ATOK
えいとっく
ジャストシステムが開発した日本語入力システム。同社のワープロソフト、一太郎に付属するほか、単体製品もある。現在ではWindowsやMac、スマートフォンではAndroidやiOS向けに開発・制作されていることが多い。
小学生向け学習支援ソフト「一太郎スマイル」に付属する「ATOKスマイル」やホームソフト「ジャストホーム」に付属する「ATOK Home」と言うものもある。「いつでもどこでも、常に質の高い日本語入力システムを提供する」という自負の下「ATOK, Anytime Anywhere」を標榜、組み込み系(携帯電話等)を除く全てのプラットフォームのどのバージョンを所有しているかに関わらず、最新バージョンへのアップグレードパスを用意している。(例:ATOK X3 for Linux 所有者でユーザ登録を行っていれば、ATOK 2010 for Windows を優待価格で購入可能)
元々PC-9801シリーズ用MS-DOS向けワープロソフト「一太郎」の中で使われていた日本語変換システムとして爆発的人気を収めた製品であり、一時期はOS/2やIBM PC/AT互換機用MS-DOS(いわゆるDOS/V)、東芝J-3100シリーズ及びDynabook用MS-DOS、富士通FMR及びFMTOWNS用MS-DOSなどの各種PC、OSに対応したバージョンや、全てJavaで書かれた「一太郎Ark」と対応したクライアント・サーバー型の「ATOK Server」というバージョンも存在した。
ATOKは今現在は「Advanced Technology Of Kana-Kanji Transfer」の略称であるとされているが、それ以前にもさまざまな名称の略語とされてきた。中でもジャストシステムの本社が徳島県なので「阿波徳島」からきているという説が最も有名である。読み方も昔は「アトック」「アトケー」などと読む人もいた。
元々は1981年にロジックシステム社向けかな漢字変換ソフトとして開発されたもので、その後、8ビットパソコンで標準的だったOS「CP/M」に対応し、KTIS(Kana-kanji Transfer Input System)と名付けられた。1983年には新機軸の16ビットパソコンであったNEC PC-100用MS-DOS向けワープロソフト「JS-WORD」に付属した日本語変換システムとして初めて商品化され、後継ソフトのNEC PC-9801用MS-DOS向けワープロソフト「jX-WORD太郎」の誕生時に複合連文節変換に対応したことからATOK3と改名された。
さらに、後継のワープロソフトが商標の関係から「一太郎(Ver.1)」という名前になった際に付属していたATOK4から日本語変換システム(当時は日本語入力FEPと呼ばれていた)として一太郎から独立して使えるようになった。これは当時PC-9801用ワープロソフトのシェアを独占していた「松」の日本語入力FEP(後の「松茸」)が独立していなかったことが理由の一つである。
PC- 9801シリーズ付属の日本語入力FEPである「NECAI」の評判がかなり悪かったことと、「一太郎」が低価格路線で攻め「松」の牙城を崩しシェアを独占したこと、ライバルの「松茸」「WX」「VJE」などがアルゴリズムによる変換効率を優先したのに対し、ATOKは辞書の強化を優先したことから、導入当初から変換精度が良かったこと、ATOK6ではサードパーティにAPIを公開した事などから、かなりのシェアを独占した。
その後「一太郎 Ver.4」が登場するが、拡張メモリ(EMS)を要求するなど当時としては高すぎるスペックが必要であり、わざわざEMSメモリを購入するかPCを買い換えねばならなくなったことと、度重なる不具合が起きたことなどから、一太郎のパッケージを購入しても一太郎本体をインストールしないユーザーが相当数登場するようになった。そのためついにATOK7が単体発売されるようになり、現在へ続いている。
MS-DOSからWindowsの時代に移行してからは、 「MS-IME」「MS Word」にシェアを奪われ一太郎は衰退するが、「WX」を元に開発された「MS-IME」の評判は決して良いものではなく、2000年代までのMS-IMEは誤変換のオンパレードであったため、PCにある程度詳しいユーザーを中心にATOKは日本語変換システム(日本語IME)のシェアを保ち続けていた。
その後固有名詞にめっぽう強いGoogle日本語入力が登場したためにパワーユーザーでもシェアは減少したが、長文に関してはATOKに分があるため、文章作成が多い人やプロが使うことが多い。
Macintosh版はATOK8が初登場で、その後ATOK11までバージョンが飛ぶものの、以降はWindows版の半年遅れほどで常に最新バージョンが提供されている。
なお余談だが、「一太郎13」に付属したATOK16までは一太郎よりバージョンが3つ高かったが、「一太郎2004」(ATOK17が付属)より一太郎が年表記となり、「一太郎2005」(ATOK 2005が付属)からはATOKの表記も統一されて製品としてのバージョン番号は一太郎と同一になった。ただし、これはMicrosoft Officeと同等の方式であるため、実際のバージョン番号は現在でもバージョンアップごとに1ずつインクリメントされ続けている(現在発売されているATOK 2010はVer.23、ATOKのヘルプからバージョン情報を見ると確認することができる)。
ATOK14より登場した機能で、ジャストシステムのファイル共有サービス「インターネットディスク」を介して複数の場所でユーザー辞書を共通することができる。これにより自宅と職場などでユーザー辞書の同期が取れるようになった。
ATOK 2008のバージョンで「ATOKダイレクト」という機能が導入され、 変換候補文字の意味がプラグインを通して取得することが可能となり、使用の幅が広がった。
特にATOKダイレクトのプラグイン「ATOKダイレクト for はてな」を使えば、「頭がパーン」「ですね、わかります」「ょぅι゛ょ」のようなインターネット上の俗語でも意味を表示してくれるという、すばらしい変換システムになってくれる。
ATOKダイレクトはスクリプト言語のPerl/Python(ただしATOK 2009以降)/Rubyで拡張できる。
旧称ATOK定額制。ATOK2009と同時期に登場した月額300円の定額制サービス。一年ごとに買い換えるような人の場合、単体でも従来より安価に使用できる。2011年の改称後は、所持しているアカウント一つでWindows、Mac、Andorid、iOSの全てに適用可能になった(計10台まで)。このため、OSの異なる物を複数台所持している場合には従来よりさらに安価に使用できるようになった。
ATOK Syncも上記全てのOSで共有できるようになったため辞書を全て共通化が可能。PCで鍛えた辞書をスマホで利用できるのは非常に強力。契約中は次期バージョンが出たときも無償でアップグレードできる。1年間有効ライセンスが入ったパッケージ版は時期によっては旧バージョンが入っているが、即更新可能。