スーサイドガール
すーさいどがーる
作品解説
人間にとり憑き自殺においやる悪魔“フォビア”と、魔法のアイテムで変身しフォビアに立ち向かう“スーサイドガール”達の物語で、ジャンルとしては「魔法少女もの」にあたる。キャッチコピーは「世界の夜と戦う、陽(ひかり)の少女、生命の戦記!!」。
『ねじまきカギュー』や『トラウマイスタ』などでも見られた作者の中山氏の死生観が色濃く反映された作風となっており、「自殺」という単語は本作の一つのキーワードと言える。
「ウルトラジャンプ」2020年5月号で巻頭カラー一挙2話掲載の形で連載開始。「となりのヤングジャンプ」、「pixivコミック」でも公開されている(pixivコミック版は規制の基準の違いからか第1話43ページ1コマ目の背景が黒塗りに変更されている)。
登場人物
スーサイドガール
青木ヶ原星(あおきがはら きらり)
「深淵(ヤミ)があたしを覗くなら…あたしは深淵を睨み返してやるッッ!!!!」
大事な人に自殺されてしまったことで自らも16歳の誕生日に自殺する事を望んでいた少女。しかし自殺の多くが実はフォビアと呼ばれる悪魔達による「殺害」であった事を教えられ、「首吊少女(ハングドガール)」になってフォビアと戦うことを決意した。
基本的には天真爛漫を絵に描いたような明るい性格だが、大切な人に先立たれたという無念や後悔は現在でも彼女のトラウマとして根深く刻み込まれており、時折陰のある表情をすることもある。
「心の闇夜の使者たちよ!!!!散れッ!!星の煌めきとともに!!!!」
"人を救けること"それ自体が『生きる歓び』というスーサイドガールとしてずば抜けた適性を持ち、流汐曰く「とんでもない才能」と称されている。実際、スーサイドガールになって日が浅いにも関わらず縄を用いた救助や防御といった応用も充分に使いこなしており、先輩の満天にも一目置かれている。断末魔法(ダンマツマジカル)は敵の首を縄でくくりつけて殺す「トゥインクルハンガー」。
金門橋満天(きんもんばし まんてん)
「限界を決めるのはいつだってこのボク自身だ」
国民的なスーパーアイドルにして「手首切乙女(リスカガール)」。17歳。アイドル業優先で高校には通わなかったらしい。
本格的な登場は第4話だが、第1話の冒頭ですでに姿は描かれている。"死はその人間の完成"という考えを持っていて、若く一番美しい時期で今の状態での自殺で自分を完成させたいと望んでいた。
当初は星と死生観の違いで一度対立していたこともあったが、とある一件で星に命を救われたことを切っ掛けに態度を軟化させ、人生で初めての友人となる。和解後は彼女を「キラピッピ」と呼んでおり、星のことを「ボクの生きる歓び」と言及する程入れ込んでいる様子。
「心の闇夜の使者たちよ!跪け!空一面の星屑になって!」
スーサイドガールとしてはカフェのメンバーの中でも最古参であり、単独の攻撃力は星や夕空よりも一枚上手。断末魔法は鋭い刀で敵を一刀両断する「ゴールドソードレイン」や、一定の間合いに入った敵をオートで切断する「フルスカイディスタンス」などがある。
新谷響夕空(にやがら あかね)
「だから私は探しているのです。愛も死も共有できる"運命の人"を」
6年前にマスターにスカウトされた「過服薬少女(オーバードーズガール)」。中三の15歳。
心中は愛の証明だと考えており、愛も死も共有できる運命の人を探している。当初は星のことを「天使様」と呼び慕っており、満天とは星を巡って大喧嘩することもあった。
「心の闇夜の使者たちよ!還れ!黄昏の地平のその先に!」
使用するのが薬なので、他のスーサイドガールと比べても補助的な能力が多く、敵に幻覚を見せる「ドリーミングミスト」や一滴で仲間の傷を全快にできる「ヒールシロップ」、肉体を一時的に強化する「バーストステロイド」等々、後方支援的な役回りにおいて真価を発揮するタイプ。
本格的な登場は第10話からで、その冒頭の心中シーンでは人形浄瑠璃『曽根崎心中』が引用されている。なお満天同様に姿だけなら第1話冒頭ですでに描かれていた。
「こんにちわ そして 死ね(ハロー アンド デストロイ)」
43年前、アメリカで活動していた流汐が出会った「被弾丸少女(トリガーガール)」。
歴代最高最強のスーサイドガールとして日々フォビアと戦っていたが、人民寺院で918体ものフォビアを倒した代償に闇に呑まれて惨死した。
しかし、その魂は銃に残り、大峡谷にて自殺しようとしていた少女に憑依した結果、現代に復活。
"今"を生きる事を重要視しており、過去や未来に囚われている他のスーサイドガールを雑魚と見なし、フォビア諸共全滅させようと考えている。特にフォビアに付け込まれて自殺した人間を負け犬と見下している事から、他のスーサイドガールに敵対する事になる。
一方で流汐を心の底から愛しており、自分の事に関しては棚に上げている事が多い。
「心の闇夜の使者たちよ!爆ぜろ!欠けゆく月の口づけで!」
銃を使用した爆発力ある一撃に加え、自身の戦闘センスも相まって隔絶した戦闘能力を誇る。中でも「月光丸(ゲッコーガン)」による一撃は星では対処不能だったフォビアを纏めて爆砕し、余波だけで無(ナカレ)に再生不能レベルの重傷を与えた程。
「ミ♪」
満天に憑いた卵から生まれた鳥型のフォビア。
