概要
アーサー王伝説に登場する円卓の騎士の一人、「叛逆の騎士」モードレッド。表記揺れとしてモルドレッドとも呼ばれる。
あるいは彼をモチーフにしたキャラクターなどは後述する。
アーサー王に仕える騎士の一人だったがアーサーとランスロットがヨーロッパで戦う間、ブリテンで反逆を起こす。しかしランスロットと停戦したアーサー王がブリテンに引き返してきたため、カムランの戦いで敗死する。
武器はアーサー王の宝物庫から奪い取った剣「クラレント」。白銀に輝く礼式用の剣とされ、「剣の中の王者」という別名も見られる。
原典
名前の由来は、ラテン語「Moderātus(モデラトゥス。中程度、規範内、適度という意味)」から来た古ウェールズ語の「Medraut」、古コーンウォール語の「Modred」とされる。
現代では「Mordred」の綴りからモルドレッドとも読まれる。
アーサー王伝説が作られ始めた頃、モードレッドは、カムランの戦いでアーサー王に致命傷を与えた騎士として短く登場するのみだった。
12世紀、ジェフリー・オブ・マンモスの「ブリタニア列王史」に登場した時、ここではモードレッドはロト王の正式な息子として描かれたが、それ以降の作品では、アーサー王とモルゴースの不義の子として設定されることが多くなった。13世紀以降になってガウェインの兄弟であることやランスロットとグィネヴィアの密通を兄アグラヴェインと暴くエピソードが加えられた。
いずれにしてもアーサー王が破滅する一連の事件の主人公としての役割を与えられている。
出生
彼の出自は、アーサー王の甥、もしくはアーサー王が異父姉モルゴースとの近親相姦でできた不義の子とされる。
両親は、父親がアーサー王あるいはオークニー諸島のロト王で母親は、モルゴースとされる。
このモルゴースは、ロト王の妃だが、アーサーの父、ウーサー王と離婚した母親イグレインが再婚して産んだ娘であるため、アーサーにとって異父姉妹ということになる。
アーサーにとって姉と肉体関係を結んだことになるのだが、これは両人とも知らなかったために起きた出来事である。(だとしても不倫なのだが)
円卓の騎士に
その後、ロト王がアーサーに敗れた後、兄ガウェインにより、モルゴースと共に救出された。
しかしマーリンが「5月1日に生まれた子供が、アーサーの王国を滅ぼすだろう」と予言し、王国中の5月1日生まれの子供がモルドレッドを含めて集められ、船に乗せて海に流される。あるいは、ガウェインによって匿われたとなっている。
これは、「メーデーの新生児虐殺」と呼ばれ、聖書のエピソードからの引用と考えられている。
いずれにしてもモルドレッドは奇跡的に助かり、成長して騎士としてマーリンがいなくなった段階でアーサー王の前に現れ、円卓の騎士の一人となった。
それ以降、父親違いの兄弟ガウェインたちと行動を共にした。フランスで作られたランスロットを主人公とするタイプの物語では、兄アグラヴェインの従士となり、特に親しく行動を共にしている。
ペリノア王とオークニー諸島のロト王の一族との争いでは、親族にあたるオークニー側についた。
ぺリノア王は、アーサー王の古い同盟者であり、ラモラック卿は、その息子であり後継者だった。
しかしぺリノア王がロト王を殺害し、ロト王の息子であるガウェイン兄弟は、ぺリノア王をトーナメント大会で殺害する。さらに共謀してラモラック卿を待ち伏せし、暗殺することにした。
これらは、アーサー王の将来を考えての事なのだが、モードレッドは騙し討ちに参加し、ラモラックに背後から致命傷を与えている。
決起
モードレッドは、作品によって違えども最終的にアーサーと戦い、致命傷を与える役割を持つ。
ジェフリー・オブ・マンモスの「ブリタニア列王史」では、ローマ皇帝ルシウス・ティベリウスがアーサー王に対し、家来として臣従するように要請したため、アーサー王が出征することに決まる。
アーサーがブリテンからヨーロッパに渡る間、モードレッドは摂政として王の代理を務めるように任命されるのだが、ここで彼は王妃グィネヴィアを自分の妻に迎え、アーサーに反逆を企てるという筋書きになっている。
ここでは、モードレッドはロト王の息子でアーサーの養子という立場になっている。
しかしそれ以降の作品では、アーサーがメロドラマのように情けなくなり、妻を主人公(ランスロット)に寝取られるという軟弱な設定に変わっている。
モードレッドの転機は、ランスロットとアーサーの対立、自身の血統が明らかになったためである。
