概要
主に鉄道車両用の自動空気ブレーキを指す。各車両に備え付けられた制御弁と空気溜めにより、編成を貫通する形で繋がれた空気管から圧縮空気の供給とブレーキ制御が行われ、空気管の空気を抜くことによりブレーキがかかる仕組みとなっているため列車分離や配管外れなどの重大な事故や故障が起きると自動的にブレーキがかかる安全性から、鉄道用ブレーキとして広く使われた。現在でも貨物列車のブレーキや客車や電気車、内燃車の主系統又は予備・被牽引用系統、また採用していなくとも新しく採用しているブレーキ装置の制御構造の基本(特に非常ブレーキ)として用いられている。
仕組み
各車両には圧力差で動作する制御弁と空気溜め、編成を貫通する形で設置された空気管が装備されており、その空気管には規定圧の圧縮空気(国内では大抵5kgf/㎠(≒490kPa))が込められ、空気溜めに蓄圧されている。
運転台や牽引車両、制御車両のブレーキ弁操作で以下のような動作をする。
制動
運転台のブレーキ弁を操作して管内の空気を抜くと圧力差で制御弁が動作し、空気溜めからブレーキシリンダーへと圧縮空気を送り込みブレーキがかかる。
ブレーキ保持
ブレーキ弁を操作して管内の空気圧をそのまま(減圧・増圧ともに行わない)にしておくと制御弁の動作はとまり、ブレーキシリンダー内の空気圧は制動操作開始からブレーキ保持までの間に送ったままの圧力となり、ブレーキ力が保持される。ブレーキ弁でこの動作をする位置を「重なり」という。
ブレーキ緩解
ブレーキ弁を操作して空気管内に圧縮空気を送り込むと制御弁がブレーキシリンダーの圧縮空気を抜いてブレーキを緩め、それと同時に空気溜めへの再蓄圧を行う。
非常ブレーキ
運転台のブレーキ弁や車掌弁の操作で空気管内の空気を一気に抜く。すると空気管内の圧力は大気圧まで下がるため、制御弁はブレーキ保ちやブレーキ緩めの動作はできず兎にも角にもブレーキをかける動作しかできなくなる。そのためブレーキが一番強い力でかかる。列車分離や配管外れでも非常ブレーキ操作時と同じ現象が起こるため事故や故障による被害を最小限に食いとどめることができる。
欠点補助、克服など
非常ブレーキをかけた後再び圧縮空気を込める際は各車両の空気溜めと配管に空気を供給して規定圧まで上げなければならないため、ブレーキ緩解まで時間がかかり空気溜め内の空気圧が不十分だと次にブレーキをかける際にブレーキの効きが悪くなったりブレーキが利かないという欠点があるため、規定圧まで上がらないと発車や力行が出来ない様になっていたり、また自動列車停止装置などの保安装置も自動ブレーキ採用車では非常ブレーキではなく常用最大ブレーキをかける、保安装置動作後の自動緩解をしないなど他の装置の工夫によりこの欠点による事故を防ぐようにしていることが多い。
また、加減速が多い列車では空気溜めの再蓄圧が間に合わないため空気供給専用に別の管も併設するといった工夫を施してあり、また長大編成になるにつれて応答性が悪くなる欠点を克服するため電磁弁による制御で他の自動ブレーキ車との互換性を保ちつつ応答性をあげる工夫もなされた。
後の世代のブレーキ
編成内の電源供給が出来、加減速の頻繁な電車では応答性の悪さの克服や電空協調制御によるブレーキに対応するため電磁直通ブレーキに変わられ、更に電気指令式ブレーキへと取って代わられていった。また、気動車でも近年の車両では電気指令式に取って代わられており、客車も電気指令式に取って代わられた。
が、電磁直通ブレーキでは自動ブレーキが非常ブレーキ系統として組まれており、電気指令式も非常ブレーキ制御はこの方式が基となっている。また牽引・被牽引用に自動ブレーキを併設していたり、被牽引時に電子装置で編成内の電気指令に読み替える列車もある。ちなみに、貨車では編成内の電源供給が困難なため現在でも多く使われている。
後の世代の自動空気ブレーキ
JR化以降に新規開発された機関車では、電子制御技術の向上と配管系統の組み立て精度向上により、自動空気ブレーキ使用時でも電磁直通ブレーキや電気指令式ブレーキの様に所定のノッチにブレーキレバーを入れると規定のブレーキ力になるように制御空気圧が自動的に調節されるようになっている。ただ、熟練した機関士からは従来に比べ操作が簡易化したため「運転がつまんねぇな・・・。」と寂しげな愚痴が聞かれることもあるとか・・・。