当初は殺処分される所を「この子は生まれたばかり」「まだ人を殺していない」という理由で星に助けて貰えた。しかし、人の頭の上に乗ると自殺願望を誘発させる危険も。
他のフォビアの存在を知らせてくれたり、スーサイドガール達を乗せて超速で飛ぶ事もあって今では頼もしい仲間。
名前の由来は憂鬱(メランコリー)から。
当初はスズメの様な見た目だったが、メガロフォビアの瘴気を浴びた結果、目玉が沢山ついた鳳凰の様な姿に成長している。
流汐(ルシオ)
「『生きる歓び』を見つけてください」
自殺サイト『スーサイドカフェ』の管理人である謎めいた老年男性。喫茶店『シーサイドカフェ』のマスターでもある。
たびたび偽の自殺オフ会を開き自分の元へ自殺志願者をおびきよせては、とり憑いているフォビアを引き剥がし助けて帰している。そして、フォビアの影響無しに純粋に自分の意思だけでオフ会に参加していた星にはスーサイドガールへの道を示した。
最近では星達がカフェを手伝ってくれる様になった事は嬉しいものの、よりによってゴスロリの恰好であり、落ち着いた純喫茶がメイド喫茶に変貌しつつある事に難色を示している。
フォビア
歪(ユガメ)
「スーサイドガールハ私(アーシ)ノ獲物ダ」
星や満天が初めて遭遇したメガロフォビア。
平常時は上記のイラストのような可愛らしい片目の少女だが、戦闘態勢に入ると角や翼が生えた禍々しい姿となる。メガロフォビアの中では年齢的に一番若いらしく、見た目と相反して精神的にも幼い描写が多い。自分の計画を邪魔してきた最初の人物である星には強い執着心を抱く。
無(ナカレ)
「寝言は寝て言えゴミムシ」
語尾によく「◯◯っち」と付ける、「不完全みのメガロフォビア」。
見た目は片耳の幼い少女なのだが、一応歪より年上である。中々の毒舌家でもあり、任務に失敗した妹をこれでもかと貶したり「一回負けたザコに発言権なんかない」と切って捨てたりと、歪とはあまり仲が良くない様子が見て取れる。
一方、自らの使命に関してはある程度ドライなようで、姉妹で協力してスーサイドガールを倒す作戦を姉妹たちへ事前に提案していたり油断せずに崩と協力して星を追い詰めたりと、現実的な視点でリスクを最小限に抑えるリアリストでもある。身体からはタコの足に似た触手を生やして敵を締め付けることもできる。
崩(クズレ)
「………………………(大丈夫 お姉ちゃんがきっとあなたをママの一番にさせてあげる)」
口元には常にマスク(?)をつけている、終始無言な「苦しみのメガロフォビア」。
メガロフォビア三人長女で、無からも「崩姉ちゃん」と呼ばれている。戦闘時には巨人の様に筋骨隆々になり、髪を木の根の様に張り巡らせて相手を締め上げる事も出来る。無と組んだ時にはお互いの血から星を軽く圧倒する程のフォビアを召還した。
永遠夜(エンヤ)
「でははじめましょうか。私たち(フォビア)とスーサイドガールの戦争を」
教会のシスターを務めている「希死念慮のメガロフォビア」。
メガロフォビアの面々に母と呼ばれる絶対的な存在で、自殺こそが生という呪いから唯一脱却できるという思想を広めている。
流汐に対して強い敵意を有しており、心臓を13個所有するという全ての意味で異常な人物(更に、これらの心臓はやろうと思えば死んだフォビアに譲渡して蘇生もできるらしく、本人の意思である程度操作できる様子)。
用語
スーサイドガール
流汐が与えたマジカルアイテムを使いフォビアと戦う救世の少女たちで、人々を自殺させるフォビアに対して対抗できる唯一無二の存在。魔錬炭の影響で自殺できない身体になっているが、フォビアや他のスーサイドガールの攻撃は通じる。
自殺装束着装(スーサイドレスアップ)
スーサイドガールがマジカルアイテムを使い戦闘体勢に入る時、その服装が変化する。
なおアイテムは自殺に使う道具の形態をしていて、星は首吊りロープで「首吊少女」(ハングドガール)に、満天は折りたたみ式のカミソリで「手首切少女」(リスカガール)に、夕空は錠剤で「過服薬少女」(オーバードーズガール)にドレスアップする。
フォビア
人間を自殺に追いやる悪魔達の総称。普通の人間には姿が見えない。
空を自らの領域とする「ハーピー」、海の「リヴァイアサン」、大地の「バハムート」という三つの種族がある。
フォビアの影響での自殺の発生から4時間44分44秒以内にそのフォビアを倒すと、自殺の前まで時間が巻き戻り、被害者を死から救うことができる。
メガロフォビア
あの世とこの世を自在に行き来できるフォビアを越えたフォビア。
通常のフォビアと比べると明確な知能を有し、単純な戦闘能力も通常種とはまさに桁違いの実力を誇る(なお、通常フォビアも力をつければメガロフォビアになるパターンもあるらしい)。
目々戸森市(めめともりし)
物語の舞台である都市。場所は作中で「K県南西部」と説明されている。
ランドマークである目々戸森天主堂は世界文化遺産に指定されており、出生率は全国TOPの一方で、自殺率も全国TOPであるという。
備考
青木ヶ原星はそのまま「青木ヶ原」、金門橋満天は読み方こそ違うが「金門橋」(きんもんきょう。ゴールデン・ゲート・ブリッジのこと)、新谷響夕空は苗字の読みがにやがらなのでローマ字にするとNiagara、つまり「ナイアガラの滝」、ルナ・エッフェルはそのまま「エッフェル塔」と考えられる。どれも自殺の多い場所として知られている。