“この世界が、俺たちの世界とどう関わっているのか。必ず導き出す。”
概要
謎の映像・CMチャンネルのサブチャンネルであると同時に、同チャンネルの真相編ともいえる作品であり、いわば此方が本編。主人公の「ユタ」3兄弟と、彼らの義兄弟にあたる「ススム」の合計4人が、舞台となる世界の闇や自分達の出生の秘密について探っていくミステリー作品となっている。
登場人物
当初は彼らの本名は不明であったが、2023年9月23日の彼ら自身による配信において、主な登場人物の本名及び相関関係が明らかになった。
ユタ(西華界鼎太龐帝皇兄(せんげかいかなえたいほうみかどのおうのこのかみ))
本作の主人公。我々の世界における興福寺の阿修羅像の様に、正面に加え左右に弟達の顔が付いた結合三胎児の兄弟。仏像の童子の様な格好をしている(配信で本名がいくつか公表されるまでは視聴者からは「阿修羅くん」という渾名で呼び親しまれており、本人達も「阿修羅」呼びを公認している)。
後述の「熵線」を克服せんとする代天府の計画によって、熵線を吸収する身体をもつ畸形児として誕生し、以来人柱としての役目を強いられている。
幼い頃古本屋の母親に寺に預けられて以来寺の中で育ち、成長後も住み続けている。熵線の災禍から民を守る生き神として祀られる傍ら、僧侶として主に葬儀関係での供養の仕事で生計を立てている。
脳が一部で結合しているため、若干ではあるが兄弟間で互いに感覚や思考を共有しているものの、基本的には各自独立した異なる自我と意識をもち単独で機能している。
18歳。身長175㎝。体重81kg。1人で3人分の生命が付いているためか心臓や肺は通常の1.7倍あるらしい。どの顔からも栄養の摂取が可能なため兄弟で均等に分けて食べているが、身体の構造上唯一身体を動かせる長男が嘔吐すると弟達の口からも吐瀉物が出てしまう。また両脇に弟達の顔があるため就寝中も寝返りが打てない(身体の構造上窒息はしないものの)事や長男の不摂生を原因とする痔疾等、身体の不便さに悩まされる事が多い。
全てが終わった後、代天府の施設からパソコンを入手し、この世界の2023年9月2日にYouTube上にてユーチューバー(Vtuber)としてデビュー。ただしユーザー名を本名に変更出来なかった様で、事前に入力されていた名前「蒔迦な穂」をそのまま名義として使用しており、またパソコンの音声認識機能が故障していたため、配信時は自身らの声を男声の棒読みちゃんで代用している。
なお、「ユタ」は漢字で「丰」と書く。
長男
正面の物憂げな表情の顔が彼。代天府の機密資料の暗号を解読したり、相手の嘘を見抜いたりする事が出来るほど非常に明晰な頭脳をもつ。
弟達2人は目と口以外身体を動かす事ができず顔も思った方向に向ける事が出来ない(目線や口、単独時の発声機能のみ可動)ため、彼が手足や首を動かしている。
食べ物の好みは辛い物や高カロリーなもの(肉や米飯、ラーメンなど)。
次男
左面の眉の細い穏やかな顔が彼。柔和な性格で、兄の苦悩を感知してフォローしたり、怒りっぽい弟を宥める等バランサー的な立ち位置。
食べ物の好みは生魚や生野菜等ヘルシーなもの。
三男
右面のやや前髪の長い凛とした顔が彼。言いたい事ははっきり言うタイプで、いわば三兄弟の「本心」の様な立ち位置。口調は辛辣で、ツッコミに回る事が多い。
食べ物の好みは甘党で、菓子類も野菜も甘い物は全て好き。
ススム(古本屋)
本作のもう1人の主人公で、ユタ達の相棒兼義兄弟。
母親似のため中性的な顔貌をもち、通常の人型の少年だが、父親からの遺伝で熵線の影響を受けない特異体質。また代天府の魔の手から我が子を守ろうとした父親の計らいで、彼の身体にはある切ない恐ろしい仕掛けが施されている。
ユタ達同様明晰な頭脳をもち、物品の調達等の収集作業に長けている。またユタ達同様仏像の童子の様な衣服を身につけているが、我々の世界にユタ達と来訪した際は彼等に代わって食料品等の調達をするべく、街中に溶け込むためにワイシャツを購入して着用していた。
代天府の企みや自身の両親の消息について疑問を持ち、ユタ達と共に調査する。また、ある事情から代天府から危険因子としてマークされており、生命を狙われている。
やや毒舌気味ながらユタ達とは強い絆で結ばれており、本編では視聴者側の立場で聞き役になったり、ユタ達のユーチューバーとしての設備を整えたりとサポートに回る事が多い。
