概要
風の伝説ザナドゥとは、日本ファルコムのARPGシリーズ。1994年、PCエンジン用として日本ファルコムが発表したARPGシリーズ。同社の「ドラゴンスレイヤーシリーズ」の第8作であり、また同社としては初めての家庭用ゲーム機本格参入作品でもある。CD-ROMの大容量を活かしたアニメーション、音声をふんだんに使用したシナリオ演出が光る作品。
1995年に続編であり完結作である「風の伝説ザナドゥⅡ」が発売された。
ゲーム概要
1994年、PCエンジン SUPER CD-ROM²用タイトルとして発表。日本ファルコムが自ら家庭用ゲーム機向けにパブリッシュした最初の作品である。同社のドラゴンスレイヤーシリーズの第8作であり、シリーズ最終作でもある。
ドラゴンスレイヤーシリーズには同じく「ザナドゥ」というタイトルのゲームが存在するが(ドラゴンスレイヤー2に相当)、本作はオマージュしている部分はあるが基本的に独立したタイトルとなっており、直接の関連作という訳ではない。
SUPER CD-ROM²の大容量と高性能を活かし、当時としては珍しかったアニメーションムービーでのイベント描写、随所で展開されるボイス付きイベント、またCD音源を活かした高品質なBGMなど、当時の作品としては飛び抜けて豪華な内容であった。オープニングムービーで流れるテーマソング「風の伝説」は清涼感と疾走感あふれる名曲として人気が高い。
また、この当時のファルコムは自社作品のメディアミックス展開を積極的に行っており、当作品もラジオドラマ「風の伝説ザナドゥⅡ ヒロイン達の誕生日」や、他のファルコムキャラと共演するラジオドラマ「TARAKOぱっぱらパラダイス」が発表されている。
一方で、過去作品を現代の技術でリメイク移植することを好む日本ファルコムには珍しく、2019年6月時点において直接のリメイク作は存在せず、またキャラクターの他作登場も現時点では存在しない(アリオスに至っては「軌跡シリーズ」に名前を取られる始末である)幻の名作と化しつつある。
また当時、PCエンジンFAN誌上で、近藤敏信氏によるコミック版「風の伝説ザナドゥ The Rebirth of Dragon Slayer」の連載もされていたが、単行本化はされておらず、こちらも幻のコミックとなっている。
ゲームシステム
フィールド探索パートと、ボス戦闘パートに大別される。
フィールド探索パートでは、平面で描写されたフィールドを、主人公アリオスを操作して探索を行う。
戦闘シーンへの移行は存在せず、敵への攻撃は直接の体当たりで行う。この時、攻撃相手に対して1/2キャラずらした状態で体当たりすると一方的に攻撃ができる(初期イースシリーズのシステムに類似しているとすれば理解しやすかろう)。
ボス戦闘パートではフィールド描写はサイドビュー形式となり、アリオスを操作してステージを踏破しボスとの戦闘を行う。鈴アイテムを取得することで仲間が駆けつけ、支援攻撃を行ってくれる。
なお、本作においてはレベルシステムは存在せず、アリオスのステータスは装備の交換と、それを使い込むことによる熟練度の上昇によって強化される。
ストーリー
アイネアス叙事詩に語られる英雄王アイネアス。蛇竜ダルダンディスとの壮絶な戦いを制し、クレーネジュエルによって世界に魔法の力の恩恵をもたらした英雄王の子孫、アリオス・アレクトルは、王都の百騎長となる程の戦果を挙げていたが、それ故に部下である無敵将軍ダイモスと共に辺境への左遷を余儀なくされていた。
