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概要

まず、田中角栄(1918~93)とは昭和の時代に内閣総理大臣として活躍した日本の政治家である。

一方、『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』は2021年配信開始のスマートフォン向けゲームアプリである。プレイヤーは武装学園都市「キヴォトス」にて、多数の学校の生徒達を横断的に指導監督する権限を持った「先生」となり、生徒を傘下に集め育成・指揮して、様々なトラブルに対応していくのがゲームの流れである。

このため、プレイヤーはストーリー中で主に「(プレイヤー名)先生」と呼ばれる。

とあるユーザーがプレイヤー名に角栄の名前を使い、エデン条約編にて窮地に陥った錠前サオリが、先生に土下座してまで助けを求めるシーンをTwitterに投稿したところ、セリフ中の「先生」の意味がまるで政治家に対する敬称であるかのように変わってしまった。

……と当時は冗談半分で受け止められていたが

後々明らかになっていった設定として、実はゲーム内の「先生」も教員・教師とは全く異なる身分である

「シャーレ顧問」が果たす役割や与えられた権限についても(学園ものというジャンルから自然に想像される教員・教師というよりも)政治家として捉える方がむしろ設定上は正確な職分の表現である。

  • ブルアカ作中において徐々に開示される設定として、「生徒会」や「連邦生徒会」は現実の用語で表すなら「地方議会(州議会)」および「連邦議会」に相当する、公的な地方政府・行政機関である。
  • メインストーリー上で強調される機会は少ないが、連邦生徒会が位置する「D.U.地区」の正式名称は「District of Utnapishtim」。現実で言えばワシントンD.C.(District of Columbia)のような地区に相当する特別行政区である。
  • 当記事のミームより後発の実装シナリオに至っては、「先生」の所属元である連邦生徒会の役員に関して直球で"議員"と呼ばれるシーンさえ登場した。
  • 連邦生徒会を中央議会と説明するならば、頂点に立つ連邦生徒会長は「首相」あるいは「大統領」に相当するポジションである。グローバル版でも採用されている生徒会長を意味する英語は「Student Council President」であり、学園ものとしての用語と実際的な行政の長としての立場をダブルミーニングで表していると捉える見方も成り立つ。連邦生徒会長直属である「先生」にもきわめて政治色・政治的権力の強いポストが用意されていた事になる。
  • 当記事の発生源となったスチルも、政治的に孤立無援となり追い詰められたサオリが八方塞がりな状況への有効打(政治力)を持ち、なおかつ味方となってくれる可能性があった唯一の存在として「先生」を頼るシーンである。

真面目な考察として

キヴォトスの行政に関して当時よりずっと多くの情報が明かされた2023年現在では、

Q.なぜ田中角栄が異様なほど「先生」にハマってしまったのか?

A.現実の尺度を用いてゲーム内用語「先生」を説明するなら、もとより教員ではなく政治家として説明した方が設定上正確であるため

という大真面目な作品考察が成り立ってしまう。田中角栄はまさかの当たらずとも遠からずだったのだ。

もちろん後々明かされた背景までは当時のブルアカユーザーたちが知る由もなかったが、「サオリが田中角栄に助けを求めに来た若手議員にしか見えない」構図(メイン画像参照)はミーム出現時点で既出だった設定に対しても綺麗に噛み合ってしまっており、一過性ながらユーザーにたいそうウケて見事にトレンドワード入りを果たしたのだった。

あくまで一過性のネタであり2023年現在ではおおよそ終息済みのミームであるが、「先生」の位置付けに関する公式の設定開示が増えるにつれて生々しさは日に日に増しており、はからずも的を射た着眼点であったと評価できるだろう。

田中角栄ブルアカの主人公説(当時のネタ)

ゲーム中にて

以前からブルアカのミームとなっていた「アロナの描いた先生」の顔は頭髪がかなり後ろに後退している(というかてっぺんにしか髪が描かれていない)せいもあって、子供が田中角栄を描いたと言っても通ると話題になってしまうという珍事が発生。

さらにはゲーム中で

ロッキード事件

  • キヴォトスという世界における学校が地方の政府機関的役割を果たしており、先生がそこで起きている諸問題を解決するために派遣される。

→陳情の解決や選挙での票集めの為に各地を走り回った史実。

→今でも残されている田中角栄の人たらしエピソードの数々。

→選挙演説で使ったとされるフレーズ「三国峠をダイナマイトで吹っ飛ばせば越後に雪は降らない」

このように何故か親和性が高く、田中角栄がブルアカ主人公であるという説を提唱するネタが広まった。

角栄の人物像とのリンク

田中角栄は第64・65代内閣総理大臣(任1972~74)を務めた昭和時代の政治家である。

その政治手法は果断にして緻密、「コンピューター付きブルドーザー」と評された。総理就任時には「日本列島改造計画」を掲げ、1972年日中国交正常化を達成、翌1973年には未曽有の経済混乱であるオイルショックへの対応に奔走した。

そして角栄の人物像として特に知られるのがとんでもない人たらしの才能である。一度会った人物の顔を忘れることはなく、料亭などでの会合でも召使いのような地位の低い従業員にこそ積極的に声をかけて労わることから(当然名前も顔も覚えていた)、誰ともなく慕われた。

多くの人物が角栄によって才を見出され、晩年にロッキード事件で逮捕された後でも田中先生のためならばと動く有力者は数多く、政界に隠然たる権力を保持し続けた。

また、最終学歴が高等小学校卒(現在の中2まで)という叩き上げの人物であり、自らが苦労した経験から教育環境の改善にも熱心だった。大学紛争解決のための臨時措置法を(強引に)成立させる際には、議長に「このままでは先生達が教壇に立てない。勉強したい学生が試験も受けられない。だからさっさと開会するんだ。やらなきゃ、この俺が許さんぞ」と直談判したエピソードが残っている。

以上、「大胆果断なやり口」「多くの人物に目をかけ、それゆえに慕われる」「断交状態にあった2団体の関係回復」「教育の重要性を認識し環境改善に努める」等々、角栄の事績とブルアカの先生に共通項は多い。

このミームが流行したのは、単に大物政治家に頭を下げている構図が受けたというだけではなく、それが田中角栄という「彼ならばキヴォトスに転移し、先生として辣腕を奮っていても納得だ」と感じさせる人物であったため、という側面も大きいだろう。

諸注意

とはいえ、本来ブルーアーカイブと政治家田中角栄そのものに関係は一切なく、ナマモノ(ただし政治家の肖像権は公人なため、芸能人やスポーツ選手よりも制限される)かつ政治ネタにもあたるため扱い方は非常にデリケートなネタである

田中角栄本人の功罪に関する歴史的評価も含めて好き嫌いが大きく分かれる内容であるため、使用する場面には細心の注意を払う必要がある。

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