概要
『終末のワルキューレ』における、19世紀の英国を震撼させた『霧の殺人鬼』ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)。
神対人類最終闘争(ラグナロク)の人類側の闘士として、ブリュンヒルデに選出された神殺しの13人(エインヘリャル)の一人で、第四回戦にて半神半人の英雄・ヘラクレスと死闘を繰り広げた。
人物像
右眼にモノクルを掛けた、貴族階級を思わせる老紳士の姿をしている。自らも紳士を自称し、紅茶を好んだり、後述する過去の影響からかシェイクスピアの作品の言葉を度々引用する。
世間では5人の売春婦を殺害したことで知られているが、実際は老若男女問わず大勢の人間を殺害しており、ブリュンヒルデからも「人類の中で一番キライなクソ中のクソのゲボカス野郎」と酷評されている。その一方で神すらも恐怖させる悪意や狂気を高く評価されており、ブリュンヒルデが最初からヘラクレスの対戦相手として決められていた。
左右で眼の色が違うオッドアイだが、これは他のエインヘリャル同様に独自の特異体質で、右眼で見た相手の感情を様々な色によって判別することが出来る。本人はこの能力を後述する幼少期を生き抜くために「神がくれたたった一つのgift」と自慢げに言っている。
ラグナロクでは相手が人では無く神であることから、神を殺せることに興奮しており、自身の殺人する理由も合わせて、死ぬ瞬間の神の感情の色がどんなものに成るのか楽しみにしている。
過去
生前犯した所業故に、味方である人類側からも難色を示されていたが、その過去は悲惨そのものだった。
その生まれは上流階級などではなく、貧民街にてメアリーという売春婦が生んだ私生児であり、少年時代はその過酷な環境を右目の能力で生き抜いてきた。メアリーはこれまで5回妊娠したのを全て堕胎したのだが、6度目に妊娠したジャックだけは出産して過保護に育て、ジャックも右目に映るで母の純粋で綺麗な感情の色を見るのが好きだった。
しかしメアリーが彼を出産して育てた理由は、昔入れ込んでたジャック・スミスという男の「劇作家として成功したら迎えに来る」という常套句を信じたからであり、息子のことなど所詮惚れた男と自分をつなぐための道具に過ぎなかった。ジャック誕生から13年後、そのスミスが劇作家として成功した末に貴族の娘と結婚したという新聞記事を読んだ彼女は、これまでと一転して息子を罵倒し始めた。
自分に剥けられていると思っていた愛情の色がそうでなかったことを知り絶望したジャックは、濁った哀しみの色に染まるメアリーを救おうと首を絞めるが、その際初めて見た「恐怖」の色に美しさを感じてしまう。咄嗟にナイフで母の首を刺すと、他の感情の色を押し除け恐怖の色のみに染まっていく姿に、絶望の淵にあった彼はすっかり魅入られてしまった。
メアリーを殺したその日の夜に、ジャックは自身の父かもしれないスミスのもとへ訪れて彼を殺害し、街の雑踏に消えた(入場の際に被っていた帽子は、その際スミスの形見として持ち去ったもの)。
それ以降彼は、自身の右眼で見る他人の感情の色を自身だけが創造出来る芸術作品として、死の間際の「恐怖」の色一色に染まっていく美しさを創るためだけに殺人を繰り返し、人類史にその悪名を轟かせることとなった。
ジャックは知ることはなかったが、彼にもいた唯一の理解者が、母メアリーと同じ売春宿で働く売春婦・アンであった。彼女は普段は憎まれ口を叩きつつも純粋にジャックの事を気にかけており、彼が母を殺害して失踪した後は、誰にも愛されていなかった彼を哀れむとともに「せめて神様だけはあの子を愛してあげて欲しい」と願っていた。
ラグナロクでは観客の一人として、独りで戦うジャックに罵声を浴びせた人間を叱責するなど、実の母親以上に彼を見守り続けた。
