広辞苑
こうじえん
広辞苑とは?
広く支持され、ベストセラーとなった有名な国語辞典。昭和初期に出版された『辞苑』(じえん)(博文館)の改訂作業を引き継ぎ、第二次世界大戦後新たに発行元を岩波書店に変え、この書名に改めて出版された。
収録項目数が多く、現代語や古語、百科事典に収録されるような言葉なども収録されている。そのため非常に分厚い。中型国語辞典としては三省堂の『大辞林』と並ぶ両雄で、携帯機器などに電子辞書の形で収録されることも多い。
厚さは初版以来一貫して「8cm」は決して超えないように作られている。これは印刷機の都合もあるが、手に持って調べられる限界の厚さがこの程度、というのも理由である。改訂ごとに大量の単語が追加されるにも関わらず、厚さが変えられないならどうするのかというと、紙の方を薄くして対処している。しかも、手に吸い付くような、めくりやすい「ぬめり感」は保持したまま。常にそのとき本として使用できる限界の薄さの紙を使用している広辞苑の歴史は、製紙技術の発達とともにあったのだ。
広辞苑第七版の本文では示されていない「異字同訓(2014年)」の漢字の使い分け
ここでは語形が形容詞・形容動詞活用との違いは同一の語と見なす。ただし、自動詞・他動詞との違いでも、補説への誘導がない場合は、使い分けを示していないと見なす。★がついている語は大辞林では使い分けが示してあり、●がついている語は、大辞泉では使い分けが示してある。
書籍版の付録では、2014年に開示された異字同訓の漢字の使い分けがすべて載ってある。
歌う・謡う★●
撃つ・討つ★●
生む・産む★●
憂える・愁える
収まる・納まる★●
収める・納める★●
香り・薫り
香る・薫る★
掛かる・係る・懸かる★●
掛ける・懸ける★
極まる・窮まる★
請う・乞う★
鎮める・静める★●
勤まる・務まる★●
整う・調う★●
延べる・伸べる●
他・外●
混ざる・交ざる●
混ぜる・交ぜる●
世・代★
広辞苑の内容について
言葉の意味は、古い意味から、新しい、または派生的・比喩的な意味といった順に掲載してある。語釈については、類書と比べて簡潔に書いてある。用例は、文献の引用文を先に掲げてあり、あとに作例が掲げてある。
人名の収録については、日本人の掲載は故人に限られる。外国人は存命でも収録されていることがある。新語の収録に関しては、特に俗語の場合は保守的で、「アラサー」「きしょい」「ググる」「ほぼほぼ」「つんでれ」「告る」「ゆるキャラ」「ディスる」は第七版では見送られた。これらの8語は、デジタル大辞泉と三省堂国語辞典には載ってある。
「ペンギン」は、項目としては初版からあるが、第七版ではアデリーペンギン、エンペラーペンギン(コウテイペンギン)、キングペンギン(オウサマペンギン)、フンボルトペンギン、イワトビペンギンの5種を項目として立てた。
第七版では、例えば現代語ではこれらの語が加わった。
朝ドラ・安全神話・いらっと・上から目線・LGBT・お姫様抱っこ・価格帯・可視化・がち・がっつり・仮面ライダー・加齢臭・巨乳・口ぱく・小悪魔・ごち・小腹が空く・婚活・サーバル・雑味・直箸・自撮り・勝負服・白物家電・スマホ・戦力外・卒乳・立ち位置・ちゃらい・ツイート・デコる・名ばかり・乗り乗り・万人受け・美品・フェイスブック・ボカロ・惚れ直す・賄い料理・無茶振り・萌え
大辞泉にはすべて載ってある。
既に載っている項目でも、例えば以下の語に新しく語義区分が加わった。
【炎上】「インターネット上で、記事などに対して非難や中傷が多数届くこと。」
【リセット】「新たに始めるために、もとの状態に戻すこと。『気持を-する』」
【やばい】「のめり込みそうである。『この曲はくせになって-・い』」
【盛る】「さらに飾り付ける。おおげさにする。『メイクを-・る』『話を-・る』」
【はじける】「羽目をはずして浮かれる。『今日は思いっきり-・ける』」
【市民権】「比喩的に、人々の間で広く認められ定着すること。『-を得た新語』」
【二次元】「(平面に描写するのでいう)漫画・アニメ・ゲーム。また、そのキャラクター。転じて、漫画・アニメなどの架空の世界。『-に恋をする』」
【萌える】「俗に、愛情に似た特別な好意や興味を覚え、胸を高鳴らせる。『子猫のしぐさに-・える』」
これらの語義は、いずれも大辞泉と三省堂国語辞典と三省堂現代新国語辞典と岩波国語辞典の最新版には載ってある。明鏡国語辞典第三版もこの「二次元」以外の語義はいずれも載ってあったが、2022年発行の重版では「二次元」に上の意味の語義区分が追加された。
既存の語の語釈も変化があり、例えば「爆笑」は、第六版では「大勢が大声でどっと笑うこと」と書いてあったが、第七版では、人数の制限が撤廃され「はじけるように大声で笑うこと」に書き換えられた。「敷居が高い」についても、旧版では「不義理または面目ないことなどがあって、その人の家に行きにくい。」と書いてあったが、第七版には「また、高級だったり格が高かったり思えて、その家・店に入りにくい。」と追記された。
第七版の初版では、「LGBT」「しまなみ海道」の解説に誤りがあったが、重版では訂正された。電子版ではすでに修正されていることもある。
漢字表記の使い分けの解説はかなり充実している。収録語のうち110語は《》でくくって表記の使い分けが示してあり、◇で示される166語の表記の解説は類書に勝るとも劣らないほど詳細に書いてある。
品詞の表示では、類書では唯一、動詞で自他の区別を示している。ただし、形容動詞や名詞サ変活用は品詞が示されていない。また、見出しの表記で、常用漢字表にある漢字と音訓の区別は、類書では示されてあるが、広辞苑には示されていない。
書籍情報〔第七版〕
項目数
250,000語〔第六版より+10,000語〕
書籍版の大辞泉第二版も同じ250,000語〔二分冊〕。
大辞泉や大辞林とは違って、データベースを用いて頻繁に内容を更新しているのではなく、収録する言葉や用法については、改訂ごとに定めている。
編者
新村出
発行日
2018年01月12日
- 1935年 「辞苑」(博文館)発行
- 1955年05月25日 初版発行
- 1969年05月16日 第二版発行
- 1976年12月01日 第二版補訂版発行
- 1983年12月06日 第三版発行
- 1991年11月15日 第四版発行
- 1998年11月11日 第五版発行
- 2008年01月11日 第六版発行
ページ・判型
3216頁・別冊付録424頁
菊判(普通版)
B5版(机上版・二分冊)
その他
ATOK2018年版(2018年2月1日公開)では、ATOK Passportのプレミアム版に加入すれば、電子辞書機能で広辞苑第七版を利用できるようになっていた。