概要
完全平和主義とは、『新機動戦記ガンダムW』に登場した社会構想である。
亡国サンクキングダムが提唱したものであり、文字通り完全な平和を実現させるためにあらゆる武力を放棄して対話で平和を作り出すという思想に基づく。
内容と問題点
わかりやすく言えば、平和を壊す要因となる戦争…つまり「争い」を無くすためにモビルスーツを含めた兵器を廃棄する形で世界中の武力を放棄させ、戦争に従事する者達に対しては戦い以外の人生を歩ませる事で誰もが幸福に生きられる社会を作るシステム。
しかし、現実世界における一部の退役軍人が後遺症で一般社会に適応できずに民衆から疎まれたように、戦う事をやめた兵士全員の人生を社会が保証する事は困難であり、作中で張五飛が語っていた「だから戦士はいらんのか? 戦争のためだけに生きた兵士は切り捨てるのか?」という台詞が完全平和の弊害を端的に表している。
戦争で商売している武器商人に関しても「兵器を供給する」以外の商売に切り替えられればまだ幸運な方であり、兵器の需要が無くなった後に経済苦でまともに生活できなくなる者も少なからず現れるのは想像に難くない。
最大の問題点として、平和を維持する為に誰かが争いの火種を取り締まる必要がある為、推進派はシステムの外で大なり小なり武力を保持する事が絶対条件になってくる。
その点については推進派も理解しており、地球圏統一国家の発足後に大統領直属の組織「プリベンター」が治安維持を担う事となった。
また、平和を目指している者全てが健全とは限らず、TV本編の後日談にあたる『新機動戦記ガンダムW BATTLEFIELD OF PACIFIST』で登場したP3は完全平和を口実に「人々から兵器を取り上げて兵器を独占した自分達が世界を支配する」という野望を目論んだ過激派団体であり、結局のところ人間こそが兵器以上に争いを生み出す要因と言える。
実際ドロシー・カタロニアが戦争を憎みながらも「人類から戦争をなくすためには兵器を取り上げるだけでなく人類の心そのものを変革させる必要もある」という持論で敢えて戦争に加担し、サンクキングダムの意志を継いだリリーナ・ピースクラフトも「平和は誰かから与えられるものではなく、自分自身の力で得るもの」と民衆に訴える等、完全平和を実現できるかどうかは人間次第であろう。
備考
『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』のエピローグでは以下のナレーションで人々が完全平和主義の実現に一歩踏み出した事が言及されている。
人々のもとに、平和は戻った。
そして、その後の歴史の中でガンダムを含むモビルスーツという兵器の存在は、二度とその姿を現すことはなかった。
関連タグ
カール・ノンブルー:外伝作品『ティエルの衝動』の登場人物。ゼロシステムで平和を愛する心をねじ曲げられて「戦争を起こす生物(人類)の完全抹殺」という過激な思想へと変貌させられた。
イオリア・シュヘンベルグ:完全平和主義に近い思想を提唱したガンダム作品のキャラクター。
デスティニー・プラン:ある意味正反対であり、ある意味似たような思想。