概要
元々は『月刊flowers』に2017年に掲載された読み切り漫画であったが、評判が良かったため、当時田村が連載していた『7SEEDS』と入れ替わる形で連載として再スタートした。
主人公は天然パーマでマイペースな男子大学生の久能整(くのう・ととのう)。
彼が主に密室で様々な事件に巻き込まれ、事件の裏に隠された人間たちの悩みや問題を、彼の本質を衝く言葉で解きほぐし、さらには事件自体をも解決していくお話である。
ジャンルがミステリーであるにもかかわらず「言う勿れ」とは奇妙なタイトルであるが、これは密室で主人公が喋りまくるだけの話をミステリーと言っていいのか?という田村の迷いがつけさせたものである。
そんな迷いとは裏腹に一般の読者はもちろん、SFの名手である田村がミステリーを描いても面白いということでコアな漫画オタクからも評価は高く、累計発行数は2021年6月時点で800万部を突破。『このマンガが面白い!2019 オンナ編』『マンガ大賞2019』も受賞した。
さらに2022年1月から菅田将暉主演により月9ドラマ化されている。主題歌は、KingGnuの「カメレオン」。2023年秋には映画化される予定。
ただ一方で、「富士山みたいな口しやがった学生のキャラクターが、さも本質を衝いたかのような正論を言いまくり、言われた側は黙って論破されるだけ」というスタイルが、かつて激しい賛否の渦を巻き起こした『クロエの流儀』と完全に一致しているとして、整を"ポリコレアフロ"呼ばわりするアンチも少なからずいる。
参考:「ミステリと言う勿れ」の主人公の整くん、独特な髪形を揶揄してポリコレアフロと呼ばれているらしい - Togetter
登場人物
本作の主人公であり、探偵役。19歳の大学2年生。魚座。ボリューミーな天然パーマの髪と仏頂面が特徴的な青年。土日にはよくカレーを作る。趣味は絵画鑑賞で特に印象派を好みグッズを集めている。パワーストーンや星座に詳しい。天然パーマは一応気にしている。マフラーを巻いていることが多く、タートルネックも着用する。大学では教育学部で、将来は教師志望。
「友達も恋人もいないが快適」に生きていて、基本的には1人で行動する。好き嫌いが激しく、興味を持った人間には例え犯罪者であろうと積極的に話しかけるが、興味のない人間からは干渉されても無視したり冷たい態度をとる。恋愛経験はないが、犬堂我路とライカのことは気になっていると作中で語っている。
「僕は常々思うんですが」が口癖で、気になる事があると相手構わず思ったことを喋り出す。記憶力と観察力、事実から推測する力に優れ、相手のちょっとした言葉のあやから心理を見ぬくのが得意。意図的に相手を刺激して怒らせ、本音を引き出したりもする。社会では「当たり前」とされている常識にも常に疑う視点を持ち、本人としては思ったことをそのまま話しているだけに過ぎないが、それが事件の真相解明に繋がったり、悩みを解決に導いたり、傷つけられた人の心を救ったりすることもある。反面、思い込みやソースを確かめずに喋ることもあり、作中ではしばしば注意される。
達観しているように見えて、精神的には非常に子どもっぽいところがある。また人の癖を真似る傾向があり、犬堂我路からは「人をイラつかせるからやめた方が良い」と忠告されている。前述の思ったことをすぐに喋らずにはいられない性格と相まって、相手からは「うざい」「面倒くさい」は煙たがれることが度々ある。
首から胸にかけて火傷のような大きな傷跡があり、過去の体験から家庭と家族関係にトラウマを持っている様子。作中では「男親が嫌い」と指摘されるなど、父親的な男性、父権的な態度を取る者に対して強烈な否定的感情を持つほか「子供を大切にしない親」には女性であっても嫌悪感を示す。
- 風呂光聖子(演:伊藤沙莉)
女性刑事。男社会の警察組織での自分の存在意義に悩んでいた。その上愛猫を亡くした喪失感も加わり、一時は退職を考えた時期がある。しかし、整から「おじさん達の不正を見張る位置」というアドバイスを受け、積極的に捜査に参加していく。ドラマ版では、実質的なヒロインとして登場。
- 池本優人(演:尾上松也)
巡査。既婚者。寒河江の事件後に子供が生まれている。整の指摘で夫婦仲が改善したことがあり、夫婦間の問題がおこると整のところへ相談に来る。刑事としては優秀であり、警察と整との連絡係の役割を担う。
- 青砥成昭(演:筒井道隆)
巡査部長。冷静沈着で敏腕な刑事。かつて冤罪事件を起こし、本庁捜査一課から大隣署に左遷された過去がある。真実を愚直に追い求めるが、整から「真実は人の数だけある。警察が調べるべきは事実」と諭される。
犬堂家
- 犬堂我路(演:永山瑛太)
バスジャック犯の主犯。
犬堂愛珠の弟。(ドラマ版では兄)乙女座。犬堂甲矢・乙矢兄弟はいとこ。バスジャックに居合わせた乗客として大学院生の熊田翔を名乗るも、学校に行っている形跡はない。バスジャック事件収束以降は愛珠の死ぬまでの行動やその原因を調査しはじめる。関連事件で警察に追われる身となっており整と顔を合わせることは少ないが、様々な人物とめぐり合わせ、事件を依頼したり救援に駆け付けたりもする。
- 犬堂愛珠(演:白石麻衣)
犬堂我路の姉。(ドラマ版では妹)犬堂甲矢・乙矢兄弟はいとこ。持病があり幼少より大事に育てられたため「一族のお姫様」と呼ばれるほど気が強く周囲を振り回してきたが、実は病で普通の生活ができないことで人知れず悩んでいた。ある殺人事件の被害者となる。山羊座のシルバーリングを遺した。
その他
- ライカ/千夜子(演:門脇麦)
初登場は「暖かいのか温かいのか」。整が検査入院した大隣総合病院の入院患者。獅子座。病院掲示板の誤字を使った暗号に気が付いた牛田悟郎にマルクス・アウレリウスの『自省録』を渡した。その後同じく暗号を解いた整と病院の温室で知り合い、以降は整と交流を深め、2人で様々な場所に出かけるようになる。毎日見回りの隙をついて無断で病室を抜け出すも、1時間以上はベッドを空けられない。
千夜子という名前の妹がいると話しており、妹を大切に想っている様子を見せる。その一方で、「春になる頃には私はこの世にいない」を意味深な発言を残す。実は千夜子の中にいるもう1人の人格で、父親から虐待されていたため生まれた。「ライカ」という名前は、かつて父親が愛用していたカメラのライカに由来している。自分のことは人間ではなくカメラだと認識しているが、整と交流することで徐々に人間のような感情が芽生え始めている。
- 羽喰玄斗(演:千原ジュニア)
連続殺人犯。売春を生業とした女性を連続殺人し、平成の切り裂きジャックと呼ばれる。指紋も体液も凶器も残したままという犯行傾向がある。東京と神奈川で3年間で18人の女性を殺したとされる。18件目では刑事にも重傷を負わせたとされている。
その後22年間消息を絶っており、両親は首をくくり、親戚は散り散りとなった。生きていれば6巻の時点で50歳だったが、「ばちあたり夜話」時に遺骨が発見される。
- 辻浩増/羽喰十斗(演:北村匠海)
横浜の寄木細工ミュージアムの学芸員。身長153cmの男性。職場で「こうちゃん」「こうまちゃん」と呼ばれている。射手座のラピスラズリの指輪を着けている。実は、連続殺人犯である羽喰玄斗の息子。