現実にあるマテバ2006Mを、9mmパラベラム仕様にしたもの。
9課のほかの連中が、ツァスタバ(ユーゴスラビア)の9mmのオートマティックを使うのに対して、マテバに固執するトグサ。(バトーはバトーで.50口径のジェリコ942FSを使っているが)
この「リボルバーがすき」「マテバという異色のリボルバー」というガジェットが、義体化が比較的少ない、元刑事であるというトグサの個性を深めるのに一役を買っている。
「オレはマテバがすきなの」「マテバでよければ」などは、彼とマテバに対する愛着を示す名台詞として有名。
原作漫画攻殻機動隊ではそこまでこだわりはないのか、少佐に言われてあっさりとマテバを使うのを辞めている。
また攻殻機動隊SACではM-2008(6 Unica)を愛用しているが、潜入の際や自宅に隠しているバックアップガンなどはスナブノーズ(短銃身モデル)のM-2006Mを使用しており、こちらはM2007と違い.357マグナム仕様で銃身に交換用穴のあるオリジナル同様のもの。
なお、SACの方が知名度が高いためかM2007はM2008とよく混同されるが、オートリボルバーではない。
Ghost in the Shell 2: Innocenceでは銃身の上下にマウント用レールの追加やグリップの大型化に加え、S&WパフォーマンスセンターカスタムM29(M629)のようにバレル上部のウェイトが調整可能な構造になるなど、より競技用途向けにカスタマイズがされたM2007を使用している。
ARISEではショートバレルのM2008を使用しており、M2007は登場していない。
実写版である「ゴースト・イン・ザ・シェル」では、後述のチアッパ ライノを使用している。
現実のマテバ2006Mについて。
マテバ2006Mは、実際に存在していて、.357マグナムを使用する。
イタリアのマテバ(マキナ・テルモ・バレスティック)社の製品で、この会社の競技用銃は独特な形状をしているのが特徴。
この銃の特徴としては、上方にスイングアウトするシリンダー、普通のリボルバーとは逆方向の下部にある銃身が特徴。
更に発砲時に銃身の跳ね上がりを抑えるために銃身上部にバレルウェイトを設置しており、まるで銃身が二つあるようにも見えるデザインとなっている。
競技用として販売された銃の為に反動を抑えるため、このスタイルになったというが、おかげで他のリボルバーとはかなり違う奇妙な外観をもつ。
リボルバーの銃身交換にはバイスで銃本体を冶具を用いて固定し、力をかけれる大きな工具を使う必要がある上にシリンダーギャップ等の調整が非常に面倒で、設備のある場所でないと交換が出来ないのだが、2006Mでは専用工具のみで簡単に銃身を取り外すことが可能で、射撃場などでも別の長さへの交換が簡単に出来るのが特徴。
本記事で触れているマテバM2007も、ただ口径とバレル交換用工具のはまる穴が無い所が違うというだけで、2006Mの異形さはそのまま受け継いでいる。
なお、2006MやModel-6 Unica等を手掛けたデザイナーであるアントニオ・クダッソとエミリオ・ジゾーニの2人は後に同じイタリアのChiappa Firearms社で同コンセプトのChiappa Rhinoを設計している。
Rhinoは競技用ではなくコンシールドキャリー、自衛用に隠し持つ用途を重視しており、銃身長変更は出来なくなったが、多角形シリンダーを採用してリボルバーの厚みを薄くする工夫をしている。
口径は.357マグナム、9mmバラベラムの他、.40S&Wや9mmx21 IMIが用意されている。オート用の弾薬が使用可能となっているが、多くのオート用弾薬に対応したリボルバー同様にクリップを使用して装填する仕様となっている。
ハンマーに見えるものは内臓式ハンマーを操作する為のコッキングレバーであり、非連動式でハンマーが起きているか外からは判らない為、リアサイト横にコッキングインジケータが備えられている。
実写版のトグサが使用しているのが本銃。長銃身モデルで銃身の上下にマウントレールを持つ60DSの.357マグナム仕様を使用している。マテバ社の倒産や2006M・Unica6の希少性からオリジナルの入手が困難だったためと考えられる。ある意味後継ともいえるライノはスタイルもマテバに近く、現在でも生産されている製品のため、採用されたのは自然な流れだろう。
マルシンのM2007『トグサの銃』について。
2007年、トイガンメーカーのマルシンが、マテバM2007をモデルアップ。
あまりの異端ゆえ、製作、販売するメーカーはまずないだろうと言われていたが、カート式リボルバーを数多く、現役で出しているマルシンは、その技術を惜しみなく投入。
実際に「弾が飛び出て、スウィングアウトし、排きょう」できるマテバは、現在のところこれだけ。
初回購入特典には、映画『攻殻機動隊』で使われたマーカー弾を模したストラップがついた。
同時にトグサが使用したものと同デザインのバスケット模様の専用ホルスターが発売されている。
後に木製グリップの限定バージョンも登場。(別売りで木グリ単体も販売された。)
9mmパラベラムはオートの弾なので、普通のリボルバーでエジェクターが行う「薬莢のへり(リム)を引っ掛けてエジェクトする」という方法が使えないと思われたが、マルシンはリムではなくケースマウス(銃弾の収まる口)を保持する爪をイジェクターに付ける事でそれをクリアしている。
リムレス・・・つまりオートの空カートがリボルバーから出るさまは、なかなか新鮮。ちなみにこの薬きょうは、同社の排きょう式ガスガン「グロック21」にも使える。その辺がいかにもサイバーパンク風でいい。(使いすぎると、グロックのエジェクターをいためるので注意!)
