概要
アーサー王は伝説上の人物。「剣王アーサー」とも呼ばれます(Arthur, King of the Sword)。
このタグは、「アーサー王物語」などをモチーフとした絵の総称として付けられる場合と、
その中でもアーサー王当人を指す場合がある。
アーサー王伝説のあらすじ
アーサー王伝説は異本が多いが、ここではそれらの集大成とされるサー・トマス・マロリーの『アーサー王の死』を取り上げる。
アーサー王の誕生
ブリタニア諸王の一人ユーサー・ペンドラゴンは、敵国コーンウォールの王妃イグレインに恋してしまい、魔術師マーリンに相談する。マーリンは子が生まれたらあずかることを条件にユーサーをコーンウォール王ゴルロイスに変身させ、ユーサーはイグレインと結ばれる。本物のゴルロイスは戦死してしまった。やがてユーサー王とイグレインには子が生まれる。後にアーサー王と呼ばれるこの子供は、約束通り魔術師マーリンに預けられた。
即位
ユーサー王がなくなると後継者の座を巡って争いが始まる。そしてカンタベリー大寺院に剣の刺さった不思議な石が出現した。剣にはこうあった。「この剣を抜いた者は全ブリテンの正統な王である。」ブリテン中の王、領主、騎士たちがこれを抜こうとしたがびくともしなかった。アーサーはエクター卿の子として育てられ、兄ケイの騎士見習いを務めていた。馬上槍試合に来ていた兄が剣を忘れてしまったため、アーサーは何気なくこの剣を抜いて兄に渡した。この事実が知れ渡るとエクター卿はアーサーに生まれの秘密を明かした。アーサーは王として即位し、キャメロットを都とする。
エクスカリバー
しかし、剣を抜いただけでアーサー王の臣下になれ、と言われてブリテン全土の諸侯が従うはずもない。たちまち戦乱が起こり、アーサーの剣は戦いの中で折れてしまった。魔術師マーリンはとある湖にアーサーを誘う。湖の中ほどには一人の乙女の腕が突き出ていており、その手には一本の剣が握られていた。この剣こそが聖剣エクスカリバーである(なお、エクスカリバーと岩から抜いた剣はしばしば同一視され、そもそもマロリー自身が混同していたりする)。エクスカリバーの最も強力な力は、実はその鞘にあった。この鞘を身に着けた者はどんな攻撃でも傷を受けないというのだ。アーサーはエクスカリバーを手にブリテンを統一し、フランスに渡ってブルターニュの王も兼ねる。マロリーはついつい調子に乗ってか、アーサーはなんとイタリアも制圧してローマ皇帝に即位したとまで書いてしまっている。
アーサー王の結婚
遠征から帰還したアーサー王は、オークニーの王妃モルゴースと不倫をしてしまう。しかもモルゴースはゴルロイスとイグレインの娘、つまりアーサーにとっては実の姉でもあったのだ。この不義から運命の子モードレッドが生まれた。またアーサーは、ロデグランス王の娘、美しいグィネヴィアに恋をした。魔術師マーリンの猛反対を押し切ってアーサーはグィネヴィアを王妃に迎えた。その嫁入り道具に巨大な円卓があった。アーサーは諸侯の騎士たちを臣下に迎えて円卓に席を与え、こうして高名な円卓の騎士が結成された。
ランスロット
円卓の騎士にはフランス出身のランスロットという男がいた。ランスロットはグィネヴィア王妃と相思相愛になってしまった。しかしランスロットは冒険中にエレインというカーボネックの王女を助け、想いを寄せられてしまう。エレイン王女の懇願にアーサー王が協力し、なんとエレインは魔法でグィネヴィアに変身してランスロットと結ばれ、ガラハドという息子を儲けた。この事件を知ったグィネヴィアは激怒し、ランスロットは一度は弁明に成功するも再度グィネヴィアに変身したエレインと情を交わしてしまい、グィネヴィアに絶交を言い渡される。ランスロットは発狂し、2年に渡って荒野をさまようことになった。ランスロットを救って正気に戻したのはエレインであった。二人は隠棲して息子のガラハドを育て、ランスロットは成長したガラハドを連れて円卓に戻ることになった。
