概要
アナンタの名は「無限(無終)なるもの」を意味し、ナーガの王シェーシャと同一視またはシェーシャの別名ともされる。
「バーガヴァタ・プラーナ」では、世界の創造する以前全ては原初の水に覆われており、ヴィシュヌとアナンタ(シェーシャ)だけがいた。ヴィシュヌはアナンタを寝台として瞑想の至福にひたり、4000ユガの間水上で眠った。
そして、ヴィシュヌの体から創造の力が世界蓮(ローカ・パドマ)という形をなしてへそより伸び出し、彼自身もその蓮の中に入り込む。蓮からは、ブラフマーが生み出され、世界の創造が始まる。
世界の終りが来ると、再びヴィシュヌとアナンタだけが残り、原初の水の上を漂うといわれる。
この創造神話は二大叙事詩「マハーバーラタ」、「ラーマーヤナ」にも引き継がれている。
アナンタはヴィシュヌとの結びつきが強く、「バーガヴァタ・プラーナ」内のクリシュナの物語の冒頭において悪王カンサが席巻する地上へ化身を送るために、自身の体から黒い毛を一本抜いてクリシュナに、アナンタから白い毛を一本抜いてバララーマにした。
地上での役目を終えたバララーマは、海辺での苦行の後、口からアナンタが流れ出でバララーマの肉体を捨て去り海の中へ帰って行った。
また、シヴァの優位性を示す逸話の一つには、シヴァの舞踏を目にしたアナンタがもう一度それを見たいがために、ヴィシュヌを見捨てて数年苦行に打ちこむ様が語られている。
アナンタは千の頭をもつというが、一般的に5頭もしくは7頭で表され、コブラのような頭被で傘や後光のようにヴィシュヌの頭上を覆う姿が描かれる。