概要
声:速水奨
伊賀の副首領。
170年以上生きている筈だが外見は中年のままである。
不死の術を持ち、首を撥ねられても尚しぶとさを見せる。
冷徹怜悧であるが、その特異な身のため孤独を抱えている様でもあった。
他の伊賀者からは一目置かれており、当主とは別格の存在のように扱われている。
「伊賀の精をお注ぎ申す。」
性格
怜悧冷徹にして計算高い卑劣な謀略家で、目的のためには手段を選ばない。
また、サディスティックかつ強欲、好色。任務のついでに我欲に走る行為も少なくない。
反面、伊賀への愛国心と忠誠心は嘘偽りなく本物で、常に伊賀全体のことを考えて行動しており、伊賀の存続と繁栄のためならば、同胞や当主ですら捨て駒にすることも厭わない。
しかし、それ以上に長年の宿敵・甲賀に対する敵愾心と憎悪は凄まじく、伊賀と甲賀の和平には表向き賛同しているように見えるものの、実際には大いに不満を募らせている。
術の特性故か自身が害されること全く恐れておらず、しばしば油断しては殺されている。
能力
ほぼ完全な不老不死の術をその身に宿しており、首を撥ねられようが心臓を破壊されようが、短時間で修復して生き返ってしまう化け物じみた生命力を持つ。
この不死の術の仕組みは彼の肉体に宿っている「人面の痣」の仕業であり、この痣は天膳自身とは独立した命と意思、自我を有しており、本体が死んでも痣が天膳の命を繋ぎ止めつつ肉体の損傷を修復、完全に蘇生させてしまう。
その性質上、死因が重度だと蘇生までに時間が掛かってしまうという欠点があるが、その分如何なる傷だろうが毒だろう老いだろうが、完全に無効化してしまうことが可能。
また、蘇生中の天膳の肉体は実際に「死んで」いるため、術の絡繰りを知らなければ、天膳が生き返るなどと想定することはまず不可能である。
天膳曰く、この痣は自分がこの世に生を受ける際、本来ならば自分の双子の兄弟として生まれてくるはずであった命らしく、文字通り一蓮托生の最大の同胞として認識している。
アニメ版では、かつて甲賀側の恋人に裏切られて命を落とした母親の怨みが赤ん坊の天膳に宿ったという設定に変更され、甲賀への憎悪の要因にもなっている。また、超常識の長生きに疲れて自然の死を渇望する不死身キャラによく見えるコンプレックスも、憎しみに拍車を掛ける八つ当たりであり、残虐性の根源である。
剣術の腕前にも優れているが、何よりも彼の恐ろしさはその不死性である。
特に初見殺しを売りとする術との相性は抜群で、本来であればその絡繰りを知るのに命を代価とする場合でも天膳には一切通用せず、文字通り「命を張って」学習した対策法、そして何よりも死んだ者が生き返るという驚愕の「初見殺し返し」による逆襲戦術で、きっちりと仕返しをする。
そのため、劇中後半では奇襲や隠密の超常忍術を得意とする甲賀の忍びたちの大半が彼の手により葬り去られて(天膳自身も何度も殺された)おり、その実力の高さを見せつけている。
天膳殿がまた死んでおられるぞ!
恐るべき不老不死の肉体を持つ天膳だが、本編及び過去の回想、ドラマCDを通して、とにかくその身に何かある度に死んでいることから、ファンの間ではネタにされている。
特にドラマCDでは、一般人の若い娘をナンパして山に連れ込んだところ、熊に襲われて殺され(しかも再生するので巣に持ち帰られ、保存食にされかけた)たり、とある騒動の犯人に間違われて同胞に誤殺されたりなど、普段からしょっちゅう死んでいることが判明している。
そのためか、仲間に死体を見られても「ま~た死んでおるのか」の一言で済ませられたりと、最早死ぬこと自体が天膳の一つの日常として昇華されるレベルにまで至っている。
天膳の華麗なる死に様&逆転劇
偶然遭遇した十兵衛を追い詰めるが、四肢のない彼の風体を見て油断し、喉の奥に仕込まれた槍の穂先でモノの見事に心臓を貫かれ死亡してしまう。
しかし、直ぐに息を吹き返して後を追い、十兵衛は生き返った天膳の姿を見て驚愕、逃げ場を失い破れかぶれに仕掛けてきたところを、得意の剣術で縦に一刀両断にして斬り捨てた。
弦之介との戦いを断固拒否する朧様に伊賀の精をお注ぎ申し上げようとした隙を突かれ、壁から姿を表した刑部によって首の骨をへし折られ殺されてしまう。
しかし、死んだ振りをしている間に形部の術と隠れ潜んだ場所を分析して見抜いており、絶妙なタイミングで生きている姿を現すことで彼を驚愕させることに成功する。
その動揺振りは術が破綻するほど凄まじいものだったらしく、姿が表出して居場所がバレてしまい、天膳は朱絹との連携でその隙を突き討ち果たした。
刑部は戸板に同化したまま死亡したため、苦悶の表情を浮かべた刑部の全身が紋様のように戸板に浮かび上がり、その表面には血がべっとりと滲んでいた。
変装した左衛門と陽炎、豹馬のコンビの前に騙され、豹馬の「瞳術」によって自害させられてしまう。
左衛門は天膳を伊賀側の実力者であると見て変装に適していると判断したが、それが運の尽き。
案の定復活し、自身に変装して朧に近付こうとしていた彼を手勢を率いて行く手を阻み、そのまま配下の兵士に槍で突き殺させて血祭りに上げた。
なお、左衛門に対しては個人的な恨みも深かったのか、わざわざ別人になりすまして彼に近付いており、殺すついでに皮肉までたっぷりと込めている。
先に始末した左衛門が変装している風を装って近付き、油断させて伊賀の精をお注ぎ申し上げるが、陽炎の術によって彼女の体内毒を煽り、腹上死を遂げてしまう。
しかし、不老不死の我らが天膳様はやはり復活、驚愕する陽炎を見事捉え、弦之介の居場所を聞き出すために拷問に掛けた上で、じっくりと時間を掛けて嬲り殺しにした。
石川賢版「柳生十兵衛死す」の薬師寺天膳
山田風太郎の著作「柳生十兵衛死す」を原作に石川賢がコミカライズした作品にも薬師寺天膳が登場する。
作中では、“もうひとつの江戸時代”を支配する徳川家康の配下として呼び出された甲賀十人衆と伊賀十人衆の先手として登場。柳生十兵衛の刀を不死身の肉体で受け止め、他の甲賀伊賀の忍者たちと共に天守閣上で死闘を繰り広げるが、能楽艦(もうひとつの江戸には空中戦艦がある)が天守閣に衝突した際の隙を突かれて十兵衛に両手と左足を斬り飛ばされ、さらに時空を渡る夢幻能の影響で能楽艦ごと本来の江戸時代に転移してしまう。
もはや戦闘不能と思われる深手を負った天膳だが、不死身の特性を利用して両腕の切断面に計六本の刀と薙刀、左足に艦機関部の部品を差し込んで同化させ、十兵衛の前に再び現れる。六本の刀を用いた嵐のような斬撃と、不死身ゆえに生半可な攻撃では致命傷を負わない天膳は十兵衛を次第に追い詰めていく。しかし、崩落した艦の支柱を破城鎚のように担いで反撃に出た十兵衛によって天膳は胴体を貫かれ、そのまま超高熱の動力炉に押し付けられて最期は艦と共に爆発四散した。