「俺はレッド。ただの一般人の薬屋だ」
「英雄なんて冗談じゃない。そんな『冒険』のないスローライフを目指しているんだ」
CV:鈴木崚汰
概要
『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』の主人公。
元・勇者ルーティ・ラグナソンの実兄で、勇者の加護を持つ彼女を除けば紛れもない人類最強の単騎騎士であったが、同じ勇者パーティーの賢者アレス・スロアに追放処分を言い渡される。
その後、辺境の地であるゾルタンへと渡ったのを機に「レッド」という偽名を名乗り、薬草店の開業を目指して冒険者としての道を歩む所から物語が始まる。
人物
基本的に穏やかな性格で、なるべく争い事に関わってしまう事を嫌うが、元・勇者パーティーの一員だけあって、苦しんでいる人を放っておけない優しさや、非道な行いに出る者に毅然として立ち向かう正義感の持ち主でもある。迷える人を導く事のできる「導き手」の加護の持ち主。
加護の固有スキル(後述)を由来として幼い頃より高い能力を有しており、6歳でモンスター退治を頻繁に行い、8歳で領主を通して大国アヴァロニアの騎士団へとスカウトされ入隊。妹の事情により勇者パーティーの一員として活躍したという経歴の持ち主。
現在は戦力外通告によって引退し、辺境の町ゾルタンのDランク冒険者となっている。薬草の採取と販売で生計を立てながら、自ら薬草店を営んで穏やかに暮らすことを目指している。
現役(勇者パーティー)時代は、同じパーティー仲間であるアレスからは戦力外通告されているものの、大国アヴァロニア王国において世界最強の騎士団と誉れ高き「バハムート騎士団」にて、どヒラの従士から全団統括を担う副団長まで登り詰める偉業を成し遂げており、常人から見れば間違い無く人類でも最強格の人間の一人(戦力外となっていたのは、あくまでも勇者パーティーに所属する他の人間達が化け物染みた戦闘力を持つ者達ばかりであったから)で、「ラグナソン」の姓も騎士団副団長の証として賜った物である。(いわゆる「一代貴族」的な身分)
騎士時代には従士時代から自ら死に急ぐかのごとく魔物を殺しまくらねば生きていけない(と、いうか魔物を殺しまくって「すら」生還が奇跡と言われるような)デンジャラスな任務に率先して志願しまくっていた。そんな「戦わなければ生き残れない世界」に生きる人々ですらドン引く、狂気の経歴と武勲を重ねきって副団長にまでのし上がっている。
そんな経歴を重ねながら人格が歪まなかったのは、騎士団で良き上司(のち自らが副団長となった時の騎士団長)に巡り会えた事、従士時代に王都の街中でヤランドララに会って師事を得る事が出来た事、そして、ひとえに守りたい妹の存在が人間性を手離す事を許さなかった事など、これらが複合的にかつ奇跡的に良い方向に作用した事が大きい。
勇者パーティー内においては兵站の確保(パーティメンバーの食事調理を含む)や外渉・意見調整役を担当しており、特に料理(家庭料理・冒険者メシ)と交渉事に関しては加護を持たずとも一級の冴え。更には戦場においても、戦いを俯瞰し人を適切に動かす力(いわゆる軍師的な力)に長けており、アレスを除くメンバー達からは人望と信頼を得ていた事から、勇者では無いもののパーティ内では実質的なリーダー格となっていた。
当時は偉大なる騎士の大剣サンダーウェイカーを愛剣としていたが、隠棲後(冒険者レッドになってから)は、最も威力の無い初心者用の銅の剣を愛用している。しかし、それでもその戦闘力は衰えておらず、アウルベアを一撃で倒した事もある。また、観察力によって相手の加護の正体や属性・特徴を看破および把握する事ができる。
勇者パーティーからの離脱に関しては、動機こそアレスの個人的な嫉妬心や自己顕示欲、承認欲求からであるものの、自身も前々から他のメンバーとの実力差を痛感しており(仲間のダナンからも、その事について度々叱責されていた)、あくまでも合意の上での離脱であった為、彼に対し特に恨みは抱いていない。
だが、後に真実を知った勇者パーティーでは、新たなリーダーとなっていたアレスが失態を繰り返していた事も加わって信頼を失い、修復不能なまでにパーティーが崩壊する決定的な理由となり、アレスからはより激しい逆恨みを買う事になる。そして遂にはルーティーまでもが、寂しさからアサシンのティセ・ガーランドと共に勇者パーティーを離反し、完全崩壊までに至ってしまう事になっている。
