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トリスタン卿

とりすたんきょう

「トリスタンとイゾルテ」の主人公。アーサー王伝説では円卓の騎士の一人として有名。
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概要編集

サー・トリスタン(Sir・Tristan)。伝承によってはトリストラムとも。

ピクト人の言葉でDrustan。その名前は「悲しみの子」を意味している。そのものズバリ。


元々はアーサー王伝説以前の物語に登場する人物で、「トリスタンとイゾルテ」はほとんど民話に近いため原典などはないが、おそらくはケルト神話に登場する英雄ディルムッドと王妃グラーニャの悲恋が元ネタではないかと言われている。


登場する作品ごとに設定はまちまちだが、大体が誇り高い騎士だが忠義よりも愛の道を選んでいる。

そして大体が悲劇的な最期を迎えている。


       というより名前からして最初から彼の運命は決まっていたのかもしれない。


騎士として編集

版によって強さはまちまちだが、いずれも友人のランスロットに次ぐ強さの持ち主だったことが窺え、『アーサー王の死』においても馬上試合でガウェイン含む複数の円卓の騎士たちを打ち負かしている。ただカムランの戦いには不在であったため、実際にはどの程度強かったのかは意見が分かれる。また優れた吟遊詩人としての能力も備わっており、序盤はイゾルテに竪琴を教えている。


フェイルノート編集

「トリスタンとイゾルテ」に出てくるトリスタンの弓。無駄なしの弓とも。

竪琴を改造して作った弓で、人間でも獣でも狙った場所に必ずあたるといわれる。


カーテナ(コルタナ、クルタナ)編集

剣先の折れたトリスタンの剣。 イギリス王室において儀礼剣として現在も伝わっている。慈悲の剣とも呼ばれる。

歴代の戴冠式で使われ、歴史上一度紛失しており、後に新しく二代目カーテナが作られている。

中世フランスのシャルルマーニュ伝説において、十二勇士の一人オジェ・ル・ダノワの持つ剣であり、シャルルマーニュの「ジョワユーズ」、ローランの「デュランダル」とは同じ素材と製法で作られた兄弟剣で、元々はトリスタンの剣だったと紹介されている。

ランスロットのアロンダイトが「絶対に折れない剣」という騎士道そのものを象徴しているのに対し、さしずめこちらは「欠落した騎士道」を体現したものだろうか。


「トリスタンとイゾルテ」編集

ライオネス国王メリオダスと妃エリザベスの間に生まれる。幼いころに母を亡くし、継母から命を狙われて逃亡。各地を転々としたのちコーンウォールにたどり着く。


この物語では主人公ということもあってかほとんど無双状態。物語によっては悪竜だろうが円卓の騎士だろうがずば抜けた強さを発揮している。円卓の騎士最強のランスロットをして尊敬の念を抱かせるほどである(ちなみに試合はトリスタンの不戦勝)。

アイルランドの姫イゾルテと互いに激しい恋に落ちるが、一方は王に忠実な騎士として、一方は一国の姫として、もしくは求婚した王の不義なる部下として、あるいは殺された弟の仇敵として、いろんな理由はあるがとにかく二人は愛し合いながら互いに結ばれることはなかった。

ちなみにこの時トリスタンは、イングランドのアーサー王の窮地を始め各地諸侯で起こった問題事を、ただイゾルテとの失恋への憂さ晴らしとして救っている。


そんなトリスタンに、アーサー王はイングランドの王女イソルデを、トリスタンの妻として与えようと申し出た。トリスタンにとって最愛の人はアイルランドのイゾルテであったが、彼女は叔父マーク王の妃であり、彼の愛が成就する望みは無かった。いつまでも辛く悲しい日々が続くと悟ったトリスタンは王の申し出を受け、イゾルテと婚姻した。

(ここで便宜上、アイルランド妃を金髪のイゾルテ、結婚したイングランド王女を白い手のイゾルテとする。)


ある時、国内の内戦の激化により、トリスタンは深手の重傷を負う。治癒するには金髪のイゾルテの助けが必要だとわかり、使者を送った。そしてもし王妃が一緒に来てくれたなら船には白い帆を、拒絶されたなら黒い帆をあげるよう指示した。

金髪のイゾルテはトリスタンの窮地を知るや否やすぐに行くことを決意し、船に白い帆を掲げた。

一方、白い手のイゾルテは夫との静かで幸せな日々を奪われるのではないかと疑い始めていた。そして白い帆が挙げられた船を見て「黒い帆が挙げられています。」と答えてしまった。

絶望したトリスタンはイゾルテの到着を待たずに息を引き取り、駆けつけた金髪のイゾルテは最愛の人の亡骸を前に悲嘆のあまりそのまま絶命した。


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