「今、わたしには、お兄ちゃんが足りない……」
解説
CV:大空直美
「勇者」の加護を持つギデオン・ラグナソン(レッド)の実妹。17歳。
勇者時代は兄と二人で「人類希望の双翼」と呼ばれていた。
自らの持つ加護によって、魔王討伐にのみ向かうことを宿命づけられている。
人物
感情表現が乏しいが、本質的には「お兄ちゃん大好き勇者」と言える真性のブラコン。
加護が与えるケタ外れの強さを備えている反面、喜怒哀楽をはじめとした感情表現も含めた人間らしさは、「勇者に必要のない物」として加護の力で強力に制限されている。
ただし、心から慕う兄であるギデオンに関しては、「加護」よりも「人間」としての衝動が優先される事が多く、笑顔を見せたり泣いたり…そして怒る事も出来る。
強力な加護のために本人の意志に反して「弱い者、困っている者を助けよう」という強烈な衝動を生ずるが、その衝動は自身の力量や周囲の人間の考えを度外視してしまう為に、幼い頃は周囲から浮き、両親も密かにルーティが理解できず扱いに困っていた。
唯一、家族として無二の愛情を注いでくれていた(同時にルーティよりも先に動く事で加護の衝動からも守ってくれていた)のが兄ギデオンであった為、現在は17歳になっても兄と一緒にお風呂に入りたがったり、兄と兄妹の一線を越えても構わない素振りさえ見せる立派なブラコンに育っており、その深度は兄よりも深刻。
加護による強烈な衝動によって人助けを行う反面、ルーティ自身は加護があった為に仕方なく勇者にならざるを得なかったに過ぎない為、実際は人助けどころか兄以外の人間に関して(アレス・スロアを始めとする勇者パーティーの仲間さえも含む)ほぼ無関心に等しい。
更に、戦う事だけに関しては「好き」である為に、魔物等との戦闘では加護の衝動に従うまま殺気を剥き出しにして容赦の無い戦い方をする上に、勇者としての圧倒的なオーラで自分の意志に関係無く他を威圧してしまうという事から、魔物や一般市民どころか勇者パーティーの仲間からも内心恐れられていた(勇者とは真逆の狂戦士に近い有様だった)。しかし、兄ギデオン(レッド)の存在が、辛うじてその制限をギリギリのラインで留めており、人間性を失わずに保てている。
また、魔物なら誰彼構わず殺してしまう訳でも無く、あくまでも討滅するのは人間に危害を加える危険な種のみで、人間に危害を加えないゴブリンの集落では、病気が蔓延していた事から「癒しの手」による治療を行う等、むしろ手を指し伸ばして助ける事もある為、「勇者」として相応しい精神的な資質も垣間見せる。
勇者パーティーの仲間の中でも、普段から兄のギデオンを侮蔑していたアレスの事は特に嫌っており、彼からギデオンが死んだと聞かされた際も、直ぐにそれが嘘だと看破し、密かに激怒して八つ裂きにしてやりたいとすら思っていた。だが、当のアレスは自身にのみ悪意を向けて来ない事から、加護の影響によって怒りが強制的に封じられてしまい、アレスを殺す事も拒絶する事も出来ないというある種の生き地獄に苦しめられていた。
その為か、アレスがギデオンの穴埋めとして連れ来たアサシンのティセ・ガーランドや、彼女の相棒であるうげうげさんに関しても、最初こそ警戒していた様だが、パーティーの離反後に行動を共にした影響か徐々に気を許すようになっていき、アレスと決着を迎える時期にはギデオンやリットと同様、大切な存在となっている。
なお、「ラグナソン」の姓は、本来兄ギデオンがバハムート騎士団副団長になった事で賜った姓である為、ギデオンが「レッド」として姓を使わなくなった時点でルーティにも使う意味が無いものとなっている。ただし、世界最高峰の騎士と世界を救う勇者が兄妹であるという影響力はそれなりに有効性があると思われる(実際ルーティが勇者として旅立つにあたっては、ギデオンの築き上げた人脈が、かなり有効に機能した)。