しかし、独特の上に跳ね上げるシリンダーは使い勝手が悪く、慣れが必要。
また、銃身が下にあるだけでなくインナーバレルが改造対策に湾曲部分を持つスペリアルバレルであり、独自のホップアップシステムのLD2は(マルイのものと比べて)性能もあまり良くないことから命中精度は他のエアハンドガンに一歩譲らざるをえない。
弾丸はマルシン専用の8mmBB弾を使うので、ポピュラーな6mmに互換性がない。また、大型の弾を打ち出すので、燃費も比較的悪い。
また、9mmパラベラム弾を模したカートリッジの為に市販のスピードローダー(リボルバー用の装填器具。弾を円状に並べて保持しており、一度にすべての弾を入れることができる)はリムで保持するものが大多数を占めている為に使用できず、弾頭のない薬莢のみのデザインの為に見栄えが悪い、装填がしづらいといった欠点もあった。
銃の大きさも所謂.44マグナム銃より大きいので、携帯に不便。
完全にコレクション向けの銃だが、独特のスタイルと使いこごちにファンも多く、短銃身に改造する事でインナーバレルの湾曲部分より先を除去したり、LD2を廃する改造するなどして、サバイバルゲームで使う猛者もいる。
ちなみに取扱説明書のユーザーのイラストは他のリボルバーと異なりトグサがゴーグルをしてエアソフトガンを扱っている絵となっている。
後に新型のXカートリッジ仕様が発売。
8mmのXカート仕様はトグサの銃と同様に9mmパラベラム弾を模したカートリッジを使用しているが、こちらは弾頭部の付いた状態をモデルにしている。
.357マグナムサイズに変更され、弾頭部分も付いたXカートリッジを使用する6mmBB弾仕様も販売されている。こちらはリボルバー用弾薬を模したカートリッジであるため、スピードローダーの使用も可能。
マテバ好きにはたまらない朗報。
余談ながらM2007ことModel-6 Unicaは大日本技研よりトグサの銃として無可動ガレージキットとして販売されたのみで、弄って動かせるものは出ていない。(デモンベイン仕様のイタクァも出ているが、こちらはカスタムモデルの為に外見は大きく異なる)
チアッパ ライノは国外でエアソフトガンが販売予定であるが、フルメタルモデルとなるために日本でへの輸入は不可能である...と思いきや、日本仕様では規制対象となる部品のみジュラコン製とすることで規制を回避、削り出しで対策部品を製造するためか製造数は少数との事。
オート向けリムレスカート使用リボルバーについて
一般的にオート用のリムレスカートを使用する際には(対応シリンダーでなければ)シリンダーに加工を施してハーフムーンクリップ等の保持用クリップを用いて装填を行うが、クリップを用いずに装填可能なようになっているリボルバーは存在しており、攻殻機動隊オリジナルのギミックではない。
例えば米Phillips&Rodgers社製Medusa Model 47、米コルト社製Survivor.380-357MAG等では9mm口径の弾薬であり、ボトルネックを持たない薬莢の弾がクリップなしで使える構造となっている。
弾薬によっては初速の低下や横弾等もあったが、リボルバー故に弾由来の動作不良はなく、良好な性能を持っていた。
機構はリムを引っ掛けて排出するエキストラクターが通常のスターと呼ばれる形状ではなく、中心を通る軸からシリンダーの薬室内に飛び出した爪となっており、これが薬莢のリムに引っかかり押し出す役割を持つと共にオート用のリムレスカートがシリンダー内に落ち込まずに適正位置に保持する役割を持つが、薬莢の挿入に合わせて稼働するこの部品にテンションをかけるスプリングをシリンダー内に設置する必要があり、シリンダーを保持する軸内にイジェクターと保持機構の二つのスプリングと軸を組み込まねばならず、軸自体に稼働するエキストラクターとは別にシリンダー回転機構であるラチェットの受けを組み込まねばならないが、シリンダーの大型化はできないので軸を細くしてその周りにパイプ状の部品を使用する、エキストラクターにシリンダー内に収まる機構と爪を開く機構でスプリングが二つ必要となる、といった具合に通常のサイドスイング式リボルバーより多くの部品を同じスペースに収めるためにシリンダー以外のすべての部品の強度が低いものとなってしまう。
