルの使用はできない。できなくても特に問題ないが。
そもそも近辺の索敵を行うなら「耳鳴り」で事足りるため、わざわざ隙の大きい離魄移魂を使う場面は少ないだろう。
【相性のいい内在人格】
得意なチェイスを更に有利にする「閉鎖空間」、攻撃を当てづらい分一撃に賭ける「引き留める(ノーワン)」は最低どちらか一つは装着しておきたい。
逆に時間経過で存在感が上昇する「傲慢」は芸者にとって存在感を上げるメリットがあまりないため他の内在人格を蹴ってまでつける必要はない。
サバイバーの芸者対策
前述した通り芸者の追尾能力はとても高く、一度見つかると完全に逃げ切るのは難しい。そのため芸者を相手にするときは逃げるよりも恐れず立ち向かうような動きが重要になる。
サバイバーが芸者の視界内に入ると画面右側に赤く光る芸者の顔のアイコンが出現し、それをタップすると後ろ歩きになり芸者を注視する視点に切り替わる(もう一度アイコンをタップするか、視線が切れると通常の視点に戻る)。
刹那生滅を封じられた芸者は上記したように足が遅く攻撃範囲も狭いハンターでしかないため、攻撃タイミングに合わせて脇をすり抜けるように急旋回すれば意外と簡単に避けられる。チェイスに自信があるならそのまま一人で芸者を翻弄し、他の仲間に暗号解読を進ませられれば勝利は容易い。ただし、後ろ歩きの視点では進行方向に注意しないと壁にぶつかって一気に距離を詰められ窮地に陥る可能性があるため油断は禁物。
余談
pixiv内においては「芸者」「芸者(IdentityV)」より「美智子」のタグがつけられていることが多いので検索する際はそちらを使おう。
中国では美智子の過去が掘り下げられたものと、リッパーとの関係が記されたアニメも公開されている。
日本へ来る日は来るのだろうか、楽しみである。
勘違いされている方も多いが、美智子は吉原(江戸)、つまり現代でいう東京の芸者である。京都の芸者となると名称が芸妓となるため、注意されたし。
衣装(スキン)一覧
初期衣装 | |
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白無垢 | 花嫁 |
正統派な白無垢であるが、般若相の際は白無垢が真っ赤に染まり、仮面がより凶悪なものとなり、普段より一層髪を振り乱す。 | ピッチリとしたウェディングドレスで、髪がブロンドになっていたり通常からベール付きの仮面を身に着けているなど印象ががらりと変わる。後述の般若相の時は全体的に衣装が黒くなり、仮面がとげとげしいものに変わる。かつてはこのドレスを着ることを夢見、大切な人を失ってから手に入れたものらしい。また、着物と違い身体のラインがはっきり出るデザイン故、美智子のスタイルの良さがよくわかる。 |
丹頂鶴 | |
白と黒を基調とした装束を身に纏う姿は、吉祥を象徴する鶴のように美しい… しかし、真紅の装束を身に纏う姿を見た者は、全て彼岸の者になった奇譚も存在している… | |
白孔雀 | 紫孔雀 |
忘憂 | 梅姫 |
海棠(かいどう) | 林中の影 |
秋の萩 | 白い鯉 |
黄色い袖 | 紫色の上着 |
青い衣服 | 薄紅の影 |
関連タグ
背景推理(ネタバレ注意!)
この先ゲーム内における「背景推理」のネタバレを含みます。
1.故郷 | ここは、ご先祖様の終着点であり、私達の始まりの地。 |
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日記の1ページ:置屋に入る時、私はそこを眠り続ける街と呼んでいた。深夜の街は、深い眠りに包まれ、動いているものはとても目についた。 | |
2.置屋 | 嵐の流れに身を任せる浮き草のようなこの身。どうして風を恐れるものか。 |
1枚の写真:年若い女の子が花魁の伴奏のため三味線を弾いている。 | |
3.芽生え | いつの日か、お前も喜びと悲しみを運んでくれる彼の人に会うであろう。 |
1枚の写真:お座敷で端正な顔立ちの若者が酒を飲みながら虹色の和服に身を包んだ若き芸者の舞いを堪能している。 | |
4.旦那 | 夏虫の如く愚かで、己の命をも惜しまず火に飛び入る。 |
2枚の乗船券:古いもののようだが、保存状態がいい。 | |
5.臆病 | ここは、まったくの見知らぬ国。女性たちは、派手な帽子を身に着けている。 |
帽子飾り:6インチほどある美しい蝶の帽子飾り。その先端はとても尖っている。 | |
6.暗雲 | 彼が遠出をすることになり、記念に一緒に写真を撮ることにした。 |
1枚の写真:和服を着た若い女性とその夫が、暗い表情をしている老人の後ろにたたずむ。写真の後ろには「人を不愉快にさせる女」と書かれている。 | |
7.寒気 | 人の心は、他人には変えられない。 |
とある電報:妻駆け落ち、すぐ戻れ。父 | |
8.恋愛 | 貴方の枕元を行き交う、その思いは断ち切れるものではない。 |
1枚の写真:憔悴しきった青年が街角で、尋ね人のビラ貼り付けている。ビラには恥ずかしそうに映っている者の写真が印刷されている。 | |
9.怨念 | 思いを断ち切れず、その気持ちは恨みに変わる。 |
日記の1ページ:あの人は、本当にこのこと知らないのか?いや、あの帽子飾りは…きっと知っているはず。知っていなければおかしいはず。 | |
10.再生 | 全てを忘れるとは簡単に言うけれど、心に巣くう鬼を追い出したところで人として再び生きていくことはできない。 |
しかし、消え去るまで、一体どこにいるべきなのだろうか? |
背景ストーリー
美智子はかつて吉原遊郭で最も名が知れていた芸者だった。彼女が赤い着物を纏い舞を披露する姿は、まるで翼を羽ばたかせる紅蝶のようだった。そんなある日、彼女はとある宴会でマールスという名の異国の紳士に出会った。マールスは薄く頬を染めた様子の美智子に一目惚れし、二人は当地で式を挙げ、彼の故郷へと向かった。
しかしマールスの家族はこの新婚夫婦を認めようとしなかった。中でも父親の反対が一番激しく、全うな家族にこんな婦人を嫁に入れてはいけないと騒いでいた。マールスの心が変わることは無かったが、その後彼は上司の命令を受け、印度に6ヶ月間出張することになる。美智子が印度生活に慣れるか心配だった為、彼女を家に置いて行くことにした。これがすべての不幸の始まりだったのだ。
マールスが帰国する1週間前、濃厚な霧が漂う深夜、美智子が失踪した。彼女は用人と駆け落ちし、おまけに家の財産を一部盗んでいったと、マールスの父はそう言い張った。当然マールスはそんな言葉を信じず、毎日外で妻を探し回った。しかし誰もあの可憐な東方美人を再び見かけることはできない。それは彼女自身だってそうだった。