実は、まごうことなきシスコン(と言うには多少語弊もあるが、それに近い)気質であり、とにもかくにも妹のルーティには甘く、その結果、現在勇者となっていた彼女は、立派なお兄ちゃん大好き勇者(勇者の使命<お兄ちゃん♡)となっている。
幼い頃より彼女が「勇者」の加護を持ってしまった為に、その衝動に支配される形で危うい行動を繰り返し、両親にも手が付けられなかった事から、加護の運命から解放してやりたい一心で、一部では禁忌ともされる加護の研究(解明)にも取り組んでいた事がある。そのため加護のレベルを下げて衝動を和らげる薬(加護に対しては毒であるため毒耐性を持つ加護には効かない)を調合出来るようになっている。
勇者パーティー時代に、ロガーヴィア公国で知り合ったリットとは、当初こそ険悪な関係になってしまっていたが、共にロガーヴィア公国を守った結果、彼女に惚れられる事になっている。
ゾルタンでの再会後は、諸事情から冒険者になっていた彼女が、半ば押しかけ女房される形で共同生活を送る事になるが、彼女が皇女時代に身に着けた経営論や経営感覚や試算力、マーケティング力は、自身の薬草店の商売に大きく貢献している。
また「レッド」の偽名が実はリットの愛称に由来しており、この点からギデオン自身もリットの事を満更でもない感情を抱いていた事が伺われ、ルーティとの再会時もいずれ結婚を考えていると、明確に自身の気持ちを応えている。
なお、本来「導き手」の加護とは「勇者」を守り導くためだけにある加護のため、神が当初に描いた歴史(後述)では勇者が十分な力をつけた後には死ぬ運命にあった。
しかし本作における実際の歴史においては、持ち前のシスコンパワーで無自覚にこれを覆している。
ちなみにスローライフ志望である事から、騒動に巻き込まれた時などはよく「どこにでもいる一般人の薬屋」を自称しているが、時に相手からは「お前のような一般人がいるか」とツッコまれたりしており、その部分は本人的に不服である模様。
劇中の様相
勇者パーティーの実質的なリーダー格として活躍していたが、その事が気に食わなかったアレスから戦闘での実力不足を指摘され、戦力外通告を言い渡された為、「魔王軍偵察の果てに先走り命を落とした事」にしてパーティから離脱。以降は辺境で陰棲する事を誓う。
辺境であるゾルタンに辿りついた後は、「レッド」の偽名を名乗って冒険者となり、なるべく目立たない形で薬草の採取と販売で生計を立て、薬草店を開く事を目指す。
ある時、友人のハーフエルフであるゴンズの甥っ子のタンタが、失明になり兼ねない急性の奇病である「白眼病」にかかってしまい、それを救うべく山の中に入って治療の為の薬草を採取。タンタの治療に成功した結果、そのお礼として自身の薬草店の建築を頼む(材料費だけに関しては自身が用意した)。
念願の薬草店の開業に成功したものの、ギデオン自身の経営が下手であった(幼くは騎士として故郷の領主の推薦を通した国よりの育成枠…つまり実質上生活を保証された奨学生として励んできた事や、騎士団上層部の一員となってからは一代貴族として国より支給されていた執事に家計運営を投げていた事、勇者パーティの一員だった頃は国家のバックアップを受けていて生活費をドンブリ勘定していた事がマイナスに働いてしまった)であった事が災いし、売り上げに伸び悩んでいたが、冒険者になっていたリットと再会し、半ば押しかけられる形で共同生活を送る事になった彼女が協力。「レッドアンドリッド薬草店」と名を変えた店は、徐々に繁盛していく事になる。
そんな中、自身が勇者パーティーを去った事に耐えられなくなったルーティが、パーティーを離反した上にアサシンであるティセ・ガーランドを連れてゾルタンにまで訪れ、偶然にも再会。「寂しかった」と涙ながら喜んで抱き着いてきた彼女に、自身も再会を喜ぶ。
しかし、アレスを追い出しても良いしリットも連れて来て良いからパーティーに戻ってきて欲しいとルーティに懇願された際は、ゾルタンで生きる意味を見出していた事でそれを明確に拒否。その結果、ルーティもまた勇者を辞めてゾルタンに定住する事を決意させる事になった。
