小楠公(唄)(永井建子)
しょうなんこう
概要
南北朝時代の有名な南朝の一族である楠木正成の息子・正行のことを歌った軍歌。
1899年に永井建子が出版した「鼓笛喇叭軍歌 実用新譜」に収録される形で発表された。
しかしこの曲自体は後年埋もれてしまい、戦後は替え歌の方が広まっている。
替え歌
特に有名なのが「歩兵の本領」である。
この「歩兵の本領」は長らく1901年に製作された旧制第一高等学校寮歌「アムール川の流血や(第11回紀念祭東寮寮歌)」の流用であるとされてきたが、2009年に「アムール川の流血や」の曲譜と歌詞に「小楠公」の流用であることが記されていたことが判明している。
ただし「歩兵の本領」が「小楠公」から直接同曲に至ったのか、「アムール川の流血や」を経て同曲に至ったのかについては意見が分かれる。
- 第11回紀念祭東寮寮歌(アムール川の流血や)
旧制第一高等学校東寮第十一回紀念祭寮歌として作成披露され、ロシア領内の中国人居留地江東六十四屯を襲撃した事件を描いている歌。
一般的には冒頭の歌詞から「アムール川の流血や」と呼ばれる。
作詞は塩田環、作曲は栗林宇一とされているが、栗林も「小楠公」のほか複数の楽曲を組み合わせて作成したといった趣旨の発言をしている。
後半部の旋律は「小楠公」と異なっており、「歩兵の本領」など以後の替え歌も大部分がこれに倣っている。
- 征露歌(ウラルの彼方)
日露開戦直後に旧制第一高等学校で行われた紀元節奉祝集会に於て「征露歌」として披露された、戦意発揚の為の歌。作詞は青木得三。
「アムール川の流血や」のように通例行事で作られたものではなく、学生たちによる戦意高揚を目的に作られたとされる。
こちらは明確に「アムール川の流血や」の替え歌とされている。
- メーデー歌(聞け万国の労働者)
「歩兵の本領」、「アムール川の流血や」に次いで知名度の高い替え歌。作詞は大場勇。
1922年の第3回メーデーで発表された。
このころには後述のように校歌や応援歌として「小楠公」の旋律が引用されており、その替え歌として「インターナショナル」以上に知名度が高かったとされる。
現在では「アムール川の流血や」と「歩兵の本領」はJASRACには「小楠公」の永井と「アムール川の流血や」の栗林双方の名前が作曲者として登録されている一方、「聞け万国の労働者」は栗林の名前のみが登録されている。
- メーデー歌(聞け暁の鐘の音)
同じくメーデー歌として発表された。こちらは作詞者不明。
このほか「新革命歌」、「唄えシッカリ唄ってくれ」などメーデーを題材にした替え歌が多数存在する。
- 野砲兵歌
野砲兵隊の歌。作詞者不明。
砲兵隊を題材にした楽曲は「砲兵の歌」、「野砲兵の歌」があるがそれらとは別の曲である。
- 重砲兵
同じく砲兵隊の歌。作詞者不明。
- 鉄道兵の歌
鉄道連隊の歌。
- 歩兵第57連隊歌
1905年に青森で軍旗を拝受し、1908年に習志野に転営、1909年に佐倉に転営した歩兵第57連隊の部隊歌。作詞者不明。
同部隊の歴代連隊長には後の第33代内閣総理大臣林銑十郎や第十六軍司令官今村均がいる。
- 蘇州河の追撃戦
作詞は飯塚大佐。
- 歩七六会歌
歩兵第76連隊戦友会の歌。作詞者不明。
- ホーヘンリンデン夜襲
ナポレオン戦争のホーエンリンデンの戦いを題材にした歌。作詞は山陰樵夫。
- 自連替えの歌
鉄道院で歌われた替え歌。こちらも長らく「アムール川の流血や」の替え歌とされていた。
当時の鉄道院ではねじ式連結器を採用していたが、連結・解放作業が危険で手間がかかることから1919年から自動連結器への交換が計画され、綿密な準備作業、交換練習が行われた。
この交換練習の際に歌われた曲とされている。
「小楠公」だけでなく「鉄道唱歌」の曲でも歌われたとされている。
- 祝卒業歌
卒業を祝う歌。作詞は唐澤光徳。
- 秋田中学校校歌
旧制秋田中学校(現:県立秋田高等学校)の校歌。作詞者不明。
- 公論倶楽部野球応援歌
作詞は石森胡蝶。
- 一心会の歌
作詞は谷崎啓一。
- 厚狭町一〇周年の歌
山口県厚狭郡厚狭町(現:山陽小野田市)の発足10周年を祝う歌。作詞者不明。
- ボケない小唄
作詞は小川晴志。
- 中津川市運動会応援歌
岐阜県中津川市の運動会で歌われていたとされる曲。作詞者不明。
「もし日本が負けたなら」で始まる替え歌がベースになっている。
- 滋賀県立彦根東高校応援歌
滋賀県立彦根東高等学校の応援歌。作詞は治部藤吉。
ちなみに同校の校歌は古関裕而作曲である。
- 長岡高校応援歌
新潟県立長岡高等学校の応援歌。作詞者不明。
- 神戸地方協議会行進歌
兵庫県神戸市の神戸地方協議会の歌。作詞者不明。
- 玄和の血潮
日本武道空手玄和会の歌。
- 青バス現業会員の歌
東京乗合自動車、通称青バスの労働組合歌。作詞者不明。
青バスだが労働組合なので赤旗が翻る。
- 立てよ日本の女工
作詞は製糸労働組合本部。同じく製糸労働組合本部による「女工の唄」もある。
- 日本坑夫組合の歌
鉄鉱・銅鉱・炭鉱労働者による坑夫組合の歌。作詞者不明。
- 電気料金値下げの歌
作詞は梅田兵一。
- 普通選挙促進の歌。
作詞は与謝野晶子。
- ブントの本領
新左翼党派「共産主義者同盟」通称ブントの歌。作詞は中大ブントによるとされる。
次第に過激化する学生運動を象徴するような過激な歌詞が特徴。
- 臺灣議會設置請願歌
台湾の歌。作詞は謝星褸。
- 봉기가(蜂起歌)
韓国の独立運動家の曲。
ちなみに韓国でも旋律を引用したメーデー歌が作られている。
- မြန်မာပြည်ကာကွယ်မည်(ミャンマーは守られる)
ミャンマーの軍歌。
関連動画
小楠公
第11回紀念祭東寮寮歌
歩兵の本領
朝鮮語メーデー歌(聞け万国の...)