霊柩車
れいきゅうしゃ
概要
洋型、宮型、バス型などがある。
このうち宮型は火葬場への乗り入れの禁止や洋型へのリフォームにより近年は減少傾向にある。
用途や地域によってベース車両や仕様が異なり、サイドカー型のものや、外見は普通のバンのものなども存在する。
種類
宮型霊柩車
高級セダン型乗用車やピックアップトラックをベースにして制作され、神社や神輿寺院を模した装飾のある棺室を設置したタイプ。棺室は白木のものと漆塗りのものとに分かれる。
地域ごとに普及度合いに大きく偏りがあるのも特徴で、ある所に行けばこれでもかというぐらい見かけるのに、ほとんど見かけないという地域もある。
火葬場そのものが迷惑施設として嫌われる傾向にあり、ただでさえ目立つ宮型は火葬場への乗り入れを拒否される事も多い他、葬礼に対する考え方が変わった等により宮型は数を減らしつつある。更に国土交通省が自動車の安全基準を厳しくする方針を打ち出していることから、特に突起物の多い宮型は絶滅の危惧すら存在する。
棺を納める部分には壁面や天井部分に極楽浄土を描いたり、木彫りの蓮の花などが描かれたりしている。
ベースになる車両がキャデラックブロアムやリンカーンタウンカー、トヨタ・クラウンなど元々高額な車種が多い上、架装に伴う補強作業がどうしても職人による手作業に頼らざるを得ず、新車価格は宮型1台で中型サイズの路線バス1台が購入できるほど。
水気を嫌う素材が多く装飾材として使われているので雨天の際には透明なビニールカバーをかけて運用される。
外国人には日本的要素が多く散りばめられていて人気が高く、廃車後海外に輸出されることもあるようだが、高額な上用途が限られることから一般の中古市場に出回ることは皆無に等しい。
洋型
ある程度大きめなステーションワゴンや高級乗用車を改造して作られる。キャビンやリアオーバーハングをストレッチすることで車体長を稼いでいることが多く、「リムジン型」と呼ばれることも多い。
車体色は黒塗りの他、パールホワイトやシルバー等がある。会葬者や親族が同乗できるよう後部座席が付けられているタイプや、かつてのタクシー車両のように前席がベンチシートでシフトレバーがコラムシフトになっているものもある。
宮型霊柩車が価格の高額化や火葬場への乗り入れ拒否などの理由で減少傾向にあるのに対し、洋型は架装が宮型に比べて安易で価格が安い上、周囲に溶け込みやすく目立たないことなどを理由に全国的によく見かける。
宮型は主に仏教、神道式での会葬にしか用いることはないが、逆に仏式であっても洋型は用いられることも多い。このようにどのような宗教の葬儀でも使えるフレキシビリティ性の高さも洋型普及の後押しになっている。
法律上の制限
霊柩車は宮型・洋型・バス型問わず、ナンバープレートの分類番号は8から始まる特種自動車扱いである。
道路運送法で遺体は貨物として扱われるため、霊柩車を保有する葬儀社等は一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)、つまり遺体を運送することに限定した貨物運送の認可を取得している。
またバス型霊柩車を所有する葬儀社等の場合、一般貸切旅客自動車運送事業、つまり貸切バス事業の認可を必要とする。
運転手に必要な免許は二種免許ではなく、車両サイズに応じた一種免許だが、バス型霊柩車の場合は中型・大型の二種免許が必要となる。
霊柩車を見かけたら親指を隠すという風習の由来
よく霊柩車を見かけた時に親指を隠しておかないと親が早死したり、死に目に会えなくなったりすると言い聞かされた人が多くいるだろう。
この言い伝えは霊柩車なんて影も形もなく、葬列を組んで人の手で遺体を運んでいた江戸時代から存在する。人が亡くなって間もない時はまだ成仏しておらず、魂は遺体に宿っていて、親指の爪の間から魂が出入りすると考えられており、成仏していない魂の侵入を防ぐため自らを守るために親指を隠していたという風習がいつの間にか親指と親が結びつき、親を守るために親指を隠すようになったともいわれている。
小ネタ
カスタムカーとしての霊柩車
死に携わる車両なので一般には嫌われがちだが、その特徴的な見た目にむしろ魅了され、私物として霊柩車を持ち、ローライダーや暴走族の車のような派手な改造をしている者もいる。特に海外ではカスタム霊柩車の集会なども開かれている。