自動ブレーキ
じどうぶれーき
主に鉄道車両用の自動空気ブレーキを指す。各車両には制御弁と空気溜めが備えられ、編成を貫通する形で繋がれた空気管から圧縮空気の供給とブレーキ制御が行われる。空気管の空気を抜くことにより各車両のブレーキがかかる仕組みとなっているため、列車分離や配管外れなどの重大な事故や故障が起きると自動的にブレーキがかかる安全性をもつ。そのため鉄道用ブレーキとして普及した。
21世紀でも貨物列車のブレーキや客車や電気車、内燃車の主系統又は予備・被牽引用系統、また採用していなくとも新しく採用しているブレーキ装置の制御構造の基本(特に非常ブレーキ制御)として用いられている。
各車両には空気溜めと圧力差で動作する制御弁、編成を貫通する形で設置された空気管が装備されており、その空気管には規定圧の圧縮空気(5kgf/㎠(≒490kPa)が一般的)が込められ、そこから空気溜めに蓄圧されている。
牽引車両や制御車両の運転台にあるブレーキ弁操作で以下のような動作をする。
制動
運転台のブレーキ弁を操作して管内の空気を抜くと圧力差で制御弁が動作し、空気溜めからブレーキシリンダーへと圧縮空気を送り込みブレーキがかかる。
ブレーキ保持
ブレーキ弁を操作して管内の空気圧をそのまま(減圧・増圧ともに行わない)にしておくと制御弁の動作はとまり、ブレーキシリンダー内の空気圧は制動操作開始からブレーキ保持までの間に送ったままの圧力となり、ブレーキ力が保持される。ブレーキ弁でこの動作をする位置を「重なり」という。
非常ブレーキ
運転台のブレーキ弁や車掌弁の操作で空気管内の空気を一気に抜く。すると空気管内の圧力は大気圧まで下がるため、ブレーキが一番強い力でかかる。制御弁はブレーキ保ちやブレーキ緩めの動作はできずブレーキをかける動作しかできなくなる。
列車分離や配管外れでも非常ブレーキ操作時と同じ現象が起こるため、事故や故障による被害を最小限に食いとどめることができる。
制御弁によっては非常ブレーキ時に別の空気溜めからも供給してさらに常用ブレーキよりも更に強い力でブレーキをかけるようにしてあるものもある。
操作が直感的でない上に応答性が悪い。さらに非常ブレーキをかけた後に時間がかかる。
非常ブレーキをかけた後再び圧縮空気を込める際は、各車両の空気溜めと配管に空気を供給して規定圧まで上げなければならないため、ブレーキ緩解まで時間がかかり、空気溜め内の空気圧が不十分だと次にブレーキをかける際にブレーキの効きが悪くなったりブレーキが利かないという欠点がある。
このため規定圧まで上がらないと発車や力行が出来ない様になっていたり、また自動列車停止装置などの保安装置も、自動ブレーキ採用車では非常ブレーキではなく常用最大ブレーキをかける、保安装置動作後の自動緩解をしないなど他の装置の工夫により、この欠点による事故を防ぐようにしていることが多い。
また、加減速が多い列車では空気溜めの再蓄圧が間に合わないため、空気供給専用に別の管も併設するといった工夫を施してあり、また長大編成になるにつれて応答性が悪くなる欠点を克服するため電磁弁による制御で他の自動ブレーキ車との互換性を保ちつつ応答性をあげる工夫もなされた。
運転台のブレーキ弁装置も工夫が施され、ブレーキ弁のハンドル角度に応じてブレーキ管内圧力を調節するセルフラップ機構が登場しブレーキ操作の簡便化が出来るようになった。(国内だとDE10形やキハ181系から採用・量産が始まった)
編成内の電源供給ができ、加減速の頻繁な電車では、応答性の悪さの克服や電空協調制御によるブレーキに対応するため電磁直通ブレーキに変わられ、更に電気指令式ブレーキ・回生制動へと取って代わられていった。
また、気動車でもJR後の車両では閑散区間用の車両(JR西キハ120や初期のNDC等)を除いて電気指令式に取って代わられており、客車までも電気指令式に取って代わられた。
が、電磁直通ブレーキ車両では自動ブレーキが非常ブレーキ系統として組まれている。電気指令式も非常ブレーキ制御は自動空気ブレーキの発想(非常時に勝手に止まる構造)が基となっている。
シリーズ21など電気指令式ブレーキでも非常用自動空気ブレーキを搭載する車両もある。また牽引・被牽引用に自動ブレーキを併設していたり、被牽引時に電子装置で編成内の電気指令に読み替える列車もある。
貨車では編成内の電源供給が困難なため現在でも多く使われている。