- 吉田秋生の漫画の『BANANAFISH』カタカナ表記。
- 劇中の重要なキーワード。(※本項解説)
謎の言葉「バナナ・フィッシュ」
序章の1973年のベトナム戦争中、錯乱して仲間に自動小銃を乱射したアメリカ兵グリフィン・カーレンリースが、マックス・ロボに取り押さえられた際に零した謎の言葉。
アッシュ・リンクスは、先の事件に関連してバナナ・フィッシュを追っており、やがて仲間たちとその先にある「闇」との戦いに突入していくことになる。
※以下、ネタバレ注意
その正体は新種の違法薬物。
アルカロイド系の毒性を含む麻薬で、服用させた人間の精神を混濁させ、服用した人物に薬物暗示をかけることを可能にする。
グリフィン・カーレンリーンの暴走は、このバナナ・フィッシュによるもの。ベトナム戦争の凄惨な現実に耐えきれずドラッグに手を染めたが、それがよりによってバナナ・フィッシュだった。
のちにコルシカ・マフィアのボスディノ・フランシス・ゴルツィネが、バナナ・フィッシュを利用したアメリカ政財界の支配計画を企んでいることが判明する。
『BANANA FISH』本編は、バナナ・フィッシュの謎解きから徐々にアッシュとゴルツィネとの因縁へと移り変わっていくことになる。
さらにその原型は、アメリカの病理学者アレクシス・ドースンが学生時代にチョウセンアサガオの成分から偶然に作ったものであり、アレクシスは学生生活で困窮していたことからそれを売ってしまう。のちにその本質を理解してからは、弟に残りの原薬の破棄を命じたが、裏で探求心に負けて研究を続けていた。
劇中でも各所で猛威を振るっており、数多くの人間の人生を狂わせた。
まさに「悪魔の薬」である。
最終的には研究施設ごと精製法が焼失し、闇に葬られることになった。
語源
吉田秋生当人から、J・D・サリンジャーの短編小説『バナナフィッシュにうってつけの日』から引用したことが明かされている。
青年シーモア・グラースが浜辺で出会った幼女シビル・カーペンターに語った空想の魚で、「見た目は普通の魚だが、バナナが異常に好きで、見つけるとなりふり構わず食べにかかる」という。
吉田秋生は『見ると死にたくなる魚』と解説しているが、サリンジャーの小説にはそうした内容はない。
ただ劇中の幕切れが「シーモアの拳銃自殺」という衝撃のラストで飾られており、小説の自殺への解釈に「シーモアは戦争からの帰還兵で神経衰弱を起こして自殺した」という見解もあるため、「バナナフィッシュが単なるシーモアの空想でなく、神経衰弱から端を発した幻覚」だったと受け取れば、作者の解釈も決してズレた見解ではないと思われる。