聖杯の探求
ガラハドが騎士に任ぜられて円卓に加わった時、円卓に聖杯が出現した。聖杯からは見たこともない料理や飲み物が騎士たちに振る舞われ、そしてそのまま聖杯は消えてしまった。アーサー王は円卓の騎士たちに消えた聖杯を探し出す使命を授けた。聖杯は心に汚れなき騎士にしか見出せないのである。ランスロットは不倫の罪故に聖杯を手にすること叶わず、ガラハド・パーシヴァル・ボースがこの使命を達成した。中でもガラハドは神に選ばれ、やがて昇天してしまう。なおマロリーはキリスト教的に聖杯を描いているが、本来はケルト神話でいう黄泉の国アンウンの大釜であるとも考えられている。
円卓の崩壊
聖杯の探求から戻ったランスロットは、王妃グィネヴィアとの不倫を再開してしまった。アーサーの王子で円卓の騎士に加わっていたモードレッドは、ランスロットを嫌っており、不倫の現場を取り押さえた。ランスロットは逃れるが、グィネヴィアは法の定めによって火炙りに処されることになった。これを聞いたランスロットはグィネヴィアを救出するが、その際に騎士ガウェインの二人の弟を殺してしまう。彼らは王妃の処刑には反対であり、抗議の意を込めて武装をしていなかったのだ。しかもその一人ガレスはランスロットから騎士叙勲を受けた騎士であり、彼を誰よりも慕っていたのである。この非道には彼らの兄である騎士ガウェインも怒り、ガウェインはランスロットへの復讐を誓う。アーサー王はガウェインと共に大軍を連れてフランスに渡り、ランスロットを攻めた。ランスロットの元にも騎士たちが集まってきたが、ランスロット自身にはアーサーと戦う気はなかった。ガウェインとランスロットは長時間にわたる戦闘を繰り広げ、ランスロットはアーサー王にグィネヴィアを返還することにした。
カムランの戦い
しかしその頃、本国の留守を預かっていたモードレッドが反乱を起こした。アーサー王は急遽帰国してカムランという地でモードレッドと戦う。騎士ガウェインはこの戦いで倒れ、ランスロットへの謝罪と王への援軍を請う手紙を書く。手紙を受け取ったランスロットは戦場に向かうものの、ついに間に合わなかった。両軍の大部分が死に絶えた戦場でアーサーはモードレッドを倒したが、彼の方もまた致命傷を負ってしまう。エクスカリバーの鞘は、すでに彼の手元からは失われていたのである。生き残っていた騎士ベディヴィエールは、アーサーの命でエクスカリバーを湖に投げ込み、湖の貴婦人に返還する。アーサーは姉のモーガン・ル・フェイらに付き添われ「アヴァロンの地で傷を癒してくる」と告げ、湖の彼方へと去っていった。
アーサー王の墓碑にはこう書かれているという「ここに、過去の王にして未来の王アーサーは眠る。」アーサーはアヴァロンの地で憩うているが、ブリタニアの危機には復活し、これを救うとも伝わっている。
アーサー王伝説の背景
アーサー王伝説はウェールズ・コーンウォール・ブルターニュ等のケルト神話の系譜であったり、同時に吟遊詩人たちの伝えた騎士道物語にも多く伝わっている。実のところ、それぞれの伝説によって内容は多かれ少なかれ異なる。まして円卓の騎士に数えられる騎士たちは、各々が全く別の伝説の主人公や登場人物であることも珍しくなく、後から円卓の騎士に数えられたケースが多い。各国の貴族や騎士たちも、こぞって祖先をアーサー王伝説に結び付け、それによってさらに伝説は書き換えられていった。アーサー王が実在したのかどうかも、全ての記録が伝説の中に埋もれてしまったがために不明である。長い年月をかけて語り継がれ、あるいは加筆あるいは忘れ去られて蓄積された物語の一群、これが壮大なるアーサー王伝説の実態である。
