名称は
英語ではイウェイン、ユーウェイン(Ywain,Uwain)/仏語ではイヴァン(Yvain)/独語ではイーヴェイン(Iwein)等。
モデルとなっているのはウェールズの伝説に登場するレゲド(Rheged,現在のイングランド・カンブリア州)の王ウリエンの息子オウァイン(Owain mab Urien)とされる。
概要
円卓の騎士の一人。
家族構成は作品により異なるが、基本的にモデルとなったオウァインと同じくウリエン王を父とする。
またアーサー王の姉であるモルガン・ル・フェを母とすることが多い。そのためユーウェインはアーサー王の甥、ガウェインの従兄弟とされる(ガウェインとの血縁設定は彼の母をモルガン・ル・フェする記述のない書籍にも存在する)。
ウリエン王が自身の執事の妻との間に設けたとされる異母兄弟、私生児のユーウェインも存在する。
現在アーサー王伝説でベーシックなものとされるマロリーの『アーサー王の死』において母モルガン・ル・フェによるウリエン王の暗殺を止めるシーンなどで有名であり1人で30人の倒す実力者として書かれる一方、ランスロット、トリスタンや彼らに並ぶより実力者には及ばない存在とされ、その扱いは大きくなく、終盤にはほとんど登場しなくなる。
しかし古くはタリエシンの歌やウェールズ三題歌、ブリタニア列王史にも登場しランスロットやカドールの並ぶ優れた騎士として選ばれる場合もあった。
特にフランスで書かれたクレチアン・ド・トロワの『イヴァン、または獅子の騎士』は彼を主人公とする物語である。
決闘で殺してしまった騎士の妻であるロディーヌに恋をしてしまった彼は、彼女の侍女リュネットの説得で結婚する事が出来たが、ガウェイン卿と共に冒険に出発する事になった。ロディーヌは条件として『必ず1年以内に帰ってくる』事を約束させたが、彼は約束を違えてしまい、ロディーヌからは拒絶されてしまう。彼はショックから放浪の身となる。
そんな中、彼はドラゴンと戦い苦戦しているライオンに遭遇し、彼に加勢した所、大変懐かれて以降は行動を共にするようになったとされる。この為、彼は『獅子の騎士』という称号で呼ばれるようになり、ロディーヌとも縒りを戻す事が出来たのだった。
近年の創作物でもしばしばライオンを連れている。
また、『マビノビオン』などではライオンの他にカラスの軍勢を引き連れており、父方の祖父から譲り受けたとされる。このカラスは人間と戦えるぐらいには強く、このカラスの軍勢は『ロナブイの夢』という物語においてアーサー王の軍勢と戦い、アーサー王の軍勢をこれから永遠にブリテン島の防衛が困難にするほどに殺戮した。
また同じく「ケンヴェエルヒンの三百本の剣」と呼ばれる武器を受け継いだともされる。ケンヴェエルヒンとは祖父キンヴァルフの一族といった意味の解釈と見られているが詳細は不明である。
ユーウェインとは直接の関係があるとは言い難いが、今日ではカラスとライオンはイギリスのシンボルとされる動物となっており、特にカラスはユーウェインの主君であるアーサー王の化身とされる。
なお、チェコの伝説の王ブルンツヴィークは旅の途中でドラゴンに苦しめられているライオンを助けて、お供としたというユーウェイン卿の伝説に酷似した逸話を持つ。何気に伝説の剣を持ってチェコの危機に駆けつけるというアーサー王じみた伝説まで持っているが、関連性は不明である。
助けたライオンの仲間にして戦う戦士というモチーフはヨーロッパに古くから存在し、2世紀ローマのアンドロクレースの伝承や、『獅子の騎士』成立直前の12世紀にも十字軍にライオンと共に参加した騎士ゴルフィエの物語が存在する。ユーウェインの伝説もそういったモチーフの流れを汲んでいるとされる。
創作作品では
『アーサー王の死』での扱いもあり映画等で目立つことは少ないが、獅子を連れているという解りやすいモチーフ/代表的な悪役(転じてヒロイン的に扱われる場合もある)モルガンの息子である点などからピックアップされることがしばしばある。
本人は未登場で円卓の騎士のメンバーには数えられていないようだが、水着獅子王の設定からどうやら存在はする模様。
乖離性ミリオンアーサーにて☆2の騎士として登場。
原典とは異なり、女体化されている。
- 刻のイシュタリア
「聖騎士ユーウェイン」として登場しており、ライオンを引き連れている点は原典と同じ。
ただし、こちらでは女性となっている。
- 英雄*戦姫
女体化されて登場。原典では彼女の武器だった祖父の剣はケンヴェルヒンの名でベイリンが使用している。(英雄*戦姫では本来は別の騎士の武器を高名な武具を持たない騎士が使用するのはよくある事である。)
関連人物
アーサー王:叔父・主君
ガウェインとその兄弟姉妹:従兄弟。ガウェインとは親友とされる
ウリエン:父親。史実からの長い付き合い
モルガン・ル・フェ:母親。魔女。アヴァロンの仙女。ウェールズの伝承ではユーウェイン(オウァイン)の母は異界アンヌヴンの王女モドロンとされる。
私生児のユーウェイン:異母兄弟。聖杯探求の際ガウェインと戦い死亡することで有名。この他にもユーウェインという名前のキャラクターは多く、混合されたり物語によって統合されたりする。私生児のユーウェインに対して『白い手のユーウェイン』という名称で記される場合もあるが、この『白い手』という称号も本来ウリエンの息子ユーウェインとは違うユーウェインの称号である。
イドラス:息子。母親は不明。
カログレナント(またはコルグリヴァンス):従兄弟。ウェールズ三題歌では彼に相当する人物がユーウェインの双子の妹(Morvudd)を愛していたとの記述がある。
キンヴァルフ:父方の祖父で、烏軍団の持ち主だった人物。
>獅子の騎士関係
ローディーヌ:妻。泉の貴婦人。
リュネット:ローディーヌの侍女。ユーウェインをとても慕っている。ガウェインを太陽とするのに対し月に例えられる。
エスクラドス:ユーウェインによってローディーヌの夫。