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陰陽師と天狗眼

おんみょうじとてんぐがん

「陰陽師と天狗眼」は、ことのは文庫(マイクロマガジン社)より刊行されている歌峰由子の現代ファンタジーブロマンス小説シリーズ。公式通称は、「おんてん」。
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作品概要編集

 広島県のほぼ中央にある巴市は、神々・怪異・もののけの息吹を濃く残す土地ゆえに、それらのもたらす市民とのトラブルを解決する部署<特殊自然災害係>が市役所に存在する。

 略して特自災害(一般市民にとっては、通称:もののけトラブル係)に新規採用された宮澤美郷と、引っ越し早々契約トラブルにより路頭に迷うはめになった美郷に住む場所を提供できると声をかけた狩野怜路――どちらも少々訳ありな同世代の青年同士、ひとつ屋根の下に暮らす日々を過ごしながら、しだいに絆を深めてゆく。


登場人物編集

宮澤 美郷(みやざわ みさと)編集

 今日のおれはそんなに運勢悪かったですかね!?

 黒髪長髪中性的な雰囲気の美青年。

 龍神の末と言われる家柄に生まれた青年陰陽師。陰陽道から密教系まで呪術全般のエキスパート。長い髪も一族の直系男子に受け継がれる秘術のために伸ばしているもので、特殊自然災害係の職務の上でも有用であるため公認されている。地方都市の公務員では異例であるかもしれないが、珍しがられることはあるものの咎められているようすはなさそうである。なお、秘術に使用する際は、緊急時でなければ必要な長さを1本ずつ切っているらしい。

 前述のとおり、出雲に本家を構える大きな一門の現当主の長子ではあるが、訳あって十代半ば頃からは母の姓を名乗るようになり、高校卒業後は実家と縁を切っている。実家を出る契機になった事件は、呪術業界では有名であるが、彼自身の実際のひととなりは事件後の所在と共に知られていない。その事件以来、美郷は甘いものが全般的に苦手になった。

 長子とはいえ妾腹にあたるので実家では少々複雑な立場にあり、家では周囲の大人たちを警戒し学校では極力目立たないように気を遣いながらの少年期を過ごしている(そのためか、それなりに整った顔立ちをしているものの周囲から言及されることがほぼない)が、自分の存在を理不尽に否定されるいわれはないと抗いきる気概の持ち主であり、譲れない部分での我は強い。

 余談であるが、彼が市役所から支給されて着ている赤いジャンパーは、舞台のモデルになった地方都市の市役所でも実際に職員の方々が着用しておられる。赤い。

 ……おれは、段ボールに入った子猫じゃないですよ。



狩野 怜路(かりの りょうじ)編集

 良い物件をひとつ紹介してやれるんだが、聞く気はあるかい?

 金髪ピアスグラサン、チンピラ風ファッションながら拝み屋としての腕は優秀な、フリーランスの山伏。

 銀色交じりの緑の瞳は、この世のものもこの世ならざるものも常に同じ濃度で見えてしまう「天狗眼」。室内でも変わらずかけているサングラスは、この世ならざるものを見えすぎる視界から遮る呪が施されていると同時に、特異な瞳の色が目立たないようにする意味もある。

 拝み屋としての依頼のない時は、市役所近くの鉄板焼き居酒屋でアルバイトをしている。

 また、住人のほとんどいなくなった集落にある大きな古い民家の持ち主であり、広すぎるうえに裏の山からもののけが転がり落ちてくる屋敷および敷地の管理の手伝いをさせたい名目もあって、格安で美郷を離れに下宿させる。

 子供の頃に遭った水難事故によりそれ以前の記憶がない。その際に、両親と姉を亡くしている。

 現在の彼の記憶は、天狗を名乗る男に拾われたところからであり、その男によって育てられた。

 拝み屋の契約の際はトラブル防止のために書類一式きっちり整えるスタイルでいるものの、私生活では大雑把な性格であり、自室はかなり散らかっている。

 ファッションは本人の趣味ではあるが、見目に対する相手の態度で人となりをはかる試金石としても役立ってもいるもよう。怖がられかねないことは自覚しているので、意図がなければ粗暴な態度をとることはしない。基本的に、陽気でおおらかな人物であり、面倒見の良いお人好し。

 路頭に迷ってんのは同じだろーが。




白太さん(しろたさん)編集

 ――みつけた。呼んでくれた。

 詳しく説明するとネタバレになるが――美郷の身体に棲んでいる白蛇。白い身体に赤い瞳のアオダイショウ。

 妖魔であり、ポケットに入る程度のサイズから胴回りが大人の太腿ほどある大蛇まで、大きさを自由に変えられる。

 主食は、もののけ。妖気や霊気を食べている。あまりの小物は美味しくないらしく、妖怪ビオトープと化している美郷の住む離れの庭のもののけには食指が動かないようす。

 「白太さん」とは美郷の命名。常に「白太さん」と敬称付きで呼ばれていたため、「さん」まで含めて自分の名前だと思っている。


広瀬 孝之(ひろせ たかゆき)編集

 お前、生まれつきそういう、アレなわけ?

 美郷の高校時代の友人であり、巴市役所勤務初日のオリエンテーションで再会。同期。

 高校卒業際の美郷の態度とそれに怯んだ自身にショックを受け、再会後しばらくはよそよそしい態度をとっていたが、思いがけず激昂する美郷を目撃したことをきっかけに気持ちに折り合いがつき、友達づきあいが再開した。

 思ったことが顔に出やすいタイプのようで、美郷との再会の時も動揺のあまり顔をそむけてしまっていたが、怜路と初めて対面した時にはあからさまに顔を強張らせていた。


出版編集

ことのは文庫(カバー絵:カズキヨネ)

陰陽師と天狗眼 ―巴市役所もののけトラブル係―

陰陽師と天狗眼 ―冬山の隠れ鬼―

陰陽師と天狗眼 ―潮騒の呼び声―

陰陽師と天狗眼 ―クシナダ異聞・怨鬼の章―

ことのは文庫の特設ページあり。

※台湾および英語圏にも翻訳版が、書籍・電子書籍とも刊行中。


コミカライズ

コミックブリーゼにてWeb連載中。

陰陽師と天狗眼 ―巴市役所もののけトラブル係― THE COMIC

(漫画:三戸・背景資料提供:道民の人)

 2023年2月14日 第1巻 発売

 2024年7月12日 第2巻 発売(コミカライズ完結)






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