戦闘スタイル
神器は十一女フレックが神器錬成した、触れたあらゆる物全てを神器へと変える手袋。フレック自身はブリュンヒルデに不服を申し立てる程パートナーになる事を嫌がっていたが、ジャックは彼女の心を恐怖で染め上げて強制的に錬成させた。神器の能力によって触れたただの小石ですら壁を容易に破壊する威力があり、人器であるただのナイフでも神であるヘラクレスの身体を傷つける事ができる。
戦いの当初は分解して剣としても使える巨大な大鋏を神器だと言い、鋏が破壊されてからは、両腰に身につけている袋を神器を創出出来る2つの腰袋を神器だと言っていた。袋からは袋以上の物体は創出出来ないと語っており、袋よりも大きな傘や巨大なバタフライナイフは自身が組み立てることで使っていた。袋から創出した物を手袋で触れる事で神器に変えて使用することで、神器が袋だと誤認させていた。
闘技場の舞台が、自身が希望した19世紀頃の倫敦の街中を再現した闘技場であったことから、街中に罠を仕掛けたり、街中に仕掛けたワイヤーによる立体機動に加えて、戦いの最中も自身の嘘と言動で神器の正体とその凶悪過ぎる能力を隠し続け、自身の言動や複雑に張り巡らせた伏線で神々ですら騙される程の多彩かつ老獪な戦闘スタイルでヘラクレスを翻弄した。その一方で戦闘技術も高く、神であるロキも認めるほどの体術を持つ。『触れたもの全てを神器へと変える手袋』『ジャックの類稀なる戦闘技術とと暗殺技術』『闘いの舞台が自身がかつて暮らしていた時代である19世紀の倫敦の街並みを再現した闘技場』であるこれらの条件が積み重なったことで、闘技場のロンドンシティ全体がヘラクレスを殺す凶器となる
技
輪舞曲の祝福(ロンドのしゅくふく)
一言で言うなら、『神器化させたビルを、相手に目掛けて倒す』技であるが、ジャックは移動しながらさりげなくビルに触れてビルを神器に変え、ヘラクレスを射程内に入れてから足止めし、神器化させたコートでビルを斬ってヘラクレスに目掛けてビルを倒し、自身はヘラクレスに身体が弾かれるのを利用してビルの硝子の窓を割ってビルの射程から離脱している。
ジャックの技を行う一連の行動の過程を見ていた、アーサー・コナン・ドイルとウィリアム・シェイクスピアは、ジャックの一連の行動が全て計算された行動だと察すると、一連の行動を『なんと言う悪魔的プロットだ』と戦慄を隠し切れなかった。
Dear GOD
一言で言うなら『手袋に血を纏わせ血を神器化し、神器になった血を纏った手刀で相手の身体を貫く』技であり、ヘラクレスの身体を貫きヘラクレスに致命傷を負わせたことで四回戦の決まり手となった技。
ジャックは空中でヘラクレスの攻撃を受けた事で落ちた先にあった鉄柵が脇腹に突き刺さり、脇腹に負った傷を手で庇うことで、何の疑いも無く自然と傷から流れる大量の血を手袋に纏わせており、更に身体を貫いた鉄柵を斬って、レイピアのように暗器として使い、不意打ちを狙った事で、ヘラクレスや観客らに、鉄柵のレイピアが傷を負ってまで手に入れた本命の武器だと思わせ、最後の武器である自分の血を纏った手袋を最後の最後まで隠し切った。
ジャックの一連の流れを分析したロキの考察を聞いたヘルメスからは「言うが易し、私ならこんな危険なギャンブルはごめんですよ」と言い、ロキもジャックが命を賭けなければヘラクレスに勝てないと悟り、命懸けの策でヘラクレスを斃したことから「大した奴だよ」と評価している。
登場時の謳い文句
A.D.1888 8.31
その怪物は
濃い闇の中より
突如として姿を現した・・・
鋭い牙で
切り裂こうとしたのは
売春婦5名の
生命(いのち)か?
否(no)!
人類社会
そのものか・・・?
否(no)!