西の辺境マクリアで、満足な武具さえ持たぬ雑兵達を束ね、魔軍の将軍カコースの本陣へ攻め入ったアリオスとダイモスであったが、敵軍の罠にかかり挟撃を受けて絶体絶命の状況に陥る。
事態を打開するため敵軍に単身斬り込むダイモス。彼を引き留めんと声を上げるアリオスを、何者かは突如連れ去ってしまう…
主な登場人物
アリオス(アリオス・アレクトル)
シリーズの主人公。英雄王アイネアスの子孫にあたる。一族の里を出て、身分を隠して王都に出て、百騎長に出世する。アリオスの出世を妬んだ者たちによって辺境のクロノスのモンスター討伐に行かされて、罠にかかり窮地に陥ったところを、ヌースに助けられた。そのことがきっかけで邪竜ダルダンディスとの戦いに巻き込まれていく。仲間を出会い、聖剣ドラゴンスレイヤーの魂となったソフィアの助力を受けて、ダルダンディスとの死闘の末、クレーネ・ジュエルを破壊して、イシュタリアを魔法の呪縛から解放した。
Ⅱでは行方不明になったリュコスを探して、新大陸アシュナールへ渡り、破壊神ルーゴンとの戦いに巻き込まれていく。破壊神ルーゴンを戦い倒すことで、神々の時代を終わらせた。作中ではアリオスを巡って恋愛模様も描かれたが、「CDドラマTARAKOぱっぱらパラダイス」でアリオスはダイモスを選ぶという衝撃的な展開を見せていた。
ソフィア
CV:佐久間レイ
パルティア神殿の聖女。女神イシュタルの信仰する者の頂点として皆を導いている指導者。女神イシュタルの加護を受けているため、世界でただ一人、特別な修行なしに魔法が使える。特に回復魔法でソフィアの右に出るものはいない。正体は聖剣ドラゴンスレイヤーの魂であり管理者。ソフィアが魂となってドラゴンスレイヤーに宿ることで、ドラゴンスレイヤーは覚醒して真の力を発揮する…はずなのだが、Ⅱではドラゴンスレイヤーはソフィアの存在なしに破壊神ルーゴンの力に反応して単体で覚醒する。また回復魔法の専売特許をメルティナに奪われるなど、世界観の路線変更(選ばれた血筋の者ではなく、誰もが世界を救えるという「白き魔女」で見られた世界観の影響)のあおりを食らった不憫なキャラ。気高く聡明な性格だが、自分たちを心配させたアリオスを突き飛ばしたピュラーに激昂して言い返したり、ダイモスに連れ去られたアリオスの居場所を知るクルルにすごい剣幕で教えるように迫るなど、気性の激しさも持ち合わせている。ドラマCDではアリオスより3歳も年上だと知ってショックを受けて悩む可愛らしい一面も見せていた。
ダイモス
CV:江原正士
無敵将軍の二つ名を持つ、アリオスの忠臣。アリオスと共にクロノスのモンスター討伐に赴き、そこでアリオスを助けるために囮となりモンスターに捕まってしまう。アリオスとリュコスによって助けられた後は、アリオスに従い、ダルダンディスとの戦いに身を投じる。
Ⅱでは、アリオスと共にモンスターの残党と戦っていたが、アリオスに共に新大陸アシュナールに渡る。妹メリナがヌースに仕えていると知り、ヌースと言い合うなど、シスコンな一面も見せていた。ドラマCD「CDドラマ風の伝説ザナドゥⅡ ヒロイン達の誕生日」ではダイモスのドラマ「衝撃の告白ダイモスの誕生日」が収録されているが、自分にプレゼントを届けに来たプロスタに自分の好きな相手がアリオスだと言うなど、かなり暴走している。ドラマの続編でもある「CDドラマTARAKOぱっぱらパラダイス」では愛をたぎらせ暴走した結果、アリオスの愛を最後に勝ち取るなど、公式でBL展開を見せるという衝撃的なことをしていた強烈なキャラ。
