概要
従来、子供や女性を対象とした犯罪=性犯罪の割合が高くなることもあって被害者本人や家族の問題に矮小化されるか、言及すること自体がタブー視されてきた。
日本では証拠が残りにくく、量刑としても相対的に軽い公然わいせつ(最高で懲役6ヶ月)・強制わいせつ(最高で懲役10年)が多いため、警察も犯人検挙に消極的で、そうした世論に拍車をかけてきた。
しかし、増長した加害者が無差別に犯行を重ねたり、猟奇的な凶行に及び始める実態が明らかになってくると、世論は一気に「警察の怠慢」を責め立てる方向へと傾く。
それを受けて、警察も2000年代に入ったあたりから、むしろ積極的に犯罪情報を公開するようになった。その中でこの語が多用されたことから、「事案=性犯罪」という認識が同時に広まっていった。
意味の変遷
「性犯罪=下ネタ」の一種」としがちなネット上の会話においては、しばしば「おまわりさんこっちです」と同様の意味合いで、自ら変態行為を犯しながら「事案発生!」と触れて回るといった「事案」が起きていた。
しかし、それらの大半はあくまで「実行したら犯罪」とを踏まえつつ妄想を語っていたのであり、不謹慎ではあれども事件性はさほどなかった。
ところが、社会の「事案」に対する感覚が過敏になり、次第に「変人には違いないが、犯罪までは犯していない」といった例や、「中年男性がただ通過しただけ」、「下校中の道草(踏切付近で遊ぶ)を注意しただけ」としか読み取れない例などが通報され捜査の対象となってくると、「痴漢冤罪」などで別方向の警察不信を燻ぶらせていたネットユーザー達は「マジギレ」し始める。
「やられる前にやれ」とばかりに加害者側への傾倒を強める者もちらほら出てきており、露骨な加害者擁護・被害者非難のセカンドレイプ祭りに発展した「事案」も発生している。一時は性犯罪撲滅の機運さえ見え始めていたネット空間であるが、一転して急速にきな臭くなっている。
なお、近年の学校では被害回避のために「人を見たら泥棒と思え」「性善説を全否定しろ」などを地で行く指導をしており、子供達の警戒心や猜疑心は一昔前と比べて格段に高まっている。いわゆる「声かけ事案」の背景にはそうした時代の変化があるという事も理解してあげてほしい。