ヒンドゥー教の維持神ヴィシュヌの化身の一つ「ハヤグリーヴァ」が
仏教に取り込まれた尊格。
観音と結び付けられたのは仏典の漢訳の際のことであり、もう一つの
大乗仏教の伝統であるチベット仏教では、特に観音の一相とはみなされない。
またの名を「馬頭明王」といい、チベット仏教でも明王に対応する
役割を持つ「忿怒尊」の一柱である。このため柔和な面持ちが主である
観音菩薩の変化身のうちで唯一、激しい形相をしている。
専ら密教経典で言及される尊格であるが、酪農家、畜産業者や精肉業者など
動物と関連の深い職種の一般人の間でも広く祀られている。
六道のうち畜生道の生類を救うとされ、競馬場でも事故で死んだ馬を弔うため
馬頭観音像が建てられることが少なくない。