ヌース
CV:塩沢兼人
アリオスを助けた紫の髪の男。正体はダイモスの旧知である軍師。毒舌家。ちなみに音痴。Ⅱではイシュタリアの宰相を務めている。自分の身の回りをするメリナを巡ってダイモスと火花を散らす場面も見せていた。ちなみにメリナのことはまんざらでもないことがドラマCD「CDドラマ風の伝説ザナドゥⅡ ヒロイン達の誕生日」で描かれている。
ピュラー
CV:山本百合子
おちゃめで元気な少女。大賢者エナスに師事し、クレーネジュエルの力を使わずに魔法を使うことができる魔法使い。
メディア
CV:勝生真沙子
パルティア神殿の守護騎士。ソフィアの護衛を務める。ソフィアとは心で交信できる。ちなみにコミック版では、ソフィアと姉妹のように育ったソフィアの姉貴分。
リュコス
CV:矢尾一樹
弱い者や貧しい者を救う義賊。変装が得意。「全ての女性達の恋人」を自称していたが、Ⅱで恋人(メルティナ)ができたため、「全世界の女性の憧れの的」に変更している。風来坊で一見軽い雰囲気だが、マクリア国王がアリオスが死んでいればよかったとアリオスを責めたときは、身分差をものともせずに怒りをぶつけるなど、義侠心あふれる性格。
Ⅱではアシュナールへ渡り、ルーゴン復活の鍵となる『7つの魂』の一つをもらったことで、マーカストに襲撃されて船が難破。ラザンの港町に流れ着いたところをメルティナに助けられた。やがてメルティナと恋仲になり、エンディングでは結婚して子供をもうけていた。
アルゴス
CV:梁田清之
雪深い奥山の村に住むモンスター『イエティ』の勇者。クレーネ・ジュエルの光を浴びて苦しんでいたところを、アリオスやピュラーに助けられ、その後、仲間に加わって一緒に旅をするようになる。ピュラーとは仲良し友達。ちなみに声は男性声優だが、女性(雌)である。Ⅰのみの登場。
エナス
賢者。ピュラーを引き取り育てた育ての親。聖剣ドラゴンスレイヤーについて知る数少ない人物。コミック版ではソフィアの育ての親。ゲームではⅠのみの登場。
ワークス
コミック版のみ登場。メディアの父であり、ソフィアの師匠。伝説の勇者(アリオス)を探している。
ジード
CV:中尾隆聖
モンスターを率いてパルティア神殿に侵入した謎の男。正体はアリオスの実兄。本名はジード・アイネアデス。アステル王朝復興を訴え、一族を追放された。邪竜ダルダンディスに仕えているが、ドラゴンスレイヤーを手中に収め、ダルダンディスにとって代わろうと企む。アリオスと戦い敗れることで、自分の考えが間違っていたと悟り、アリオスに看取られて亡くなった。コミック版でもアリオスの実兄という設定は変わりないが、父との約束で影からアリオスを守っていたなど、アリオスへの親密さが描かれて兄弟の絆が強くなっている。Ⅰのみの登場。
プロスタ
CV:高山みなみ
パルティア神殿の神官。モンスターの襲撃で重傷を負い、ソフィア救出を第一に考える大神官ゼノビアによって毒殺されそうになったが、マザー・フィリアの機転でダイモスと仮の結婚をして還俗することで難を逃れた。Ⅱではプロローグに登場。神官に復帰したが、ダイモスの妻でいるつもりだと話していた。だが『CDドラマ風の伝説ザナドゥⅡ ヒロイン達の誕生日』でダイモスの好きな人がアリオスと知りショックを受けたと思われる。
ダルダンティス
CV:小林修
異世界から飛来した邪竜。千年前に勇者アイネアスに倒されたが、現代に復活した。Ⅰのみの登場。
クレーネ(クレーネ・ジュエル)
CV:小林優子
