概要
メイス(Mace)とは、棍棒などの殴打系の武器の一種。戦棍(せんこん)、鎚鉾(つちほこ)とも表記・呼称され、西アジアで誕生したとされる。
しかし、フィクション作品などの影響で、刃物が通用しないほど鎧が重装甲化した兵士を鎧ごと撲殺するために、鎧が発展した中世ヨーロッパで生まれたと勘違いされることが多い。
しかし、別にそのようなことはなく、実際には製造のしやすさから、新石器時代から近代まで世界各地て用いられきた非常に歴史の長い武器である。なお、全身を覆う金属製の鎧、俗に言う全身鎧が早期に出現・発達したのは古代中東地域であり、メイスの正式採用もこちら地域の方が早い(中東においてメイスは、全身鎧出現以前から広く普及しており、金属製の斧や短剣、槍、革鎧等が武器の本流になってからはいったんは衰退するも、全身鎧の出現以降は復権している)。
中世ヨーロッパにおいては特権階級であった騎士や聖職者に人気の武器であり、華美な装飾が施される場合も多かった。特に返り血を浴びない為に、打撃戦闘を目的とした聖職者が重宝したともされるが、一種のブラックジョークであり、それにちなんで別名:ホーリーウォータースプリンクラーという渾名がつけられた。
そのほか、中央アジアの騎馬民族にも愛用されており、下級の軽装騎兵から、王侯貴族からなる重装騎兵までメイスは刀剣や弓矢、短槍と並ぶ標準装備であった(東アジアの宋王朝では歴代王朝の中でももっとも鎧が重装甲が進んでいたため、中華版メイスともいえる「錘(すい)」や「狼牙棒(ろうげぼう)」、リアルソードメイス「鞭(べん)」等が用いられた)。
また、南アジアであるインドやメソアメリカのインカ帝国やアステカ帝国でも、類似の武器が使用されている。
形状・使用法
刀剣と同程度かそれよりやや短い長さの柄の先に、鋭い凹凸を付けた金属製の打撃部が付いた非常にシンプルな武器(新石器時代に用いられた原始的なメイスの打撃部には土器や石等が用いられたといわれる)。
打撃部の形状は、球根型の打撃部に突起物を生やしたタイプや筒状の接続部から板を放射状に配置したタイプが有名である(前者の別名はモーニングスター、後者はプレートメイスとも呼ばれた)。
使用法としては、棍棒やハンマーと同じように殴打したが、投擲武器として使う場合もある。鎧兜の種類によっては、鎧兜を変形させ視界を妨げたり、呼吸困難に追い込んだりすることもできた。また、腕利きの戦士が用いれば一撃で相手を撲殺できたという。
時期や場所によっては、剣よりも人気がある武器であった。
フィクションでは
ファンタジー作品上では、しばしば僧侶などの職業の武器として用いられる、
これは杖に似ているからという理由と、聖堂などに聖剣などと並んでメイスが飾ってあるからという理由があるが、これはあくまで儀式的なイベントに使用するアイテムであり、実際にメイスを担いで戦場に向かうような聖職者などいない。
西洋の創作では聖職者に何故か「力持ちの巨漢」というイメージ付けがしばしばなされる。
これは聖職者は刃物を持てないとされることが多いため、仕方なく鈍器であるメイスを使った、という噂に由来しているのだろうが……。
TRPG『ソードワールドシリーズ』では、クリティカル率が低いものの命中ボーナスを持ち威力が高めと、剣より使い勝手が良いこともあったので近接武器が主兵装となる前衛職では愛用者が多く、冗談で剣と魔法の世界ではなく鈍器と魔法の世界「メイスワールド」と呼ばれることもあった。
旧SWから改定した完全版でも変わらず、2.0となっても変わらず優秀な部類の武器となっている(レベル上限が低く、パラメータ上昇が難しいので命中ボーナスを持つというのは強みであった)。
近年の作品では『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』の主役機、ガンダムバルバトスの主武装のひとつとしても有名。
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