概要
2010年〜2017年に販売。
車名は「Compact Renaissance Zero」(コンパクト・ルネッサンス・ゼロ)という造語を略したもので、「新しいコンパクトカーを作り上げるために原点に立ち返って挑戦する」という意味合いであるとされる。
同社は以前CR-Xという似た車種も発売しているが、公式ではデザインこそ参考にしたものの、繋がりは無い(=後継車ではない)としている。
公式では「世界初の量産ハイブリッドスポーツカー」を謳っていたが、スポーツカーとしてはやや物足りないスペックゆえ、自動車ファンの間での「スポーツカーか、"スポーティーカー"か?」という議論では常に意見が分かれるところ。
第31回日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、当時は先進技術として注目度の高かったハイブリッドシステム+クーペボディ+MTの組み合わせは、自動車業界では概ね高い評価を得た。
しかし硬派なスポーツカーファンには刺激が今ひとつだったことや、86/BRZという強力なライバルの登場もあって販売台数は低迷。2012年のマイナーチェンジ(後期型)で評判こそ盛り返すが、人気下落に歯止めをかけるには至らず、最後は月販14台というところまで落ち込んでしまい、1代7年限りで販売終了となった。
↑MUGEN CR-Z GT
モータースポーツでは2012年から2015年まで、SUPER GTのGT300クラスに「TEAM無限」と「ARTA」から参戦。ただしV6ターボを積んだMR車であり、ハイブリッドシステムもレース用のものを海外から輸入するなど、市販車仕様とは骨格以外は全く異なる。2013年に無限が全レースで入賞する活躍を見せ、シリーズ初となるハイブリッドカーによるチャンピオン獲得を果たした。
全日本ダートトライアルではクラス優勝を記録しているが、ハイブリッドの重量が災いしてか、それ以上ライバルに比べて目立った活躍は残せていない。ラリー、ジムカーナでも採用例はあるが、忌憚無く言うと珍車の部類であった。
メカニズム
駆動方式は前輪駆動、リアサスペンションはトーションビーム式を採用する。
変速機はCVTと6速MTの2種類の設定。CVT車にはパドルシフト、MT車には坂道発進補助装置が標準装備となった。
いわゆる2+2シーターで、後部座席はあるが極めて狭小である。
エンジンはi-VTECのLEA型1.5L直列4気筒自然吸気。SOHCだが4バルブという珍しい組み合わせのこのエンジンは、2代目インサイト用のLDA型の改良版である。
ハイブリッドシステムは2代目のインサイトや初代フィットハイブリッドと同じ、パラレル方式の「IMAシステム」を採用する。今風に言えばマイルドハイブリッドである。モーターのトルク故に、街乗りではライバルの86/BRZより快適になっている。
カタログ燃費はCVT・MTどちらも20km/L(JC08モード)以上に達する。アイドリングストップ搭載で、指定ガソリンがレギュラーなのも燃料代的には嬉しいポイント。
電子制御でのボタン操作によって、通常の「NORMALモード」、加速とステアリングの操作性を強化する「SPORTモード」、実用燃費向上を強化する「ECONモード」の3モードに切り替える事ができる。
モデルによる違い
CR-Zには2010年発売の前期型(ZF1)と2012年9月以降発売の中期型・後期型(ZF2)が存在しており、いくつかの点で大きく異なる。
- 駆動用バッテリーがZF1型は電圧100Vのニッケル水素なのに対し、ZF2型は144Vのリチウムイオン電池へ変更。これにより14→20へ馬力がアップ。ただし重量は20kg増加している。
- エンジンはZF2型で高回転側が強化され、最大出力発生回転数が6,000→6,600へと上昇。エンジン単体の馬力はMTの場合で114→120へと向上している。
- ZF2型は前出の3モードに加え、一定条件を満たすと2.4Lエンジン並みの最高出力を絞り出す「PLUS SPORTシステム」が備わる。
その他細かい走りの味や信頼性なども含めてZF2型の方が全面的に優れているのだが、先述した通り販売台数が下がっていた頃のモデルのため、中古車の台数もかなり限られてしまっているのが難点である。
余談
初代CR-Xのセダンモデルである2代目バラード後期型の1500㏄上級モデルに、CR-Zの名を冠したグレードが存在している。ただし「Z」の読みは「ズィー」ではなく「ゼット」であるものと思われる(同じ1500㏄の一つ下のグレードにCR-Gが存在しているため)。
2010年にはSNSサービスのmixiで、ニックネームの語尾に「CR-Z」と入れて改名することでCR-Zが1台当たる「Ole!Ole!CR-Zキャンペーン」を展開していた。ちなみに、現在もニックネームの語尾に「CR-Z」が入っているユーザーがいたら、それは当時のキャンペーンの名残である(すべてとは限らないが)。