本田技研工業が1983年から1999年の間に製造・販売していた小型乗用車。
概要
シビックの派生車種にあたり、シビックが2ボックスボディであるのに対して、CR-Xは初代から最終モデルに至るまでクーペボディであった。
Ballad Sports CR-X(AE/AF/AS型 1983~87)
1983年にシビックをベースとした4ドアセダン「バラード」の派生型として登場。
基本モデルは1.3Lと1.5LのSOHC CVCCエンジンで、前者が80PS、後者が110PSだった。
ヘッドライトは、点灯時にせり上がるセミ・リトラクタブルヘッドライトで、消灯時はレンズ面が完全に隠れずに、ちょうど薄目を開けたような状態となる。1985年のマイナーチェンジでリトラクタブルライトは廃止されて固定式となった。
一番人気は1984年に登場したホットモデルの「Si」。
エンジンは、この頃のホンダ製で人気だったZCエンジンで 1.6L 自然吸気エンジンながら135PSを発揮。
同社の自動車用としてはS800以来14年ぶりのDOHCエンジンであった。ボンネットには、2本のカムシャフトプーリーを収める膨らみ(パワーバルジ)があるため、一見してそれと判った。
"Cyber Sports" CR-X(EF6/7/8型 1987~92)
前モデルの名前から「バラードスポーツ」が取れて正式な車名はCR-Xとなったが、当時流行りのサイバーパンクに肖ってペットネームに「サイバー」が付けられた。
このモデル一番の特徴はリアのデザインで、横長で一体感があるコンビネーションランプの上にはブラックアウトされたガラス(リアウィンドウ)がはめ込まれ、一体感がある印象的なデザインが人気を博した(メイン画像)。
後に登場するCR-Zにもこの意匠は引き継がれたほか、インサイト(初代・2代目)や、トヨタ・プリウス(2代目以降)にも取り入れられた。
1989年に登場したホットモデル「SiR」には、可変バルブタイミング機構「VTEC」を搭載したB16Aエンジンが載せられた。これも1.6Lの自然吸気エンジンではあるが、CR-X SiR(EF8型)で160PS、シビック SiR(EK4)で170PSを絞り出すという排気量あたりではかなり強力なエンジンである。
CR-X "delSol"(EG1/2型 1992~99)
サブネームの「delSol」はスペイン語で「太陽の」という意味。
初代モデルから続いた4人乗りのファストバックスタイルから、2人乗りのタルガトップへと大変身を遂げた。
手動開閉式の他に、電動開閉式のモデルも設定された。
このモデルにも「SiR」の設定はあったものの、どうやら他のモデルよりも影が薄い傾向があるとかないとか。
前期型は、ヘッドライトの間に丸型のアクセサリーライトが付いた(3代目トヨタ・ソアラに似ている)が、後期型で廃止された。
バブル崩壊後の不況とRV車ブームで、この手のスペシャリティカー市場はまっさきに打撃を受けたため日本では台数が伸び悩み、図らずも希少車となってしまった。
クーペモデルはインテグラに一本化されたため生産終了となった。
その他
- モータースポーツでは、シビックがサーキットレースで人気を博した一方、CR-Xはジムカーナで好まれた。これはホイールベースが短く旋回性能に優れたことが理由で、特に2代目は生産終了から30年以上を経た現在でも全日本ジムカーナ選手権で活躍している。