概要
第36代皇帝。先帝オトフリート5世の次男で兄リヒャルトに次ぐ帝位継承権を有するが、周囲には無能な上に放蕩者だと蔑視されており、先帝から勘当寸前であったことから、誰からも皇帝になることはまずないと思われ、欠片も期待されていなかった。しかし、有能な皇太子たる長兄リヒャルトと弟クレメンツが帝位を巡る争いの挙げ句に潰し合って共倒れした結果、文字通り「棚から牡丹餅」により29歳で即位。
その後も政治に関してはブラウンシュバイクら門閥貴族に任せきりで、良くも悪くも権力には無関心。悪政を敷いたわけではないが、名君とは間違っても言えない人物である。
ただ皇帝の地位も有力な兄弟が居なくなった事からなし崩しに門閥貴族に担ぎ上げられただけで彼らを御する器量も権力基盤もなくお飾りも同然であった。
帝位に着いた後は豪奢と漁色に走っており、他にゴールデンバウムの血統が居ないことから様々な門閥貴族の子弟と関係を持ち28人もの子を儲けたが2人を残して悉く死産または若くして亡くなっている。
帝位にありながらも亡き先代や兄弟達のような才覚や器量もなく門閥貴族の権力闘争に翻弄され、前述の実子たちの早逝の件もあってか本編中では虚無感に囚われた覇気もなく草臥れた様な振る舞いを見せている。
そんな彼の心情を表すかの様にコミカライズ版では門閥貴族から跡継ぎを決める様にせがまれた際に黙して語らず、以下のように心情を内心で語っていた。
決めて…おったのだ……もう何十年も前から余は………
何一つ決めてやるものかと…
趣味は造園と美少女集め。ラインハルトの姉、アンネローゼがその眼鏡に適っ(てしまっ)たことから物語は始まる。
言ってしまえば全ての元凶。彼がアンネローゼを囲わなければ、ラインハルトは軍人を志すこともなく、ゴールデンバウム王朝はもっと安らかな終焉に向かっていたかもしれない。
ただし、本人に悪意があったわけではなく、彼自身は徹底した趣味人に過ぎない。
また、ラインハルトからは「自らの手で倒すべき怨敵」として認知されているが、フリードリヒの方はラインハルトをさほど嫌っておらず、むしろ好ましい印象を抱いていた節もある(積極的にサポートしていたわけではないが、その出世街道を阻もうとしたことは一度もなく、姉との面会も度々許している)。
この様子にさしものラインハルトでも彼の内心が読めず自分を謀殺する為の方便かとも警戒し、彼の抱える虚無に恐れを抱いている。
アムリッツァ会戦終結後、急性心疾患により病没。ラインハルトは自身の手で裁きを下す前に彼がこの世を去ったことに憤った。
その際に
作中で彼が心から気を許していたと思われる描写があるのは皇子時代からの側近あるリヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼンくらいだったと思われる。
能力
一般的には「凡君」という評価が多い。良くも悪くも政治を自分の思う方向に持って行こうという気は皆無。
ただし、政治に携わる気はまるでないが、政治眼が皆無だったかというとそうでもない節がある。
ゴールデンバウム王朝が500年の間に歪みと矛盾を抱えていることをその権力の中枢にいながら察しており、ラインハルトがそれを一掃しようとしていることについても理解していた感はある。
しかし理解はしていてもラインハルトを排除するでも応援するでもなく、事態が移り変わるのをただひたすら静観(あるいは傍観)し続け、自身はバラと美少女の世話以外に一切関心を払うことはなかった。
ただ、彼がアンネローゼを迎える以前に寵姫としていたベーネミュンデ侯爵夫人からは慕われており、彼女が抱いていた愛情が皮肉にもラインハルト、アンネローゼを幾度となく暗殺の危機にさらしている。
もっとも、彼が門閥貴族の意向に反した行動を取ろうとしたところで潰されるのがオチであり、その反発を跳ねのけるだけの行動力があったとも思えない。その意味では自身の限界をよく理解していたともいえる。
自然死に至るまで誰からも関心を払われずひたすら趣味に没頭できたのも、その態度が原因であったことは疑うべくもない。
ラインハルトから憎悪されながら、最後の瞬間まで自分が望むことだけをやり続けた、ある意味では作中における一番の「勝者」ともいえるかもしれない。
道原かつみ氏のコミカライズ版では臨終が描かれたが、こちらでは意図的に何もしなかった事が強調されており、権力闘争のために自身を苦しめた門閥貴族を憎んでいる節さえ感じられる。世継ぎを決めて欲しいと言う貴族達に彼はただ言い放った。
『決めておったのだ、何一つ決めてやるものかと』
『世継ぎは、決めぬ』