更に薬莢の種類を問わずテンションがかかった爪で保持する機構から排莢時にはエキストラクターロッドを押して抜き出しても薬莢はエキストラクターである爪で保持されたままであり、ロッドから手を放してしまえば薬室内へと戻ってしまう。このため、シリンダーが本体に戻らないように手で押さえながら排出機構を操作し、薬莢を一つ一つ取り出さなければならないという面倒な操作が必要となる。グリップから手を放して操作となるので射撃・排莢・装填と度々持ち替える手間も加わる。
このような欠点を持っていた事に加え、品質や性能の割に非常に高価とあって普及する事はなかった。
また、第一次世界大戦時に不足していたM1911の代用品として.45ACP弾を使用するM1917リボルバーがコルト(ニューサービス)とS&W(.44ハンドエジェクター)の二社により開発されている。(もっとも既存の製品を改造した程度であったが)
こちらは軍で使用されていたという事もあってか比較的普及しており、太平洋戦争後間もない日本の警察でも米軍から貸与された余剰在庫品が配備され、ニューナンブM60へと完全に交代する昭和50年頃まで使われていた。
しかし、コルト製のM1917では保持用のハーフムーンクリップを使用しないとまともに使えない、後にクリップなしでも使えるよう改良したものの弾薬の保持が不安定で不発が多くクリップが必要なことは変わらない、クリップを用いない場合は排莢用の棒が必要といった問題があった。
S&W製M1917ではクリップなしで.45ACPを使えるものの、クリップなしではイジェクターが対応していない為に排莢用の棒を別に用意する必要があるなど、暫定的なものということもあってあまり洗練された作りでは無かった。
どちらもリムレス薬莢の保持機構としては単純な構造を用いており、薬莢径より銃弾の方が径が小さいことを利用して、シリンダー内にケースマウスが引っかかる段差を作り、そこで保持するという構造である。多少の違いはあれど、単発式等と同じ構造である。
問題点としては上記のようにクリップなしでは排莢に棒が必要となる事に加え、製造ミス等によりオートでは問題とならない薬莢長の微妙な寸法差が発生した場合は激発不良となる可能性がある。
ちなみに後に民間市場へも流れた際、リボルバー用にリムド化した(物によっては.45ロングコルトの薬莢を短く加工した).45Auto Rim弾が登場している。こちらはリボルバー向けということもあってイジェクター含め普通に使用可能。
また、S&W製M1917は9mm化したものが民間でも販売されている。
S&Wは他にも10mmオートと.40S&Wを使用できるM610、.45ACPを使用できるM625、M325、ガバナー等のオート用弾薬を使用できるリボルバーを販売している。
すべてクリップを用いて保持する構造となっているが、ガバナー以外はシリンダー長も短いオート用弾薬に合わせた短いものとなっており、同口径のリボルバー用弾薬を装填出来ない専用設計となっている。(共に既存のフレームを使いまわすため、銃身がシリンダー側に長く突き出た独特の外見となっている)
ガバナーでは.45LC弾を使用するリボルバーであるが、クリップを用いる事で.45ACP弾の使用が可能で、シリンダー長は2.5インチ長の410番シェルを装填可能な長さとなっている。
オート用弾薬は通常長のリボルバー弾薬と比べて薬莢長が短く、威力が低下するように思えるが、自動装填機構を動かすだけの性能を求められるために実際には(あくまでスペック表上ではあるが)オート用弾薬の方が高初速の為、同じ弾丸であればオート用の方が高威力となる
マグナムカートリッジと比較した場合は、意外な事にオート用の方が高初速となる事もある。マグナム弾というと銃口が跳ね上がるような大威力というイメージがあるが、実際使うとなるとそういった弾は扱い辛い事が多い(例えば人を撃つのに熊撃ち用の弾は過剰である)ために装薬量や弾頭重量は通常長の薬莢と変わらないものもあり、そのような弾であればオート用が勝るのである。