ただし少なくとも言えることは、アーサー王の時代は今の英国イングランドの王権より前、ノルマン人の征服やアングロサクソン人の支配より前であるということ。つまり、アーサー王は、ケルト人と呼ばれた人々のうち、コーンウォールに暮らし、アングロサクソン人の侵攻と戦っていた人々の王であろうということだ。
アーサー王の武器と宝物
アーサー王伝説の異本を見ていくとエクスカリバー以外にもアーサーはかなりの武器や宝物を持っている。
しかしエクスカリバーやカリバーンが有名すぎたり、登場作品が異本という事もあって、これらの武器が創作作品でプッシュされる事が少ないのである。皮肉な事にこれがアーサー王の創作でのパワーインフレを防いでいる要因だったりする。
実はこれだけの宝物を有していながら、弓などの飛び道具の類は確認されていなかったりする。
<剣>
- セクエンス
- 死闘において使われる剣。サクソン岩の戦いではこれを持って戦場を駆け抜けた。
- クラレント
- いかなる銀よりも眩い輝きを放つ祭礼用の剣。アーサー王が父から受け継いだとされるが、モードレッドに奪われて以降は彼の持ち物となり、アーサー王に致命傷を負わせた。
- マルミアドワーズ
- モルデュール
- カルンウェナン
- 使用者を影に潜ませる能力を持つ短剣。
- シャスティフォル
- 鸚鵡の騎士と呼ばれていた頃の武者修行時代のアーサーが持っていた剣。
- カレドヴールフ
- ケルト神話のカラドボルグが原型で、エクスカリバーの原型でもある。
<槍>
- ロンゴミニアド
- 時としてロンギヌスの槍とも同一視される槍。カムランの戦いなどの重要な局面で使用された。幅広で長い穂先を持ち、500人余りの兵士を薙ぎ払うとされる。
- 黒檀の槍
- 幾度も火に鍛えられた穂先は数多くの兵を貫いたとされる槍。
<盾>
- プリドゥエン
- マリアの肖像が描かれた盾で、船にもなる。
- 金剛石の盾
- 金剛石で作られた盾。覆いを取り外すと偉大な力を発揮するという。
- ウィネブル・グルスヴッヘル
- 夕べの顔を意味する。詳細な効果は不明。
<鎧>
- ウィガール
- 伝説の鍛冶職人に鍛えれた鎖帷子。
- 宝石の鎧
- 太陽神にも匹敵する輝きを放つ宝石がはめ込まれた鎧。
<兜>
- グースホワイト
- ウーサー王から引き継いだ兜。
<馬>
- ドゥ・スタリオン
- ラムレイ
- スピュメイダー
- オーバギュ
- パッスランド
- アーサー王が駆る名馬達。
<その他>
- エハングウェン
- 名匠によって作られた美しい大広間。
- 指輪
- 本来は忘れてしまう夢での出来事を記憶できる指輪。
- 鸚鵡
- アーサー王に賢明な助言をする鳥。
- 酒器(名匠不明)
- 毒を盛られたかどうかを判別できる器。
- カヴァス
- アーサー王の飼っていた犬。実は伝説初期では馬だったのではないかという説も。
- ゴルラゴン
- 元は人間であり、魔術を掛けられてアーサー王の飼う狼に変えられた。
<ブリテン13の宝>
- グウェン
- 四隅に林檎の刺繍がしてある白いマント。身につけたものの姿を透明に変える能力がある。
- ブラン・ガレドの角笛
- 飛竜を召喚が出来る角笛だが、代償に魔力や生贄を要求される。
- グゥイズノ・ガランヒルの篭
- 物を風化させずに永久に保管する為の籠。
