概要
既成概念的には、京都にあるような茶屋や料亭に使われるフレーズであり、その店と面識がある人からの紹介がなければ入店できない、という意味である。また、これとは別に「一見さんお断りの商品」なるものも存在する。
「一見さんお断り」と言われて「何だ、こん畜生!」とキレる、腹を立てる人もいると思われるが、単に格式ぶっているわけでもなく実は合理的なビジネスである。
その理由は、一見さんお断りの店は、その客を楽しませるための食事代や、芸者などの依頼料、果てには帰宅するまでの交通費までその店が立て替えているのである。請求するのはその一か月後であり、何人もの客がその店に入ると立て替えきれず破産してしまうからである。
それでも前払いやその場での現金払いにしないのは、その場で支払いがあると客と店とのつながりが途切れるのを防ぐ意味合いもある。
また御贔屓が気前よく利用してもらうためにも、店のルールを分かった常連が御新規を連れて愉しみ方をレクチャーしてくれるよう促すことで、店全体の雰囲気を台無しにするリスクを減らし、かついわゆる「お客様」と呼ばれる迷惑な客の来店を予防する必要がある。これが新規客の開拓方法で、先細りしそうで先細りしないのである。
店員側も、来客数を制限することで、店側のサービスの質と効率を最良に保ち、トラブルに際して柔軟な対応を余裕を持っておこなえる等のメリットがある。
一方で常連ばかりを相手にしているため、料金が高くて不明瞭なほか、どうしても保守的になりがちで、新たな商品やサービスのアイデアが出にくいという問題点もある。
近年では、昨今の不況や少子化などの影響により、やむを得ず「一見さんお断り」を撤廃し、新たに「一見さん歓迎」とフレーズを変え、一般人でも入店できるような店も出始めている。それでも、礼節やマナーを忘れずに。
一見さんお断りは格式高い店ばかりでなく、コロナ禍のせいで地方のスナックでも採用しているところがある(ついでに県外の客もお断り)。感染を防ぐのが目的なのと、地元の常連だけで経営が成り立つためである。とはいえその常連がウイルス持ちだったら、どうするのだと。
憧れから雅なお店に飛び込むのも悪いといわないが、そうした店には店なりのルールと事情があり、客側もそれを踏まえて遊びの場を提供してもらっているという謙虚さも必要なのである。
頭ごなしに「店が客を選ぶなんて偉そうだ」、「お客様は神様だぞ!」などと言っている「不躾な客」を寄せ付けないために、「一見さんお断り」は存在している。
「一見さんお断り」がネタにされた作品
- さよなら絶望先生 - 糸色望が京都を下見に行った際、ある店に「一見さんお断り」と言われて「一見ではなく、百見なら…」といったネタが出ている。
- 『MAIKOHAAAAAN』 - 映画。「一見さんお断りの真実」が、作中終盤で明らかにされる。