宿虎
すくいた
概要
虎杖は特級呪物である宿儺の指を取り込んでも死なずに「器」として適合した「千年に一度の逸材」であり、現在はとある契約のもと、宿儺を肉体の裡に住まわせている。
以下、ネタバレを含む
呪術廻戦は、仙台の高校に進学した主人公・虎杖悠仁が何気なく道に落ちていた1本の指を拾ったことが話の端緒となっており、2人が物語のキーパーソンであることを示している。
本誌表紙やアニメのキービジュアルなどでも対称的な存在としてセットで描かれる頻度が高い。
第1話にて特級呪物『宿儺の指』を虎杖が飲み込んだことで宿儺が虎杖に受肉、一つの体に二つの魂が存在する状態となる。
本来、呪物を取り込んだ人間は(恐らく故意過失問わず)呪術規定に違反したとして処刑されるのだが、呪いの王に体の支配権を渡さなかった虎杖の器としての才能を見込んだ五条は『宿儺の指20本を全て取り込んだあとに死ぬ』ことを提案。
虎杖は自分にしかできないことーー宿儺の指を全て取り込んで死ぬを果たすために呪術高専へと転入することとなる。
しかし、宿儺としてはせっかく現代に甦ったにもかかわらず心臓を人質にしても体を渡さず、生意気にも己の自由を制限し、さらに自死することを躊躇わない虎杖のことを面白く思っていない。
とある縛りを持ちかけたあとも、暇にかこつけて言葉でいびったり、渋谷を更地にして数多の魂を差し出したり※と精神的な凌辱に余念がない。
虎杖としても宿儺のそういった仕打ちに傷付き、失望し、時には自身と自身の弱さを憎悪するまでに追いつめられるが、決して肉体の主導権を渡すことなく、己の役目を果たすべく前に進んでいる。
※120話の『小僧 せいぜい噛み締めろ』は、英訳でも『Hey,kid. Bon appétit.(どうぞ召し上がれ)』という食を連想させる単語(仏語)があてられている。
あの大量虐殺は、食べること(人食含む)が嗜好・興味である宿儺が、虎杖に捧げるためにわざわざ行った行為であることが示唆されている。
なお虎杖はその直後、嘔吐している。
以下、単行本未収録の物語の本質に関わる重大なネタバレを含むため本誌未読の場合は注意
第212話にて、宿儺は自由を得るために虎杖と結んだ縛りである“契濶”を実行、虎杖の左手小指を介して受肉し直す。
虎杖の公式イメソンである『ハートに火をつけて』にある通り、第1話より固く結び付いていた2人の結び目が、ついにほどけることとなる。
何度心を折っても、決して肉体の主導権を譲らず、意のままにならない虎杖は、宿儺にとってもはや単なる器ではなく、『檻』であった。
第248話にて宿儺は自身を内省をする中で虎杖に対する気持ちを述べているのだが、虎杖に受肉していた間のことを『魂の同居』と呼び、虎杖を『他人ではない』とし、虎杖が『百折不撓の理想を持つと知っている』がゆえに、千年間変わらなかった己すらも半年に満たない期間で変えたと認めるに至る。
宿儺が虎杖の長所を突如、しかも500文字に及ぶ長文で語り始めたため、読者は度肝を抜かれた。
以下、原文まま。
『何故俺は苛立っている……? 俺はあの術師が死んで落胆しているのか?
他者に満たしてもらおうなどと考えたこともない。
そう。食らいたい時に食う。目障りならば殺す。面白ければ遊んでやるだけだ。それが俺だ変わりはない。死ぬまでの暇つぶしとしては丁度いい。
そうだ。死ぬまでの暇つぶし。それが俺にとっての他者だ。俺は俺の身の丈で生きているに過ぎない。それを測れないのは俺以外の連中の問題だ。
俺を殺す。
それが今のこいつらの理想なわけだ。理想に殉ずる者を見てなぜ俺は苛立っている? 同じようなやつは千年前にもいた。千年前と変わったのは俺の方……?
