Y Ddraig Gochとは、ウェールズ語で赤いドラゴンの意味で、yは定冠詞(英語のtheにあたる)、ddraigが“ドラゴン”、gochが“赤い”である(ウェールズ語では修飾語は被修飾語の後に置く)。この発音を国際音声字母では[ə ðraig gox]と表記する。英語ではウェルシュ・ドラゴン(Welsh Dragon)(ウェールズのドラゴン)という。
ウェールズの伝承によれば、赤いドラゴンはブリテン島の大地の守護神であり、ゲルマン民族の守護神である白いドラゴンと戦ったという。つまり、ゲルマン民族がブリテン島に侵入するより前にブリテン島に土着していたケルト系民族であるブリトン人がウェールズ人へと発達する過程で、そのまま赤いドラゴンも継承されてウェールズの象徴となったのである。
キリスト教の価値観によれば一般に邪悪の象徴とされるドラゴンだが、ウェールズでは赤いドラゴンは国や民族の象徴・化身であり、守護獣と見なされ、多くのウェールズ人は「我々はレッド・ドラゴンである」との誇りを持っている。このためウェールズは「ドラゴン=ハート(精神)の国」と言われる。
なお、新約聖書のヨハネの黙示録に登場する赤いドラゴンは、7つの頭と10本の角を持ち頭に7つの冠を載せていると書かれており、全く無関係である。
参考:
ウェールズの旗 ─ 同上