- グラズノ・アイジンの大釜
- 死者蘇生や、不老に性転換などの奇跡を起こす大釜。
- グウェンゾライの的盤
- ジェットスケートボードのような宝具。
- モルガンの戦車
- モルガンが作り出した戦車。
- ライヴロデズの剣
- 所有者のエネルギーを刃に変える剣。
- リゲニズの皿と壺
- 壺に入れた食べ物は腐ることがなく、皿に盛れば温度調節が可能である。
- パダルン・レドコウトの外套
- 魔力が込められた外套
- ティドワル・ティドグリドの砥石
- 武器全般を修復したり、その武器に秘められた特殊能力の回復ができる。
- クリドゥノ・アイディンの絞首縄
- これで縛った相手を二足歩行できなくし、命令に逆らえなくする。
- エリネドの指輪
- 身につけた物に身体強化や魔力を付与する。
- カリバーン
- リンク先参照。
類似する王の伝説
大越国時代のベトナム初代皇帝。
14世紀に活躍した人物で、史実によれば明からベトナムを守ったとされる。
伝説においてはこれらのエピソードに「タン・キエム」という剣を湖の精から与えられて国を起こしたと脚色されている。湖に剣を返したという所までアーサー王伝説にそっくりである。
チェコの伝説に伝わる王。
ドラゴンを退治して、獅子を仲間にしたエピソードや、アフリカへ遠征した際に抜刀すると自動的に相手を倒す黄金の剣を手に入れたエピソードが存在する。
どちらかというと前者はユーウェイン卿、後者はケルト神話のフラガラッハや北欧神話の勝利の剣のエピソードに似る。
また、チェコの国民の間ではアーサー王復活の予言のようにチェコに危機が迫るとブルンツヴィークが蘇ると信じられている。同様にデンマークでもオジェ・ル・ダノワが国の危機に復活するのだという。
余談
ライオン=百獣の王やイギリスのシンボルというイメージからよく勘違いされるが、アーサー王の象徴とされる動物はライオンではなく、ライオンがシンボルである騎士はユーウェインである。
むしろアーサー王と深い結び付きのある動物はウェールズの象徴である赤い竜、名前の由来とされる熊、魔法で変えられた姿だと伝承されるワタリガラスである。
関連タグ
登場人物
アーサー・ペンドラゴン - 非常に有名な誤記。
騎士以外の人物
湖の貴婦人/湖の乙女 (ヴィヴィアン/ビビアン、ニミュエ/ニムエ等の名前が充てられる)
その他
タグによってはアーサー王伝説と無関係なイラストを多く含む。
題材、モチーフにした関連作品またはキャラクター
トリスタンとイゾルデ パルジファル(ワーグナー) オーサー卿
アーサーガンダムMk-Ⅲ アーサー(かいけつゾロリ) セイバー(Fate/staynight)/アルトリア・ペンドラゴン 旧セイバー
アーサー王伝説または世界観を題材、モチーフとした作品
燃えろアーサー キング・アーサー グレイルクエスト ホーリー・グレイル 魔術師MERLIN/魔術師マーリン
王様の剣 バビロン5 ライジングインパクト アーサー帝戦記 円卓生徒会 【一夜人世の与太話】 ソニックと暗黒の騎士 SDガンダム外伝 アヴァロンの騎士
拡散性ミリオンアーサー/乖離性ミリオンアーサー/叛逆性ミリオンアーサー
魔界村(主人公アーサーと王妃ギネヴィナ。海外からの強い批判を受けてギネヴィナからプリンプリンに改名)
いきものがたり(MMORPGのNPCまたはイベントのGMキャラクター)
テイルズオブゼスティリア(直接的な関係はないが、様々な設定の元ネタと思われるため記載)
メルヘン・メドヘン アーサー・ペンドラゴン(メルヘン・メドヘン)(直接的な関係はないがアーサー王伝説の原書を使用する)