ダルダンディスが携えていた魔法の宝石。欲望を持つ主を求め続ける。ダルダンディス亡き後、アリオスを主にしようとしたが拒まれ、逆上してアリオスたちに襲いかかるが、反撃されて壊されて消滅した。Ⅰのみの登場。
ランディス
CV:梁田清之
Ⅱに登場。ラザンの港町に流れ着いたアリオスを助けた謎の騎士。その後も度々アリオスの前に現れ、やがて仲間に加わる。正体はゴートランド騎士団の一つ『黒騎士団』の隊長。破壊神ルーゴン復活の鍵となる『7つの魂』を見つけて処分するために探索の旅をしていた。寡黙でつかみどころのない性格だが、花に詳しいなど、ロマンチストな一面も持つ。ドラマCDではかなり暴走しているキャラの一人。
メルティナ
CV:椎名へきる
Ⅱに登場。新大陸アシュナールの酒場の娘。真面目で礼儀正しい性格。リュコスと恋仲になり、リュコスとの仲は両親も公認である。自分を助けようとして重傷を負ったリュコスを助けたい一心でアリオスたちと女神イシュタルの水晶宮に赴く。メルティナの真摯な祈りはイシュタルを降臨させ、加護を受けたメルティナは一般人でありながら、女神イシュタルの加護を受けて回復魔法を扱うようになった。リュコス曰くメディアとためをはるくらいのナイスバディ。
メリナ
CV:横山智佐
Ⅱに登場。ダイモスの妹。ヌースを慕い、身の回りの世話をしている。
マーカスト
CV:堀秀行
Ⅱに登場。緑衣の竜騎士という異名を持つ騎士。アンセルムという飛竜を従える。メルティナを人質にして、アリオスからルーゴン復活のために必要な宝石とドラゴンスレイヤーを奪った。正体はゴートランド騎士団の一つ『竜騎士団』の隊長で、ランディスの友人だった。アーグにそそのかされて仲間を裏切ったが、アーグの真の目的を知り、己の行為を後悔する。罪悪感を感じながらも、敵としての立場を貫き、アリオスと戦い倒される道を選んだ。
アーグ
CV:糸博
Ⅱに登場。暗黒の島の支配者。破壊神ルーゴンの復活を企む。強大な力を持つ魔導師で、ランディスを一瞬で消滅させる魔力の持ち主。
イシュタル
CV:篠原恵美
イシュタリアで信仰されている女神。かつて先駆者と呼ばれる者が世界に遺した神の一人で破壊神ルーゴンとは対極の存在。千年前の邪竜ダルダンディスとの戦いでは、聖剣ドラゴンスレイヤーとその管理者(パルティアの聖女)を創りだした。Ⅰでは名前のみの登場。Ⅱでは破壊神ルーゴンとの戦いの前に姿を現して、アリオスに力を与えた。対極の存在である破壊神ルーゴンがアリオスに倒されて消滅したことで、同じく消滅した。
先駆者
Ⅱの取扱説明書のみに登場。世界を創造した存在。世界を去るときに女神イシュタルと破壊神ルーゴンを遺した。
余談
- Ⅰはお使い要素が多いことから、『広大なパシリゲーム』『マゾゲーム』と言われていた。
- 1作目では選ばれた血筋の者とそうでない者の違い(選民)が随所で見られていたが、2作目では「白き魔女」の作風の影響を受け、特定の血筋の者が英雄になれる設定ではなく、どんな者でも英雄になれるという世界観に路線変更した。それはソフィアだけに使えたイシュタルの力が、一般人であるメルティナが使えるようになったということに象徴されている。
- ドラマCDではダイモスの愛の暴走等、公式でBL展開を見せていた。
別名・表記ゆれ
関連タグ
外部リンク
『PROJECT EGG』によるDL版購入ページ
PC-8801版の風の伝説ザナドゥ、風の伝説ザナドゥⅡ収録の『ドラゴンスレイヤークロニクル』紹介ページ
以下外部サイト
風の翼~風の伝説ザナドゥファンサイト※個人サイト