宇多天皇朝から醍醐天皇朝にかけて地方官を歴任し、宮廷歌人としての名声が高い人物。家集に『躬恒集』がある。
歌歴は華々しく、歌合わせ・歌会・屏風歌に作品が多く登場し、名所歌の作者としても名があるところから、即興的な歌才に優れていたことをうかがわせる。
入集も60首で、紀貫之についで第2位である。
歌の特徴としては、四季歌を得意とし、機知に富み、事象を主観的に把握して、平明なことばで表現する。
『大和物語』132段に、醍醐天皇に「なぜ月を弓張というのか」と問われ、「てる月を 弓張とのみ いふことは 山の端さして いればなりけり(照っている月を弓張というのは、山の稜線に向かって矢を射るように、月が沈んでいくからです)」と即興で応じたという逸話がある。
代表歌
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
てる月を 弓張とのみ いふことは 山の端さして いればなりけり
関連文献
古今和歌集 大和物語 無名抄 躬恒集