小僧。
そうだ。お前だ。
千年前戦う相手は他人だった。
他者の理由も理想も全て俺にとっては真偽の分からない後付けの遺言だ。虚勢もあったろう。自己陶酔していた者もいただろう。だが今回は違う。
同じ肉体に魂を同居させていたんだ。
俺はコイツが コイツの魂が何度折っても息を吹き返す。百折不撓の理想を持っていると知っている。
俺よりも遥か格下の弱者が理想を貫く意志の強さでのみ俺と並ぶことを知ってしまった。
俺はそれがどうしようもなく不愉快なのだ。
つまり俺は身の丈が大きすぎる故に、理想とは無縁で理想を嫌悪する人間だったわけだ』
宿儺が上記の自己分析を戦闘中に始めたのを見た虎杖は『なんだ? 宿儺が……ぼーっとしてる……?』と警戒こそしているが、自分が原因だとは思っていない。
宿儺から見た虎杖の解像度(高)と、虎杖から見た宿儺の解像度(低)の差には驚きを禁じ得ない。
宿儺を完全に抑え込める能力、宿儺とお揃いの髪色、宿儺と同じ瞳の描き方と、2人の関係を匂わす伏線は多くあったが、第257話にて満を持して宿儺と虎杖の関係性が開示された。
虎杖の父親が、千年前に母胎内で宿儺に喰われた双子の片割れの転生体であったこと、虎杖の母親によって彼の体には生まれながらに特級呪物『両面宿儺の指』が封印されていたことが宿儺の口から語られ、2人の容姿がどことなく似ている理由が明らかになった。
虎杖は1話で宿儺の指を飲まなくても時が来れば宿儺を受肉し、死滅回遊に参加することがあらかじめ定められていた。
2人は必ず出会う運命だった。
宿儺自身に妻子はおらず、虎杖との間に血縁はないのだが、宿儺の双子の魂の転生体である男の息子ということで、2人の魂はいわゆる“叔父と甥“の関係であるといえる。また、呪術界では一卵性双生児は魂の形が同じであるが故に同一人物とみなすため、宿儺がそうであった場合、2人は呪術的には“父親と息子”だと考えることもできる。
さらに、虎杖は生まれながらに宿儺の魂が宿った指を与えられて呪力に適合しているため、遺伝子的に非常に近しいと思われることと、二つの魂が母親から一緒に生まれたという意味では2人は“双子”だと解釈することも可能。
『血は呪いよりも濃い』とされる作品の顔に相応しい複雑かつ特異な関係性である。
術式は遺伝だが、子供や孫に必ず引き継がれるわけではない。それが一卵性双生児であっても双方に同じものが発現するわけでもないようだ。2人が肉体・魂共に限りなく同一の存在であるということは、虎杖が宿儺の生得術式である“御廚子”を扱えることが証明している。
御廚子については、宿儺との戦闘中に黒閃を決めたことで覚醒したが、術式については6月に宿儺を受肉したことで刻まれたものなのか、生まれながらに与えられていた指により15年の歳月をかけてゆっくり刻まれたものなのか、はたまた両方の条件が必要であったかは不明。
虎杖が使えるようになった術式は他にも赤血操術があるが、こちらは新宿決戦前に脹相の弟である呪胎九相図四~九番を取り込んだことで発現したと明言されている。
虎杖の急激な覚醒には、呪いの王たる宿儺が彼の肉体を使って呪術を行使した経験が貢献しているのは間違いなく、虎杖もそれを指摘されてスンッという顔こそしているが否定はしていない。
しかし、そのめざましい躍進も肉体を奪われている間も主導権を取り戻そうと必死に抵抗し、犯した罪すらも自分の弱さのせいであると認めて、背負って歩き出せる虎杖の魂の高潔さと勁さがあってこそであり、誰にでもできることではない。
なお宿儺自身も羂策から呪物の成り方を、摩虎羅から世界を断つ斬撃を学習し、完璧に実践している。
血は争えないのかもしれない。
述べてきたように、相手に対して作中の誰よりも複雑で深い因縁を持つラスボスと主人公ということもあり、二次創作でも原作軸の場合は殺伐したやり取りがメインに据えられることがある。
特に宿儺が己の魂を置いている生得領域でのやり取りが虎杖の肉体に直接影響を及ぼさないこともあって、Rー18G(強姦、グロ、リョナ、カニバ等)の要素を含む作品が他のカップリングと比べると多いことが特色ともいえる。
虎杖で受肉している宿儺は、顕現時はもちろん生得領域で過ごしている時も常に虎杖と同じ姿をしているため、転生モノやパロディ作品では双子や血縁設定が取り入れられることも。
第275話で直接の血の繋がりはないものの、2人が魂・呪術・遺伝子的に三等親の近親(叔姪や親子)であることが明かされたため、カップリングとしてはよりインモラルな雰囲気を持つようになった。
閲覧には注意な点はあるが、甘々ラブラブイチャイチャからRー18G、近親相姦まで多種多様な性癖を許し、満たしてくれる懐の広いカプとも言えるだろう。