概要
中世の騎士道物語で有名な「アーサー王」のフルネームである……と、されているが、これは大きな誤りである。
ペンドラゴンは苗字ではなく「Pen DORAGON(ドラゴンを統べる者、ドラゴンの頭)」という意味の称号であり、アーサー王の父であるユーサー・ペンドラゴンが持っていた称号。そしてこの称号は本来、子に継承されるようなものではない。当時の人名では個人名を区別するためにWilliam the short(ちびのウイリアム)Mary of the wood(森のメアリー)のようなニックネームを添えていた(英国放送協会のfamily name(surname)に関する特集ページ参照)。ペンドラゴンも同様なニックネームだと考えれば、子にそのまま継承されるようなものではない。現代の感覚で言うと、ミスター・サタンの娘をビーデル・サタンと呼ぶようなものである。
この誤りは、「ペンドラゴンは苗字なのだろう」→「じゃあ息子もペンドラゴンだ!」と言う事で広まったものであろう。当時のブリテンには苗字は存在せず、アーサー王は「アーサー」の名前だけでフルネームなのである。例えばイングランドでファミリーネームが用いられるようになったのは、ノルマン征服以降のことであり、それ以前の人名は個人名やニックネームで呼ばれていた。またウェールズでイングランド流のファミリーネームが用いられるようになったのは1400年以降の事であり、それ以前はゲール語系の個人名が用いられていた(それぞれ前掲引用元参照)。