概要
和製英語で、英語圏では「Hidden headlamps」や「pop-up headlamps」と呼ばれる。
通常はボンネット内部で格納されているが、必要な時にヘッドライトが展開するというもの。
起源は米国の独立系自動車メーカー・コードが1930年代に販売したコード810・812とされている。
日本では1967年にトヨタが発売した2000GTが初採用例とされる。
自動車の開発には前頭部に一定の高さでヘッドライトを装備する事が北米で義務付けられているため、海外のスーパーカーなども含むクーペをこよなく愛する自動車デザイナー達の間で、必要な時だけ規定を満たした高さのヘッドライトを展開出来るリトラクタブルヘッドライトが注目され始めた。
1978年発売のマツダ・RX-7登場後、クーペ(スーパーカー)ブームの盛り上がりもあって企業を問わずあらゆるクーペにリトラクタブル式が採用されるようになり、やがてセダンにも使われるまでに普及。
元の自動車のデザインはさる事ながら前頭部からライトが展開する光景は、車好きな男達のロマンの象徴でもあった。
1990年代に入ると、ヘッドライトの最低地上高の緩和や対歩行者の保安装備への意識の変化、さらに平成不況長期化などの影響も受けて、各国内メーカーで趣味性の高い車種や生産と維持コストが比較的高いリトラクタブル式が整理されるようになる。
国内で最後に販売されたリトラクタブル式車は、偶然にもクーペブームの火付け役となった同じマツダのRX-7シリーズ(2002年生産終了)であった。
国際市場でも気候や安全性のために前照灯の常時点灯を義務化する国も増えた事などもあり、2005年のシボレー・コルベットを最後に姿を完全に消している。
そして2018年にランボルギーニ・ウラカンをベースに製作された「プロジェクト・パンサー・コンセプト」ではカスタムカーであり20台という限定的な数ではあるものの、市販車として久々の登場となった。
2023年、ジャパンモビリティショー2023で公開された「マツダ・アイコニックSP」にてリトラクタブルヘッドライトが採用、こちらはコンセプトカーであるものの自動車メーカーからの搭載車としては久々の復活となった。
主なリトラクタブル式の国産車
・RX-7
・ユーノス
・コスモ(異例の4連式ヘッドライトを採用)
・スープラ
・セリカ
・ターセル
・コルサ
・MR2
・シルビア
・240SXファストバック
・アコード
・ビガー
・NSX
・GTO
・PAネロ
・童夢-零
余談
このリトラクタブルヘッドライト、実は鉄道車両に採用されたこともある。
1990年に登場した京成電鉄AE100形がそれで、ポップアップ形式ではないものの、ヘッドライトを覆うように取り付けられたカバーが開閉した。とはいえ後年は終日前照灯を点灯して走っていたため影は薄いのだが…
こちらのAE100形は長らく2代目スカイライナーとして親しまれたが、成田スカイアクセス線の開通とそれに伴う2代目のAE形の登場によって現役を退き、2016年に引退した。
関連動画
様々な車種のリトラの開閉動作を集めたもの。いくつ分かるかな?