概要
1967年にイギリスのジェリー・アンダーソン率いるセンチュリー21プロダクションが制作し、ITCが配給した、SF特撮人形劇番組である。
実は、「サンダーバード」がアメリカ売り込みに大失敗したのがきっかけで企画・制作されたものだったりする。
日本では、1968年1月から8月にかけてTBS他で放送された。また、週刊少年サンデー(小学館)にコミカライズが連載されていた。
作品について
エピソードは善悪の対決よりは謎解きや、ジェリーの妻シルヴィア・アンダーソンが「サンダーバード」から盛んに入れ始めたスパイ活劇の要素が強い。
当作独自の魅力として、主に了解の応答で使われる「S.I.G.(エス・アイ・ジー)」が挙げられる。これは"Spectrum Is Green"の略(スペクトラム状況良し、といった意味)だが、逆に"Spectrum Is Red"(- 状況悪し)を略した「S.I.R.(エス・アイ・アール)」もあり、緊急事態を知らせるときなどに使用された。以前のアンダーソン作品にも略号を用いた応答が登場していたが、日本語版製作の過程で明確に訳されなかったため、本作での使用が最も印象的である。
また、この応答形式は、アンダーソン作品の影響を受ける事の多い円谷作品においてもしばしば採り入れられ、「戦え!マイティジャック」(1967年)では「S.M.J!」、「ウルトラマンメビウス」では、組織名「GUYS」にちなみ「G.I.G!」という形でそれぞれ使われていた。
他に目立つものとして、場面転換の演出が挙げられる。「ダ・ドン・ドン・ドドドダン!」のティンパニによるブリッジ曲に合わせて、前後の場面の映像(CM前後のアイキャッチではスペクトラムのマークと)がフラッシュバックするもので、曲のビートを生かして当作特有の緊張感を強調していた。主題歌も英語版と日本版双方でこのティンパニのフレーズをイントロに使っている。こうした演出は「ウルトラセブン」第33話「侵略する死者たち」と第34話「蒸発都市」や、「トランスフォーマー」にその影響が見られる。
ストーリー
2068年、地球防衛機構スペクトラムの火星探検隊が火星の異星人ミステロンの基地を発見、監視カメラを攻撃兵器と誤認し基地を破壊。ミステロンは破壊された物質を復元し不滅にする力=ミステロナイズを持っており、火星基地を瞬時に復元した後、地球人を好戦的とみなし絶滅を宣言、火星探検隊の隊長ブラック大尉をミステロナイズし地球に送り込む。地球連邦大統領の護衛に付いたキャプテン・スカーレットもミステロンの策略により死亡。ミステロナイズされスパイにされたがスペクトラムとの戦闘でロンドン展望塔から転落、そのショックで人間の理性を取り戻す。不死身の力とミステロンを察知する力を得たスカーレットはスペクトラムの切り札としてミステロンに戦いを挑む。
キャラクター
主人公側防衛組織「スペクトラム」では、幹部構成員は色にちなんだコードネームで呼ばれ、コードネームに準じた配色の制服(ベスト・制帽・ブーツ)を着用する。乗用パトロール車も色分けにする予定だったが実現しなかった。これは、前作サンダーバードで国際救助隊制服の襷にパーソナルカラーを持たせた事の更なる発展であり、人形の顔が小さくなり、番組の視聴者である子供に 人物の見分けがつきやすいようにという配慮からであると思われる。
地球防衛機構「スペクトラム」
キャプテン・スカーレット
ブラウン大尉とともに世界大統領の警護に向かう途中にミステロンに殺害され、複製されミステロンの手下になって蘇った。ブラウン大尉が大統領の暗殺に失敗したため、今度はスカーレットが大統領を拉致し、ロンドン展望塔の屋上に逃げるが、ブルー大尉に撃たれて転落し、そのショックによりミステロンの支配が消え、何度死んでも復活する不死身の体になった。以後スペクトラムの切り札的存在となる。
原語では同じく「Captain」である他幹部は大尉と訳されるのに対し、タイトルとの関連を強調するため日本語版でも「キャプテン・スカーレット」で通される。
不死身の体であるがゆえに、無謀な行動にでて死ぬことがよくある。また、ミステロンのスパイなどが近くにいると、頭痛を起こすが、いつの間にか設定自体が消えてしまった。
厳密にはスカーレット本人は第1話で死亡しており、劇中で活躍する彼はミステロンによる複製、つまり本人の人格を有した偽物である。その為、不死身の体の唯一の弱点である電流を苦手としており、人体がX線を通さないという特徴もある。
明らかに他のキャラクターより出番が少ないエピソードも多くどこぞの存在感のない主人公を連想させる。
スペクトラム創立記念パーティの時は司会を務めた。乾杯の時にグラスを割ったためにミステロンのシャンパンを飲まずに済んだ。
ブルー大尉
スカーレットの親友で、ほとんどの任務で彼と行動を共にする。操縦技術、特に追跡戦闘車の扱いに長けている。顔立ちが整っておりハンサム。エンゼル達との仲も親しいようでアンバールームでエンゼル達と会話をしている場面も見られる。青色というよりは水色に近い恰好をしている。本名はアダム・スウェンソン。
スペクトラム記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでしまい、任務遂行中にラジオを流し、ラジオが壊れたからという理由で輸送機から脱出するなどのはっちゃけぶりを見せた。
グリーン少尉
プエルトリコ系黒人。主に基地で通信を務めているが、スカーレットやブルー大尉の補佐にあたる事も稀にある。非情な命令を下すホワイト大佐に進言するが、彼の迫力に怯み、結局丸め込まれてしまうという場面も多々ある。
スペクトラム記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでしまい、突然仕事を放り投げ怠けてしまった。
ホワイト大佐
スペクトラムの最高司令官。普段は円卓の中央に座り、スペクトラム隊員達に指示を与える。任務に忠実であるがゆえに非情な命令を下すこともあるが、これは地球の全人類を守るためのやむを得ない判断であり、決して彼が冷徹というわけではない。
非公式なスペクトラム記念パーティを開いた隊員達を一喝する。その後、ブルー大尉とオーカー大尉の暴走を食い止めるため、自ら超音速連絡機を操縦し、スカーレットとともに現場に急行した。事件解決の三日後に公式のスペクトラム記念パーティを開いた。
マゼンタ大尉
世界的犯罪組織から転職。マゼンダ色とスカーレット色が似ている上、初登場は後姿だったので、キャプテンスカーレットと間違えた人も多いのでは?
