概要
出版時点での日本の(ほぼ)全ての魚種が載っている超大型書籍。掲載種数は最新版の三版で4200種を超える。
「検索」の名の通り、アキネイターのように選択肢を選んでいく事であらゆる魚を検索できるとても便利な機能があり、素人でも並みの専門家レベルの同定を行えるようになっている。むしろこちらの機能が本体といえるかもしれない。
ようは魚の種類がわかる魔法が書かれた魔導書であるが、重さ5kgくらいあるので物理的にもたぶん鍛えられる。
執筆者には日本を代表する魚類学者が名を連ねており、上皇陛下も執筆に加わっている。
日本では年に数十種程度の新種が記載され魚さんの種類が増えるため、約10年ごとに改訂版が発行されており、第三版が現在の最新版である。
1993年発行の初版ではバカみたいに分厚い一冊の本(1474ページ)であったが、2003年の第二版では超分厚い二冊一組(計1818ページ)、2013年の第三版では超分厚い三冊一組(計2530ページ)と成長を続け、そろそろ第四版の出版が期待されていた…が(後述)。
現状、日本のお魚を扱う場合には基本かつ頂点となる書物で、この分野に関連する博物館や大学、水族館などの施設や、環境アセスメント会社、研究者、強めの魚オタ等には必須といえるアイテムである。
…のだが版元の事情により増刷や次版が絶望的と判明したため、最新版の第三版は定価35000円のところ古書価格15~70万円と非常に高騰してしまい、魚類関係者は非常に厳しい持ち物検査を強いられる事になっている。
通常、これほどに専門的な知見を得ようとすると、複数の文献や論文(多くは英文である)を読み解く必要がある中、本書は和文で綴られた一般書籍であり、一般人ですら最上級の専門知に触れられた。
母国語で学問のハイエンドな部分に触れられる事は実はとても恵まれた事であり、学問の門戸を広げてその発展に寄与するため、本書の絶版は日本の科学分野にとって大きな損失の一つとなっている。
なお、日本の魚類学者の叡智が結集した究極の書籍であるが、さすがに人の生み出したモノなのでミスもあるし(正誤表が10ページほどある)、執筆者の私見があったり、三版発行から10年以上経ち古い知見もあるため、研究や論文執筆など厳密さを求められる場面では「同定は魚類検索第三版に従った.」では済まさず更に詳細に文献等を漁ったほうがよいかもしれない。
第三版以降に追加、変更された種を含めた全魚種の目録は、鹿児島大学総合研究博物館がWeb上で「日本産魚類全種リスト(JAFリスト)」として公開しており参考になるだろう(あくまで和名と学名の一覧であり、解説や検索機能はない)。
関連するやべぇ本
日本産稚魚図鑑
日本でこれまで見つかっている稚仔魚のほぼ全てが載った、ロリコン版の魚検。第二版まで存在する。
身元不明なものもあるため全種ではないものの、親とはかけはなれた姿をしている稚仔魚の検索を行える、これまた日本が世界に誇れるほど専門的な書籍。
また、「魚卵の検索」という尋常でない機能もあり、僅か数㎜以下の卵から親の検索もできる。
魚類検索よりは専門性が上がっており、調べたい稚魚がちっさすぎる問題もあるので扱いはやや難しい。
こちらも増刷は見込めないため、子どもに興味があったり、チリモンマスターを目指すなら、入手可能なうちに手に入れておいたほうが良いかもしれない。定価5万くらいする。
日本産魚類全種の学名 語源と解説
日本産魚類検索第三版の姉妹本で、第三版に載っている全て魚種の学名について、語源や由来の解説が載っている、教養の極致のような本。
不適切な学名には非常に手厳しく、「忌むべき混成名」や「学名の私物化」などをまぁまぁ直球で批判した解説も見受けられ、学問の矜持のようなものを感じられる。
こちらも絶版状態であり入手困難である。
日本産魚類生態大図鑑
日本産魚類検索第一版の補完として出発された本。イラストと文章による同定形質の解説がメインだった魚検に対して、こちらは生態の写真に重きをおいたフルカラー写真集のような図鑑。
これも絶版状態であるが、魚の種類を調べるといった用途にはやや使い難いため古本が比較的安価に流通し入手しやすく、文字より写真が多いため、魚類検索よりは一般人向けと言えるかもしれない。