装甲騎兵ボトムズの第3話の次回予告の最後に登場する「キリコが飲むウドのコーヒーは苦い」というフレーズ。
ウドとは装甲騎兵ボトムズに登場する架空の都市である。
「あらゆる悪徳が武装するウドの街。 ここは百年戦争が産み落とした惑星メルキアのソドムの市。 キリコの躰に染みついた硝煙の臭いに惹かれて、危険な奴らが集まってくる。 次回『出会い』。 キリコが飲むウドのコーヒーは苦い。」
今でいう「中二」感溢れるこのフレーズのインパクトは大きく、現代まで語り継がれる伝説となった。
解説
ボトムズを語る上に置いて避けて通れぬ話題が「次回予告」であり、その先端を突く僅か3話目の予告にしてボトムズという番組そのものの方向性を決定づけた名フレーズである。
バララント同盟との「もはや開戦理由も分からなくなるほど続いた」百年戦争が終結したボトムズ世界において、「停戦=平和」などという図式は有り得なかった。疲弊と困憊の頂点を過ぎた惑星メルキアの主要都市ウドも、終戦後の戦地帰りが屯し、ならず者たちが徒党を組み、希少金属ヂヂリウムの採掘に必要な労働力を求めて人間狩りが横行している。そして本来それらを取り締まるはずの治安警察が非合法な取引から賄賂を得て目を瞑るという、戦後日本の闇市を思わせる混沌とした世界が広がっていた。
主人公キリコはこの混沌としたウドの街に流れ着き、あるものの情報を求めてあてどなくさまよう日々を送っていた。当然、荒くれものたちによるウドの洗礼は万人にもキリコにも等しく与えられたが、特殊部隊上がりには赤子の手をひねるよりも容易い試練であり、それが方々巡って噂になり、アクの強いウドの町の住人たちがキリコのもとに次々と現れる…。
…という内容を僅か30秒でざっくり説明しきり、かつその手の筋のあんちゃんたちにとってはそそられる文体で、名優銀河万丈が朗々と読み上げるのだからコリャイチコロ。
ボトムズのハードボイルド小説然とした作風に、コーヒーという苦く重々しい飲み物は非常にマッチしており、それを〆に持ってくることで背伸びしたい年頃の男子心はガッチリ掴まれるのであった。
ちなみにこの文面を執筆しているのは総監督の高橋良輔氏。
アニメにおける次回予告とは言わば一種の広告塔であり、視聴者相手に作品の方向性や色合いを明示し、かつ話そのものの手引きもしなければならない脚本家泣かせの作業であり、現場のすべてを俯瞰して把握できる総監督だからこそ書けた代物であった。
これ以降ボトムズ監督の仕事は予告を考える事とまで言われるほど…
余談
話題性とものが「コーヒー」という手軽さからか、商品化も行われている。
2006年12月1日にはホビーショップコトブキヤから『ウドの缶コーヒー「WOODO」』(微糖ブラック)、2018年6月29日にはサンライズとMK Labのコラボ商品として、リキッドタイプの「Polymer Ringer Liquid~ウドのコーヒー味~」が1,000本限定で発売された。そのほか「ウドのコーヒー マグカップ」も発売されている。