幼い頃からユタ達と共に寺の中で育ち、成長後本人の意思で独立し古本屋となった。「ススム」という名は漢字で「丨」と書くため、数字と間違われるからという理由で本人は気に入っておらず、本名よりは古本屋という渾名で呼ばれる事を好む様子。
食事は普段缶詰などの保存食を常食しているらしく、我々の世界にユタ達と来訪した際の食事時も「普段と違うものを食うと腹を壊す」という理由から缶詰ばかり口にしていた。
胎海僧坊 分(くまり)
代天府のトップに君臨する高僧であり、本作の悪役。作中では代天府の人間からは猊下と呼ばれている。
雌鹿の身体に前部に上下逆になった彼自身の顔があり、臀部に同じく上下逆になった古本屋の実父こと光重の顔があるというグロテスクな外見をしている。熵線の影響か、逆天の技術により誕生した畸形児の1人であるかは不明だが、鹿の身体になる前は四肢を欠損した達磨の様な姿をしていた。
終始ニコニコと柔和な笑顔を浮かべているが、性格は非常に狡猾かつ残忍で、逆らう者は生涯をかけて自身の手で断罪し続ける事を望むほど嗜虐的であり、僧侶とはおよそかけ離れた邪悪な心の持主。ユタ達に虚言で擦り寄ろうとしたり、古本屋に嘘を吹き込みユタ達と仲違いさせようとする他、真実を頑として明かそうとしないため彼等からは強く警戒されている。
古本屋を始末しようと彼を代天府の施設まで連れて行くが…。
光重(古本屋の実父)
本作のキーパーソン。作中で最も早く本名が判明した人物で、「逆天」の研究員の1人。代天府側の人間だが通常の人間としての倫理観も持ち合わせており、仕事に対して罪悪感を感じていなかった訳ではなく、そのため自身が熵線を克服して息子(後の古本屋)を授かった事に関して、罪のない子ども達の健康を奪い続ける自身に子を持つ資格があるのかと内心葛藤していた。
その後猊下から我が子が人柱に選ばれた事を聞かされ、我が子を守るべく代天府に反逆。人柱化の呪いを我が子から逸らすため、別の見知らぬ妊婦(ユタ達の実母)に金を渡してその胎内の子に呪いを移し、結果ユタ達が畸形児(即尊)兼人柱として誕生した。更に相手の遊女とまだ幼かった我が子、ユタ達の5人を下界に亡命させようとしたため、罰として猊下の鹿化の際に肉体を猊下の臀部へと加工され、うめき声しか上げられず口から絶えず猊下の血便を垂れ流すだけの存在と化し、度々猊下の宿主である雌鹿の交尾に伴う牡鹿の生殖器で顔面を汚され続けるという悲惨な末路を辿る。
熵線に関する彼の研究メモには、この世界に無く我々の世界に存在し使用される記号がある事から…?
光重の同僚
代天府側の人間で、「逆天」の研究員。光重とは同期だが、彼からはあまり心を開かれていない様子。
外見は幼い少年だが、それは逆天の技術によって畸形児の内臓を体内に移植する事で老化を止めているためであり、実年齢は35歳のれっきとした成人男性である。
猊下におもねる発言や保身からの虚言が多く、ユタ達から猊下同様に警戒されており、また古本屋の実母に関して光重に「政府の人間の子を孕んだのだからきっと喜んでいる事だろう」などと発言している事から、自身の社会的立場への驕りや差別的な思想に染まりきった人物である事がうかがえる。
消息は不明だが、吐血して床に倒れている描写がある事から、おそらく熵線に被曝し死亡したと思われる。
古本屋の実母
光重が本作の世界で懇意にしていた遊女。頭に花を飾った短髪のあどけない少女の様な見た目をしており、顔貌は古本屋と瓜二つ。
光重との子の妊娠が発覚後、代天府の計画を知って反逆した光重の手引きで、息子と呪いを肩代わりされて誕生したユタ達を伴い下界に逃亡。我が子とユタ達を「寺」に匿わせる形で辛うじて彼等の死守に成功したものの、自身は罰として殺害され、遺体を猊下の口から喰われ光重の口から糞として排泄されるという悲惨な末路を辿った。
アップロード主
我々の世界のとあるサラリーマンの青年。「謎の映像・CMチャンネル」の管理者。実写の彼を演じているのは蒔迦な穂氏本人。
激務のストレスから鬱病を患い、違う世界へ逃避したいという思いから自殺を図ろうとした所を代天府からの接触を受ける。その後、この世界へ連れて行く事と引き換えに、送られてくるプロパガンダのCM映像を「ネットで見つけた謎の映像」と称して撒き餌としてYouTube上にアップし、興味を持ってチャンネル登録をした者を人柱候補として一定数集めよと指令を受ける。
結果人柱候補(チャンネル登録者)の数が目標に達した事でこの世界へ誘われたが、来訪した時点で代天府は既に滅亡しており、ユタ達に発見・保護された事で辛くも事なきを得るが、帰還の際に光重の形見である代天府の機密書類をうっかり持って帰ってきてしまい、返却のため阿修羅達や古本屋と再び相見える事となる。
