概要
歯車を使わずに、エンジンの駆動力をベルトと臼形プーリーなどを使って無段階に変速比を変えられる変速機のこと。
一般的にはオートマチック・トランスミッション(AT)の亜種として認識されている。
わかりやすく言うと、自転車でギア変速をする時に、後輪部のギア(スプロケット)にかかっているチェーンが、大きさの異なるギアへガチャン、ガチャンと音を立てながら移動する様子を見ることができるだろう。この大小のギアが滑らかな一枚の鏡面で、この上をチェーンがヌルヌルと滑っていく様子を想像すれば、それがだいたいCVTである。
チェーン部分は自動車ではスチールベルトやゴムベルト、はたまた自転車とは大きく異なるチェーンなど、いくつかの素材や形状に種類が分けられる。
起源はかなり古く、現在の自動車で主に用いられる1970年代にオランダのDAF社が量産したものが初とされる。日本ではスバル、日産が1980年代頃から研究を進めていた。
当時は問題が多く敬遠されていたが、開発研究が進んだ結果、日本で販売される日本車の主流となっている。現在の日本の乗用車メーカーで、OEM以外でCVT車を販売していないのはマツダのみである。
長所と欠点
エンジンの回転数を比較的一定にしながら変速できるため、基本的には有段式変速機より燃費が良い。特にストップアンドゴーが多く、変速回数も多い日本の道路には最適なトランスミッションであるとされる。
このメリットは「エンジンの一番美味しいところを常に使える」という言い方がされることもある。競技ではこの特長を最大限に活かし、トヨタがどんな車速でも常にエンジン回転数を6000に維持したまま走れるCVTをヴィッツに投入し、全日本ラリーのAT車部門を席巻している。またF1でもテストされ、一周につき1秒のゲインがあることが確認されたという(ただしドライバーがギアチェンジをするという規則から、実戦投入は禁止されている)。
また変速に伴うショックがないため、特に同乗者の立場からは大変快適である。
それ以外にも機構がシンプルな上有段変速への応用も効くため、短期的にも長期的にも開発コスト的に有利である。
一方で
- 滑らせるため伝達効率が悪く、加えて高トルクを伝達することが難しい
- 動作には高い油圧が必要となるためオイルポンプの動作分が損失となり、高速で長時間走行する場合の効率は良くない。
- エンジンブレーキが弱い傾向がある
- 単独では変速幅に限界がある
- CVTが故障した際分解修理ができる整備工場は少ない
- プーリーの幅を変えることで変速するためどうしても変速に時間がかかる
- エンジンの回転数と加速が一致しないため、人により違和感を感じられる場合がある。
など機構的なデメリットも多く、そのため欧米車で主流であるDCTや多段ATに劣っているという見方がされることもしばしある。
しかし日本車メーカーを中心に研究が進み、現在では
- 高級車(エルグランドなど)や重いライトバン、さらにはチェーン式により300馬力ものスポーツ系車種(WRX S4やレヴォーグ)にも搭載できるようになっている。
- エンジンブレーキの弱さや運転の違和感を補うため、擬似有段変速(ステップ制御)や有段MTモードを採用する。
- 高速域の弱点を克服するため、高速域用のギアを採用する。
- 発進用ギアを備えて、CVT特有の発進時の滑るような感触を減らす。
- CVT製造のノウハウが蓄積され信頼性が大幅に向上している。
など弱点を克服する例や工夫がされてきており、まだまだ将来性は見込める機構であると言える。
ライバルの現状を見ると、DCTは低速のギクシャク感の多さや信頼性への不安から徐々に日本向け車種への搭載は減っており、多段ATは機構的な欠点は少ないものの、多段化に伴う重量とコストの増大から高級車にしか搭載されていない。
CVTが最善のトランスミッションと言えるかは分からないが、現状最もコストパフォーマンスに優れたトランスミッションの筆頭なのは間違いない。
電気式CVT
日産のe-Powerのようにエンジンを発電機として使い電気モーターで駆動するシリーズ・ハイブリッド方式やトヨタ・プリウスのようなスプリット式ハイブリッドなどは書類上は「電気式CVT」と書かれる。
が、これらは正確には動力伝達機構や動力源そのものが無断変速特性を持っているため、変速機がない(不要である)というのが本来は正しい。