一方で偽名で名乗っている「ルール」は、「騎士の規範を守る者」として名乗る通称であり、家名上の姓とはまた意味合いが異なっている(一応ルーティ自身も騎士団副団長たる兄から、騎士として必要となる基礎闘法と基礎教養や礼儀作法、哲学と規範、各種学術などを一通り叩き込まれているので騎士として遜色無い振る舞いができる)。
劇中の活躍
兄・ギデオンが去った後も、勇者パーティーと共に魔王討伐の旅を続け、風の四天王を倒す等、魔王軍との戦いも順調に進んでいるかに思われていたのだが、ギデオンに代わってリーダーを自称していたアレスの度重なる失態が原因で、他のパーティー仲間であるヤランドララやダナン・ラボーが去ってしまい、自身もまた次第に兄・ギデオンのいない寂しさに耐えられなくなっていた。
そんな中、先代魔王の遺跡で飛空艇を、コントラクト・デーモンから加護レベルの最大値を下げる事の出来る「悪魔の加護の薬」を入手したのを機に、世界から勇者の証と認定される「オリハルコンの護符」を捨てて勇者パーティーを離反。飛空艇を操舵出来るティセを連れて、悪魔の加護の薬を増産出来る人間を探すべく、図らずも「レッド」と名乗っているギデオンの暮らしているゾルタンに(そこに兄がいるとは知らぬままで)訪れる。
ゾルタンに辿りついた後は、旅人に扮して「ルール」の偽名を名乗り、ティセと共に悪魔の加護の薬を作れる錬金術師であるゴドウィンの投獄されている監獄に潜入。ゴドウィンを脱走させた後、ゾルタンを出て別の街に向かう予定であったのだが、勇者の固有スキルである「癒しの手」を隠す為に鎮痛剤とキュアポーションを買うべく「レッドアンドリッド薬草店」に立ち寄った結果、ずっと探していたギデオンと再会する事になり、嬉しさのあまりに両眼に涙を浮かべ、ティセが仲間になってから一度も見た事も無いような笑顔で彼に抱き着く。
「お兄ちゃん!!!会いたかった!ずっと寂しかったの!!」
その後、アレスを追い出しても良いしリットも連れて来て良いからまた一緒に旅がしたい、とギデオンに懇願するが、既に彼の意志は固まっていた為に断念。代わりに自分もゾルタンに定住する事を決意する。
ギデオンと彼をパーティから追い出したアレスとの因縁に決着をつけた後は、加護の衝動を抑える術を手に入れ「勇者ではない、ただのルーティ」として生きる道を選び、ラグナソン姓では「勇者」として名が知られてしまっている事からルーティ・ルールを名乗るようになる(この世界では「ルーティ」の名そのものは平民の女の子の名前としてありふれたものである)。
ゾルタンでは、ティセと共にレッドアンドリッド薬草店に薬草を始めとする薬の原料を育てて卸す「薬草農家」として穏やかに過ごす傍ら「ルーティ・ルール」として冒険者ギルドに属し、有事にはリット(とアルベール)が務めていた「街を守護する冒険者」としての職務を継承している。
能力
加護『勇者』
「世界を救う勇者」として桁外れの力を与える事になる強力な加護。
しかし代償として、喜怒哀楽を始めとする感情を極端なまでに制限されてしまう上に、自身の力量や周囲の心配を無視する形で「人助け」の衝動に駆られてしまう等、呪いに等しいデメリットも多い。この「喜怒哀楽が強力に制限されている」というのが、とても曲者で、ラグナソン兄妹の人生において、大いに悩ませ苦しませ続けた元凶となっている。
例えば、風呂に入っても気持ちいいと思えない。加護や固有スキルが体調や汚れを常に(常時発動状態で)清浄・最適化させるため、本来は風呂に入る必要が無い。つまり「風呂に入っても感覚としては空気中にいるのと同じ」なのである。
同様の理由で何かを食べても味を感じない。当然、味覚による喜びを得ることも出来ず「おいしい」を理解する事ができない。ルーティが美味を感じられるのは兄ギデオン(レッド)の料理だけであり、それも加護が弱くまだ味覚を感じられた頃に兄の料理を食べていたから。つまり思い出を使って強引においしいと思い込んでいるだけだったりする。
更に個人的な理不尽を感じても怒れない上、困っている者はそれがどれだけ自分にとって嫌な相手でも助けないわけにはいかなくなる(そのため兄を追い出したアレスを内心嫌がっていても拒否できなかった)加護がそれを強制するためである。