まずアーサー王は、ウーサー王とイグレイン(コーンウォール公ゴルロイスの妻)の息子なのだが、二人の関係は不倫でアーサーも不義密通の子であり、王位継承権がないことになっていた。対してモードレッドがアーサーの不義の子でないパターンでは、ロト王とモルゴースの正式な息子であり、モルゴースがウーサーの姉妹であったため、王位の正統な継承権があったことになる。
その時点でアーサー王の相続人としてモードレッドとガウェインが第1位と第2位に着けており、アーサーもモードレッドを相続人として認めていた。このため、モードレッドが親族の遺産を相続するには、アーサーとガウェインが邪魔な存在となった。
これらは、キリスト教世界では婚外児は、法的な相続権を持たないという考えに基づいている。日本人にはピンとこないのだが、アーサーやモードレッドら婚外児はキリスト教世界では、存在してはならない人間なのである。
次にランスロットと王妃グィネヴィアの関係は、アーサー自身のみならず円卓の騎士も薄々、感づいている状況にありながらランスロットが強力な騎士であり、王の信頼する重臣という立場から見過ごされる大人の事情にあった。
この件は、もともとモードレッドがグィネヴィアに関係を迫る役割がランスロットに置き換えられたものと言われている。
兄アグラヴェインとモードレッドは、ランスロットとグィネヴィアの密会を暴き、ランスロットの失脚を計画する。これは、王妃の密通が許せなかったという正義感からの行動と一連の陰謀であるという二通りの描かれ方がある。
どちらにしてもランスロットは、彼に助けられ、恩義を感じている円卓の騎士たちを連れ、フランスに渡ってアーサーと対立する。
アーサーがランスロットと戦うためにフランスに出兵し、モルドレッドが摂政に任命される。
ここでモルドレッドはアーサーが留守にしている間にモルゴースに唆されて邪心をいだき、謀反を起こした。この時、ブリテンのの豪族、諸侯が殆ど彼に味方した。またグェネヴィアを自分の妃に迎えようとしたが、彼女が拒絶してロンドン塔に籠城したのでモルドレッドは軍を率いて取り囲んだ。
カムランの戦い
アーサーは、ランスロットと停戦し、ブリテンに上陸する。
「アーサー王の死」によれば、モードレッドは、初戦で兄ガウェインを討ち取るが、この事を後悔する。アーサーも右腕として信頼し、甥でもあるガウェインを失ってショックを受ける。またガウェインの幽霊が和平を勧めたため、二人は会談を開くことになった。
しかし最後の和平会議は、失敗し、最期の戦いが始まってしまう。
カムランの戦いでモードレッドは、ユーウェインまたは獅子の騎士、勇猛なるサグラモール、ケイ卿ら、6名の円卓の騎士を討ち取っている。
最期は奮戦し、刀を杖に休息しているところ、アーサー王と一騎討ちで槍で胴体を突き抜かれた。死を覚悟したモルドレッドは渾身の力を振り絞ってアーサー王の額を兜ごと割り、絶命した。
その後
また息子が二人いるが、母親も息子たちもハッキリした「設定」が書かれておらず、名前もない。
アーサーの死後、コンスタンティンが王位に就き、モードレッドの二人の息子たちがサクソン人たちを束ねて戦争を仕掛けるが敗戦する。
この時、モードレッドの息子たちは教会の祭壇の前で命乞いしながらもコンスタンティンに殺害されるのだが、これが神の怒りを買いコンスタンティンも甥アウレリウス・コナヌスによって倒されてしまう。
ランスロットを主人公とするパターンでは、モードレッドの二人の息子のうち、長兄メルハンとランスロットが対決し、敗死するというエピソードがある。またモードレッドの死後、メルハンがアーサーに挑戦し、やはり殺されている。
彼をモチーフにしたキャラクター
Fateシリーズ
『Fate/staynight』でセイバー(Fate/staynight)の過去の中で登場。
モルガンがアーサー王のクローンとして作り出したホムンクルス。女性的な見た目だが、男性との事。
その後、『Fate/Apocrypha』で設定が一新され、荒々しい態度の女性となった。
詳しくはモードレッド(Fate)を参照。
拡散性ミリオンアーサー
魔女モルゴースが全アーサーの因子と自身の因子を掛け合わせて作出した騎士。
全アーサーの因子を持つことから、あらゆるアーサー因子の持ち主の弱点を「作り出」して戦うことができる。
本来、モルゴースが計画を破壊するために送り込んだ存在であるが、逆に「キャメロットが暴走した際にそれを阻止するため」としてアーサーによってキャメロットに迎え入れられた。
担当声優は福山潤、「実在性ミリオンアーサー」におけるキャストはルウト。