しかしその後、アスラデーモンに唆された事もあって自身への逆恨みを半ば暴走させていたアレスまでもがゾルタンに乗り込んでくることになり、ギデオンは否応無しに自身の過去と向き合い、決着をつけるべく行動する事になる。
加護「導き手」
勇者の旅立ちを守り導く役目を担う特殊な加護。
加護としては最弱の部類にあたり、衝動も「迷っている人や困っている人が『いれば、導く』こと(手助けをするのであって、直接助けたり救ったりするのではないし、自らわざわざ困っている人を探すような事もしない)」と、そう強いものではない。
導きを受けた者が、その導きを活かすか否かは受けた側次第であると言え、ギデオンに深い信頼と愛情を抱くリットやルーティ等には大きく活かされていた反面、逆にギデオンを激しく毛嫌いしプライドの高いアレスの場合は、何も活かせないままで終わっている。
固有スキル
初期レベル+30
「導き手」が持つ唯一の固有スキル。そしてレベルアップしない(しても効果が成長しない)と言われているスキルである。
自らが取った各種スキルに対し、それが初期のレベルであればレベルに対して「+30」レベル値が嵩増しされるスキル。つまりスキルが「レベル1」だと「レベル31」として換算される。
ちなみに「レベル30」とは、一般人(頻繁に戦う冒険者含む)が他のスキルに見向きもせず、ただそのスキルのみを人生を懸けて一途に磨ききった際に到達できるカンストのレベルとされている。
この固有スキルの効くレベルは「初期レベル」であるため、スキルレベルを各スキルの初期レベルを越える以上に鍛え上げてしまうと固有スキルの対象から外れてしまい弱体化する。
要はどんな技術も初見で玄人はだし(スキルによっては達人)の腕前を持てるが、極めようと思っても決して達人にはなれない器用貧乏な能力。
そして裏を返せば、この加護とスキルは努力が仇となるスキルであり加護なのである。
しかしギデオン(レッド)は加護由来のスキルが、この能力しか無いために、これをカバーするために多くのコモンスキル(専門の加護が無くても誰でも極められる能力。ただ専門の加護の下位互換であるため、上級となる加護を持つ者には敵わないとされる)を持っている。
さらに言えばギデオンは有用と感じたならば弱体化も覚悟の上でコモンスキルを初期レベルを超えて鍛え上げ、多くのスキルをマスタリースキルへと昇華させている。
そもそもギデオンが騎士になったのも、多くのコモンスキルを鍛えるのに最適の選択肢を取った(魔王軍と王国軍との戦いの前線に放り込まれ、一般人はおろか冒険者でも絶対に獲得できない戦闘量を得て、スキル上げのための経験値を手っ取り早く稼ぐ)事が最大の理由。
ギデオンが薬屋レッドとして行っている薬の調合や病の見立て、あるいは冒険者としての神速の動きや空中機動力も、このコモンスキルのマスタリークラスによるものである。
嘘の歴史のギデオン
実は前述の通り、神の画いた「正しい運命」のシナリオ(本来の歴史。いわゆる作中で記されるところの嘘の歴史)では辺境の英雄「冒険者ギデオン」として住んでいる村を守り王国の信頼を得て勇者(ルーティ)に王国の後ろ楯を与えたのち、彼女の旅立ちの時における魔王軍の襲撃に遭い尊い犠牲として死ぬ運命にあった。
騎士団副団長どころか騎士にもなっていないのでラグナソン姓は賜っておらず「平民・ギデオン」のまま。
多くのスキルも初期レベルを脱するがゆえの一時的な弱体化を疎んでマスタリーへの成長を怠っている……というか辺境の冒険者のままでは、本編のギデオンのような常識外れの経験値(スキル成長コスト)の獲得は不可能なので仕方ない事ではある。(それだけ本編のギデオンは神ですら考え付かない常識外れの事をしでかしている。本人に自覚は無いが)
当然の事ながらリットに出会う事なく死んでいる。
逆にヤランドララとは互いに冒険者として出会っており、彼女の愛弟子となる事は本編の歴史と共通している。また、このために嘘の歴史のヤランドララが勇者パーティに入った目的には「愛弟子であるギデオンの仇を討つ」事が追加されている。(ヤランドララの精神的な立ち位置としてダナンに近くなる)
またギデオンの死の結果としてルーティは明るく振舞いながらも精神的には完全に破綻してしまい、自身の死でさえも勇者としての使命の糧とするまでに至っている。
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