おまけに魔王討伐の目的が達せられた後は、「賢者」の加護を持つ者と惹かれあい結ばれようとする性質がある可能性も示唆されている。
もちろん本人の意志とは無関係な半強制的なもので、一方の「賢者」も「勇者」の加護を持つ者と結ばれようとする「加護の衝動」を持っている可能性がある。故に歴代の「勇者」の殆どは、自らを導いた「賢者」と結ばれて、その血脈を残している、とされている。
無論、ルーティにとって、兄を散々侮蔑し追放までしたアレスと結ばれなければならないこの性質は、屈辱でしかなく生き地獄そのものと言えるだろう。
のちに、その事実をリットとティセに告白した際には、二人を驚愕させた。そしてリットに対して「(きちんと自身の喜怒哀楽に沿って行動できて)羨ましい」と溢した。それは勇者の加護によって女の子としての涙と弱みのひとつも溢せないルーティにとっての心が流した滂沱の涙だった。
代表的な固有スキル
癒しの手
手に触れた存在を癒し、傷を治し、体力を回復させるスキル。対象は自分自身も含み、これを常時発動させると致死性の傷を負ってもコンマ秒も待たず光速よりも早く治り、なおかつ戦おうが力仕事をしようが体力はまったく減らないというチート状態に突入する。
いわゆる「回復魔法」にあたるが勇者しか使えないスキルであり、これが使える事自体が「オリハルコンの護符」以上に勇者の加護を持つ者の証明とも言える。
マスタリースキルは自らが受けた傷を任意の存在に移し替える「癒しの手:反転」だがルーティはそこまで、このスキルを鍛えていない。
(各種)耐性
あらゆる状態異常をオートレジストするスキル。常時発動型スキルでオンオフが効かない。本来は各状態異常に対して、それぞれに耐性スキルがあるが、きりがないので、まとめる。
例として、よく挙げられるのが「疲労耐性」と「睡眠耐性」で、このために疲れる事がなく睡眠すら必要としない。
「傷病耐性」や「毒耐性」のため病気にかからず傷ひとつ負わず毒も効かない。これと前述の「癒しの手」との併せ技で、いつでも健康体そのもの。
「感情耐性」によって動揺・悲しみ・怒りなどマイナスの感情に精神が揺さぶられない(そのかわり、喜びなども感じられない)。
嘘の歴史のルーティ
兄が死ぬ本来の(デミス神が想定し計画として描いていた)歴史である「嘘の歴史」では、人間性を保たせる要であった兄が旅立ちの戦いで戦死を遂げた上で、加護が「理想的で前向きな勇者を演じさせる」ため、傍目には人間らしく見えるが、実は人間としては破綻した「正義の味方を演じる神のロボット」として生きる羽目に陥っている。
また、この「嘘の歴史」の世界では、ギデオンは騎士ではなく地方守護を担っていた冒険者であったため、ラグナソン姓を賜っておらず、ゆえにルーティ自身も勇者ではあっても身分としては家名の無い平民の「勇者ルーティ」(つまり姓が無い)である。
常に無愛想(正しくは微表情)で陰鬱だった本編とは異なり表情が常に「ものすごく」明るく、無闇やたらに前向きで、にこやかに正論を振りかざす。
これは、明るい表情を保った方が「勇者」として人々の支持を得やすい、とする加護の発露のためであり、本人の感情ゆえの表情ではない(要は、よくできた作り笑い。前向きなのも加護に盲信した上で盲従しているせいなので実態は全く逆)。
兄が騎士となって生き残った歴史(要は本編の物語)ではあれほど大事に思っていた兄の死に対して「当然の事」と受け止めて涙ひとつ流すことがなかった。
しかし、そんな彼女を人々は「泣きそうなほど辛い兄の死も、世の人々のためにその辛さを呑み込んで涙を我慢し、心で泣きながら導いてくれる」ととても都合良く誤解して受け止め(ただしヤランドララだけが微妙ながらも違和感を抱いている)、そしてギデオンの死すら人々の信望の糧とし「魔王討伐」という「神が与えた、ただひとつの目的」に突き進んでいく。
関連タグ
キモウト:部分的に。