曖昧さ回避
概要
18世紀初頭に描かれた琉球の伝説を集めた伝説集『遺老説伝』には“大鯖魚”の名で紹介されている沖縄の伝承に伝わる巨大な怪魚。
なお、「鯖」とは琉球の方言で「鮫」の事を指しており、決して巨大なサバの妖怪という訳ではない。
沖縄に伝わる民話に度々登場する鯖ではあるが、慶良間諸島の座間味村には次のような話が伝わっているという。
昔々、宮古郡伊良部の村主を務める豊見氏親という名の豪傑が住んでおりました。
その頃、平良の大海原には巨大な鯖が住んでおり、そこを通りかかる船があろうものなら必ず出現してたちまち船を転覆させ多くの船乗りたちを食い殺していました。その為、伊良部でも船を出そうとする者は誰もおらず、村は寂れて行きました。
この事を大いに憂い頭を悩ませていた氏親は、ある時遂に自らこの人食い大鯖を退治する事を決心し、神に祈りを捧げると短剣を携えて小舟に乗って遥かな沖へと漕ぎ出しました。
そしてどれくらい進んだ頃でしょうか?今まで静だった大海原を割って突然大鯖が現れると氏親の乗った小舟を飲み込まんと大口を開けて向かってきました。
さしもの氏親も一瞬肝を冷やしましたが、意を決して海の中へと踊り込む氏親を一呑みにする大鯖でしたが、呑み込んだ氏親が腹の中でめったやたらに小刀を振り回して腸を無茶苦茶に切り刻みました。さしもの大鯖もこれには堪らず、海面を血に染めながら死んでしまいました。
大鯖を無事に退治し村へと帰還した氏親を村人たちは篤く感謝し尊敬しましたが、大鯖との決闘で精魂尽き果てていた氏親はそれから間もなくして息を引き取ってしまいました。
村人たちはこの豪傑の死に皆涙し手厚く葬ると、彼が埋葬された比屋地を神嶽として崇め、それは後の世にも続いているといいます。