概要
辺境伯は爵位の一つ。
公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五等爵とは違い日本では使用されていない。
辺境伯=Markgrafは「辺境=Mark」の「伯=Graf」でそのままの意味。
詳細
文字通り、端っこの領主。
フランク王国がその四方の辺境に作ったもので、国境を守る領主であるため、他の伯爵より強い権限が与えられた。
スラブ人、イスラム教徒、ブリテン島のケルト地域など非キリスト教信者が住む地域との境界に設けられた。ゲロ辺境伯のように、異民族に破れて消滅するものもあったし、ブランデンブルク辺境伯のように、異民族に勢力を拡大し、ほかの爵位を手に入れて雄飛するものもあった。
ニュルンベルク城伯からブランデンブルク辺境伯、選帝侯を兼任し、やがてプロイセン公からプロイセン王となりドイツ帝国を興したホーエンツォレルン家が有名。
またフランク王国がイベリア半島に作ったスペイン辺境伯は、やがてナバラ王国とバルセローナ伯爵領に発展し、そこからカスティーリャ王国、レオン王国、アラゴン王国が生まれていった。これらを統合して生まれたのがスペインである。
五等爵では侯爵相当とすることが多い。しかし前掲の教皇庁序列資料でのブランデンブルク辺境伯の序列が諸国の公爵よりも上であったことから明らかなように、その強い軍事的政治的権限に根差した影響力は侮りがたいものがある(なお、ブランデンブルクの序列が高いのは選帝侯だからだと思われる)。
なお日本では「辺境」と言う訳語の響きのせいか、「伯爵より扱いの悪い田舎貴族」と勘違いされる事も多いが、決してそんな事はないので注意。
フィクションにおける辺境伯
辺境伯はファンタジー作品でも人気の爵位である。
作品にもよるが
- 領地の外側に接する貴族で、多大な権限を持ち、強力な騎士団や交易ルートを持つ
- 一方で中央の社交界から離れ、外敵の対処など野蛮な役割をすることから、周囲から軽んじられたり、偏見の目で見られることがある
- 外側にあるので異民族やモンスターの侵攻など色々と事件が起きがち
といった扱いが多く、高い実力を持ちつつトラブルに事欠かない便利な爵位・領地として「恐れられる辺境伯家に嫁入りしたら…」「冒険のために辺境へ…」など色々扱われる。
また近年ではフィクションでの扱いから逆に「字面では下等な貴族と誤解されやすいが実際は違う」という事実だけ有名になっているところすらある。