概要
多くはオートバイや自動車用を指すが、それらに限らず工作機械の軸回転速度を変える機構や発電機の出力を変える機構などにも広く使われている。
動力の伝達に歯車を用いないため一般に大きなトルクの伝達が難しいとされ、古くはオートバイ(なかでもスクーター)などの小排気量エンジンと組み合わされ普及した。自動車用では受容トルクの問題から小型車向けの方式と見られてきたが、金属ベルトの改良により1990年代後半以降は排気量2000cc超の中型・大型車にも採用されるようになってきた。しかし、現在のところ採用例は日本車が大半で、日本国外では一部の車種でしか採用されていない。
21世紀初頭時点で自動車用として実用化されているCVTはベルト式CVTとチェーン式CVT、トロイダルCVTの3種類に大別できる。ベルト式CVTは比較的低トルクエンジンで軽量な車種に、トロイダルCVTは高トルクエンジンの重量車用に開発された経緯がある。
構造上、変速機そのもので逆回転を作り出すことが不可能なため、後進を行うときは遊星歯車を組み合わせて逆回転を作り出して行う。
長所
- 構造が簡易で構成部品点数が少なく済み、コストダウンと軽量化が可能
- 変速比の連続可変が可能であり、エンジン効率の良い回転域のみで運転できる。変速比の変化が大きい停止・発進を繰り返す運転に適している
- 有段変速機に存在する「変速ショック」がない
短所
- プーリーとベルトの摩擦力によって動力が伝達されるため、受容トルクが低い。そのため、大トルクを発生する大排気量車やターボ車、4WD車には採用が少ない。ただし2010年にフルモデルチェンジしたエルグランドで280馬力に達する3.5l車に採用されるなど、技術向上により大パワー車にも徐々に採用されつつある。
- ベルトとプーリーのスリップによる伝達ロス、油圧機構のロスなどにより、伝達効率が低い。即ち、ベルトとプーリーの摩擦熱はオイルによって冷却している。しかしオイルを用いれば滑る。その滑りを抑えるために高圧をかける。高圧をかけるためオイルポンプを駆動し動力が消費された上、摩擦熱が発生する。この熱を冷やすためにオイルを用いる。つまり、歯車のような噛み合いによらず摩擦力で駆動力伝達を図らねばならないという点がCVT最大の欠点であり矛盾点と言える。現状ではこれらの伝達ロスはエンジン回転数の制御による効率化によって相殺するというかたちをとっている。そのためあまり変速を行わない高速巡航時には伝達ロスは顕著になる。例として日産マイクラK13型の場合、欧州複合モード燃費において、MT:65.7MPG(17.35km/L), CVT:56.5MPG(14.9km/L)となる。日本のJC08モードと比較し、欧州複合モードは一定負荷の連続運転が多く、歯車機構の効率の差が燃費に影響しやすい。
- 歯車式有段変速機に比べ歴史が浅く、耐久性・信頼性が確立されていない。そのため過酷な使用も想定される商用車に関しては採用例が少ない。
- エンジン音、あるいはタコメーターの表示と車軸回転数(つまり車速)が比例しないため歯車式有段変速機と異なる走行感覚を運転者が不快に感じることがある。
- 特に小排気量車の場合、加速時やアクセルオフからの再加速の反応では歯車式有段変速機に劣る。また過度に反応速度を早めると、速度維持が難しくなるジレンマもある。
- モード燃費を改善するための、極端な最適化が行われている場合がある。例としてホンダ・フィットGE6型の場合、10.15モード走行時にMT:21.0km/L CVT:24.5km/L であり、CVTのほうが17%燃費がよい。しかしJC08モードでは、MT:19.2km/L CVT:20.6km/L となり、CVTの燃費改善率は7.3%に縮小している。