彼の顔貌はフレームアウトや後姿で常に隠されており、全てが謎に包まれているが、その素顔を目撃した古本屋の台詞や代天府のプロパガンダ映像の数々から、彼自身の素性のみならずこの世界に関するある哀しく恐ろしい事実が示唆されている。
用語
逆天
この世界における西の大陸の大国にて生み出され我が国に伝来した、従来の科学の常識を根底から覆す新たな科学技術。完全に人工的かつ既存の科学より遥かに高度な「科学」であり、その名が示す通り不老長寿や空中浮揚等といったあらゆる自然法則に逆らった効果をもたらす事が出来、もはや呪いや魔法レベルに近い。
光重をはじめ多くの我々の世界の科学者達が代天府によって連れて来られ(我々の世界では神隠ないし失踪の様な扱いになっている)、彼等からもたらされた科学的知識は逆天に大きな進化をもたらした模様。
逆天が生み出された方法については未だ不明であり、発祥黎明期は今日の様な超自然的な特徴を備えたものではなく、また理論にも破綻があったため世界から相手にされる事はなかったらしい。技術の発展で初めに大きな成果を上げたのは日本の研究者であった様だが、技術自体の権利は全て西の大陸の大国に帰属する事になったという。
そして技術が熟した頃から、当時海外で活躍していた日本の逆天研究者の全員が精神疾患を抱え帰国、以降彼等による仏像の破壊や子どもへの殺傷事件、「天女が空を飛ぶ」等といった幻覚や妄想、目を潰す等の自傷といった異常行動が相次ぐ様になり、刑法39条の様な事情で罪にも問えないため、所謂「無敗の勇者」と化する元研究者が増加。それに伴い成功者の陥落を喜ぶ者(恐らく「謎の映像・CMチャンネル」で登場した「ジョーカー」達を意味すると思われる)も現れ、結果として日本の治安が悪化する原因となった。
熵線
逆天を発展させた結果発生した人体に有害な物質で、我々の世界でいう放射線に近い。浴びれば1日で身体が朽ちてしまうが、被曝に伴う苦痛の体感は逆天の技術で弄る事が出来るらしく、その気になれば相手を約57億年分(即ちほぼ無限)という、文字通り地獄の苦しみを味わせながらじわじわと嬲り殺す事が出来るという凄まじく恐ろしい代物である。また熵線に汚染された水は2度と利用する事が出来ず、これが我が国を除く全人類の滅亡の一因にもなった。
また熵線は有害でありながら技術によって人体より発生させる事が出来るため、生物兵器として応用する事が可能。我々の世界における電磁波の様な仕組みをもち、プラス極とマイナス極の様な関係性がある様だ。
代天府
この世界における日本政府の様な組織。西の大陸から輸入した逆天の技術を用い、不老等のさまざまな用途のため国民を実験台に非人道的な人体実験を繰り返している。また逆天の技術によって施設を雲の上に建設しており、まさに神に代わる(代天)組織(府)として地上の民草を監視している。
人柱
この世界における生き神的存在として代天府の手によって生み出された畸形児達の総称、もしくは異世界から集められる者達を含めた人的資源。作中では「从」という中国語の漢字が使われている。
この世界では畸形児には不思議な力が宿るとされており、逆天の技術によって人為的に多くの嬰児が畸形として発生させられ、「即尊」という生き神や即身仏的な存在として信仰されたり、不老長寿をもたらす資源として肉体を消費されたりしている。
なお、世にも稀有な三鼎の姿であり、且つそれぞれ自我と知性を保ったまま奇跡的に生存が出来ているユタ達は、あまた生存する即尊達の中でも特に高い地位にいる様だ。
文字
「謎の映像・CMチャンネル」で示されている様に、代天府等のプロパガンダCMをはじめ、政府由来の映像は旧字体や変体仮名、文字化け等の特殊文字が使用されているが、この世界では本来我々のものと同じ読み方や書き方の漢字、仮名が存在している。
ユタ達の推測によれば、こうした特殊文字が多く使用される背景には海外への情報漏洩を未然に防がんとするという政府の思惑がある様である。正しい漢字や仮名で表記してしまうと機械で容易に翻訳が可能なため、日本国民(就中日本語ネイティブ話者)にしか意味が通じない様に、敢えて形が似ていて読み方や意味の異なる文字を配置したり、関係のない文字を混入する等して工夫をしている模様。
例:
発音・読み方「やってみるわ」→表記「乜っ𠃌みゑゟ」→ 機械翻訳→「乜miゑゟ」(機械翻訳不能)