スペクトラム記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでしまい、休憩室で仮眠をとっていた場面も見られた。
グレイ大尉
世界政府警察から転職。最低限のことしか喋らないクールな人物。
スペクトラム記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでいたことは確かなようだが、どうなったかは、劇中では描写されてなかった。
オーカー大尉
「海底大戦争 スティングレイ」の海底安全パトロール隊であるWASPから転職。同じWASPの出身ではサンダーバードに登場するトレーシー一家の四男、「ゴードン・トレーシー」がいる。スペクトラムの記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでしまい、大西洋の世界海軍基地の防衛コントロールタワーに間違えて爆弾を投下した後、眠りはじめてしまう。
Dr.フォーン
ドクター。制服は皆と同じだが大尉等の階級は無い。無謀な行動に出ては死んでしまうキャプテンスカーレットに、蘇生手術を行う縁の下の力持ち。スペクトラムの記念パーティの時はミステロンのシャンパンを飲んでしまい、医療室で医療服をタオルケット代わりに手術台の上で爆睡していた。
ブラウン大尉
第1話のみ登場。世界大統領の護衛という大仕事を任され喜ぶのも束の間、ミステロンの策略により、キャプテンスカーレットと共に自動車事故に会い死亡する。その後、ミステロナイズされ、ミステロンのスパイとなり、人間爆弾にされ爆死する。スペクトラム隊員の中ではブラック大尉を除き唯一死亡したメンバーである。「ブラウン大尉!お許しください!」
ミステロン
ミステロン
火星基地を地球人に破壊され、復讐を続ける謎の宇宙人。姿を現さず、2つのリング状の光だけを見せながら毎回冒頭で犯行予告を告げる。その際「○○ヲ暗殺スル」と片言で宣言しているが、殺害を宣言している時点で暗殺ではなくなっている。また、犯行予告をする理由は劇中で言及されていないが、何の予告も無く火星基地を攻撃した地球人に対する皮肉ではないかと思われる。
人間あるいは機械などを一旦破壊・複製して自分達の作戦におけるエージェントや武器として利用する(これらの所業の際もリング状の光が現れる)。またブラック大尉を乗っている乗用車ごと瞬間移動させる事も出来る。
実は、月にも地球を侵略するための前衛基地を作っていたが、スペクトラムに妨害され建設途中の基地は崩壊した。その後スペクトラムに和解を持ち掛けられるが、地球への復讐を続行することを宣言し、クラウドベースに攻撃を仕掛けた。
ミステロナイズにより複製されたミステロンのスパイは、電流を苦手としている他、人体がX線を通さないという特徴があるため。スペクトラムにミステロン探知機の完成を許してしまう。また、ミステロナイズは厳密には、破壊された物質を複製する光線のため、仮死状態の人間の複製を作ったが、その後、本人が息を吹き返したため、本人を自身の造った複製と間違えて指示を与えたこともあった。
ニコニコ動画では、彼が犯行予告する際、「OO」といったコメントが流れている。これは前述の2つのリング状の光を表したものであると思われる。
ブラック大尉
ミステロンの手先。元はスペクトラムのNo.2だったが、火星のミステロン基地を誤認攻撃した事で、地球人対ミステロンの戦闘のきっかけを作ってしまう。即時に復元したミステロンの反撃により死亡してしまい、以降目撃される彼は、ミステロナイズにより造られた複製である。劇中、彼が遠方から見ていると相手が急に体調を崩し、意識を失う描写があるが、どのような力によるものかは不明である。いつも顔色が悪い。
ニコニコ動画では、なぜか彼だけ「黒ちゃん」というあだ名をつけられアイドル扱いされている。
主要なメカ
クラウドベース(スペクトラム基地)
高度4万フィート(12,192メートル)に浮遊する空中基地。広い甲板面は2分割され、一段高い方がエンゼルインターセプター用、低い方がその他の航空機用に使い分けられている。4隅に浮上・推進用のエンジンユニットがあり、その位置を自在に変更できる。劇中に描写された区画としては、司令室、医療室(単なる医務室レベルではなく、脳外科の手術も可能な施設)、会議室、レーダー室、休憩室、パーティールーム、アンバールーム(エンゼルの待機場所)、動力室などがある。なおアンダーソン作品の影響を受けたのか、「ウルトラマンガイア」の天空基地「エリアルベース」は、デザインがクラウドベースに大変よく似ている。
