概要
映画『男はつらいよ』シリーズの主人公。職業は香具師(やし)。
「それを言っちゃあお仕舞いよ」「結構毛だらけ猫灰だらけ」などのセリフが有名。
柴又のだんご屋「くるまや(後にとらや)」の本来の跡取りだが、本人にはその気はない。
実は車兄妹の中では唯一、外で父親と芸者との間にできた子である。本来は兄がいたが既にこの世を去っている。生まれた経緯や父親への反発で家を飛び出して以降、妹さくらとは当初面識がなかった。
実母への憧憬があり、実は逢いたがっていたが想像していた実母像と違っていた為に仲違いしていたが、いつの間にか和解していた。
寅さんと啖呵
寅さんの職業柄、啖呵とは切っても切れない関係で威勢のいい口調とリズムで客の注目を惹くシーンは名人芸の域。これは『寅のアリア』と言われるほどであった。
実は渥美清が若い頃に的屋衆のところに出入りしていた時に身に付けた話術であり、実質的に本物の啖呵売仕込みと言えるだろう。
実は・・・
今まであまり知られてこなかった映画の前身であるTVドラマ版男はつらいよ(フジテレビ)の最終回で寅さんはハブに噛まれて死んでしまう。この事は直接の描写ではなく映画版で佐藤蛾次郎氏が演じた源公の前身といえる「寅次郎の弟分の雄次郎」がさくら達にその最期を伝えたシーンでしかない。
ところが、さくらの前にまさかの寅次郎が現れる。現れた寅次郎はさくらに別れを告げ、後ろ姿のままフッと消えた(当時の映像技術の為そのような演出となっている)。妹想いのやくざな兄貴は夢か幻かはたまた幽霊になって妹の前に現れこの世から去ったのである。
この衝撃的な終わり方に、主な視聴者だった男性層からは放送後にフジテレビへ抗議が殺到し、寅さんをさながら兄か弟のように感情移入していた視聴者も多かったということが判明した。
事実、抗議の声の中には「よくも俺の寅を殺しやがったな」などという、まるで身内の仇にぶつける恨み節のようなものまであったらしく、これに手応えを感じて製作されたのが映画版「男はつらいよ」の第一作である。
そして構想のままで終わった第五十作(本来、これが完結作になるはずであった)でも老いた寅次郎がその生涯を終えるものだったという。二代目寅次郎を据えてシリーズを続行する話も出たが長年寅次郎を演じた渥美清以外に適役は見つからなかった為立ち消えとなった。
松竹映画で追悼の意味を込めた西田敏行主演の「虹をつかむ男」のラストでCG処理であるが、寅次郎が登場している。これが銀幕で最後の寅次郎の登場となった。
テレビドラマ版の存在は渥美清氏が亡くなった後に追悼特番等で一部が再放送され、知らなかった世代にも改めて知られる事になった事や結末が悲しいものだった衝撃を与えた。
テレビドラマ版は第一話と最終話のみでしかこの世に存在していないとのこと。理由は記録する放送用テープが高価で一話と最終話以外では1本のテープが使い回されていた為。テレビ放送がモノクロであり、家庭用ビデオデッキが無かった時代であるので一般人が録画する事も不可能であった。