またたく間に
300万都市(ロンドン)を
恐怖のどん底に
陥れた・・・
悪の中の悪
漆黒の闇を
心に飼う
その男の名は
人類史上最も著名な殺人鬼!!
ジャック・ザ・リッパー!!
余談
評価について
切り裂きジャックは遠い過去の人物でなおかつ正体不明だったことから伝説となり、本作をはじめとした創作物では美化される傾向があるが、犯罪者だということを留意する必要がある。
仮にテッド・バンディやアンドレイ・チカチーロなど、犯した犯行や正体が明らかとなっている殺人鬼がエインヘリャルに選ばれていたら、その人物や選出したブリュンヒルデを軽蔑せずにはいられないだろう。
それを考えると、アンを除いた人類側がジャックを拒絶し非難したのも、当然の反応と言えるだろう。
外伝
そのキャラクター像から人気が高まったのか、2021年に行われた人気投票では1位の釈迦に次ぐ2位と言う結果になり、第1回戦に出場した呂布奉先に続いてスピンオフ作品の主役に抜擢され、2022年12月より『終末のワルキューレ奇譚 ジャック・ザ・リッパーの事件簿』が連載されることになった。
同作では、彼の生前の犯罪歴が明かされることになる。
関連タグ
終末のワルキューレ 切り裂きジャック ジャック・ザ・リッパー
薄皮太夫/薄雪:「結婚を約束した男に裏切られた遊女」というキャラクター像が母・メアリーと似ている。ただし此方は自分自身が悪党に身を墜としている。
堕姫・妓夫太郎:最下層の遊女の子として生まれたが故に悲惨な幼少期を過ごし、やがて殺人鬼へと変貌してしまったキャラクター繋がり。
新宿のアーチャー:カップ焼きそば現象。此方も出典はイギリス。
※以下、外伝重大ネタバレ注意
外伝にて、ジャックの犯行のうち公式に判明していた5人の娼婦殺しだが、実は彼自身の犯行ではなく別人によるものであり、この本物のジャック・ザ・リッパーもジャックに殺された被害者の一人だったという衝撃の事実が明かされた。
ジャック自身は色々な名前で呼ばれる所謂「Anonymous(名無しの権兵衛)」だったらしく、ブリュンヒルデから人類代表に選ばれた際、色々な名前で呼ばれていたため出場名をどうするか聞かれた時に、自らジャック・ザ・リッパーの名を選んだ。その理由は本物のジャック・ザ・リッパーと同じく娼婦だった実母を殺した自分には相応しい名前だとして、敢えて自分が殺した殺人鬼の名前を出場者名に選んだ。
生前は何処の闇組織にも所属せずに、依頼を受けて暗殺を代行するフリーランスの殺し屋であり、殺された死体が例外無く恐怖に歪んだ顔になっていることから、『死の芸術家』の異名で呼ばれている。ただし本人の暗殺条件として暗殺を請け負うかどうかは、事前に標的に会うことで右眼で見た色で判断を行っており、暗殺の際には眼で見た標的の死にゆく最中の最期の感情の変化を色で観ることを『感情絵画(テンペスト)』と名付けており、母の死の直前に見た色を超える色を見るために、殺しを繰り返して楽しんでいる。
殺人の際には殺せることを楽しみにして興奮を隠しきれずに標的には一切の容赦の無いが、暗殺の依頼が無い時には普段は何処にでもいる紳士として生活しており、喫茶店で出されたアップルパイを楽しみにして食べたり、新聞売りの少女が落として汚れた新聞を、同じのを既に持ってるのにもかかわらず買い取るなど、平凡な生活や優しさを見せるなどしている。ラグナロクではヘラクレスとの試合後に治療を受けた後に、七福神に絡まれていて危機に陥ったゲルを、彼らに紅茶を勧める形で介入して間接的にゲルを助けたり、自身とパートナーとなったフレックと共に紅茶を飲みながら共にラグナロクを観戦したり、フレックに自身が作ったチェダーチーズ入りのアップルパイを提供するなどしている。