全長210m、全幅186.2m、大型ホバーエンジン4機、本体前後に推進用エンジン多数装備。太陽電池発電、エレクトロン・レイ追尾アンチ・エアクラフト・ミサイル砲、空対空ミサイル・超音速パラライザー・キャノン砲装備。乗員600名。
エンジェルインターセプター
1人乗り迎撃戦闘機。常時クラウドベースに3機がスクランブル可能な状態で待機。白い機体にデルタ翼(外側が下向きに折れている)、機首部に小翼を持つ。機体下部にAの文字が書いてある。翼端部と機首のフロート型着陸ギアで着陸する。クラウドベースからの発進時はカタパルトにより、着艦は斜めにせり上がるプラットフォームに磁力で吸着することで行う。1番目に発進するスクランブル要員は、搭乗した状態で待機、続いて発進する2番機、3番機のコックピット下には気密チューブが繋がれ、直下のアンバールームのエレベータから座席ごと搭乗し、発進する。
全長18.2m、翼長10.6m、最高速度4,827km/h、メインキャノン1、ロケット弾、装甲貫通弾、空対空・空対地ミサイル装備。
追跡戦闘車(S.P.V. Spectrum Pursuit Vehicle)
非常に強力な装甲と、ロケット砲などの重装備を持っている。通常は2人乗りで、衝突時の安全性を考慮し、座席は後ろ向きになっており、運転者はモニター映像を見ながら運転する(別にある2人分の補助席は前向きである)。また、射出座席によるパラシュート脱出装置も装備している。世界各地に配置され、航空機などで最寄りの保管場所へ急行してから行動をする。保管場所はガソリンスタンド前の路上に駐車されたトラックの中、自動車整備工場、商人の倉庫などがあり、スペクトラムメンバーは利用に際し、IDカードの提示を求められる。当作の代名詞とも言うべき人気メカ。しかし、各回のほとんどで最終的に大破している。
全長7.62m、最高時速321.8km/h、前後に8気筒ロータリーエンジン駆動。エレクトロン・レイ・ディスチャージ・キャノン、レーザー・キャノン装備。
スペクトラム・パトロールカー(S.S.C. Spectrum Saloon Car )
幹部隊員の常用車両。赤色で尖ったアンテナが印象的の5人乗り。第1話で早々事故にあい爆発する。
全長5.48m、最高時241.3km/h、ガスタービン。超合金フリートニウム製防弾施工。ファンエクゾースト駆動。前部ボンネットにレーザー・キャノン、ミサイル・サブ・マシンガン、赤外線ビームアイ、長距離監視カメラ装備。
超音速連絡機(S.P.J. Spectrum Passenger Jet)
隊員・VIP輸送用旅客機。リヒート・ターボ・ジェットエンジン2機搭載、パイロット2名、乗客7名。
サンダーバード2号のように逆進になっている主翼は、90度起き上がりエアブレーキとなり、キャビン全体が脱出可(いずれも本編に登場しない機能)。
全長23.8m、最高速度1,810km/h、航続距離19,308km。設定では非武装だが劇中でミサイルを発射した。
関連イラスト
関連動画
メインテーマ
後期エンディング曲で使用されている。その際、背景映像では、死亡する寸前のキャプテンス・カーレットが様々なパターンで描かれている。
因みに、テーマ曲はアンダーソンがカーステレオでたまたま聴いた主人公チームと同名のバンド、スペクトラムが演奏した
日本語版主題歌
再放送の際につけられた日本語版主題歌。作曲の際、ジェリー・アンダーソンに無許可で作り、しかも、背景映像も日本語版スタッフが本編の映像を勝手に編集して作成した。
アンダーソンは日本語版主題歌を初めて聴いた時、「せっかく英語オリジナル版ではかっこいいテーマ曲(上記動画参照)を使っていたのに、子どもに歌わせるなんて、これでは台無しだ」と憤慨した。
日本語版イメージソング
グレイ作曲のオリジナル・テーマ曲に独自の日本語詞をつけたもの。劇中では使用されることは一度もなかった。
余談だが、この曲を歌ったザ・ワンダースは、ジ・エコーズ名義でウルトラセブンの主題歌も歌っていた。さらにそのメンバーに尾崎紀世彦がいた。