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東映東京撮影所製作・配給。全10作。


煌びやかな電飾と極彩画に飾られた長距離トラック(デコトラ)の運転手、一番星桃次郎(演:菅原文太)とヤモメのジョナサン(演:愛川欽也)が巻き起こす、アクション・メロドラマ・お色気・下ネタ・笑い・人情が渾然一体となった大衆娯楽映画。監督は鈴木則文。菅原文太とは無名時代からの友人でもある。


誕生の経緯編集

もともと本作は主演の愛川欽也吹き替えを担当していたアメリカのテレビドラマルート66の様なロードムービーを作りたいという構想を抱き、自ら東映に企画を持ち込んだのが始まりである。しかしルート66は若者2人がスポーツカーでアメリカ大陸を旅をするという内容であったために当時40歳だった自身には無理があると考えていた時NHKのとあるドキュメンタリー番組内で、東名高速をイルミネーションを点けたトラックが走っている映像を観て、「これならイケるんじゃないか?」と閃き、情報番組で共演して知り合った菅原文太と共に東映の岡田茂社長へ直談判して企画が通った。


しかし岡田社長は一旦企画を通した後で「バカヤロー! トラックの運ちゃんの映画なんて誰が見るんだ!」と一蹴。ボツ企画になったが別の映画作品がキャスティングの段階で頓挫したことでトラック野郎の企画が復活。愛川欽也曰く「当時の東映は岡田社長の鶴の一声で決まっていた」らしい。


企画から下準備、撮影を含めた製作期間は2か月、クランクアップは封切りの1週間前で当初はシリーズ化の予定はなかった。

ところが蓋を開けてみると高倉健宇津井健千葉真一など当時のスター役者を起用した「新幹線大爆破」の倍以上である8億円以上の配給収入が得られ、岡田社長は即座にシリーズ化を決めた。


愛川曰く、公開時期が松竹の「男はつらいよ」とぶつかることが多く、「トラトラ対決」(「トラック野郎」と「寅さん」)と呼ばれていたという。ちなみに男はつらいよは「静・雅」、トラック野郎は「動・俗」と対比されていた。


このシリーズでデコトラの知名度が上がり、星桃次郎の男気あふれるトラック運転手姿に憧れて長距離トラック運転手の道に入った者も少なくはない。


終盤に時間的に困難な輸送依頼を引き受け、物を、時には人を愛車・一番星号に載せて道中警察の追跡を撒き、道無き道をボロボロになりながら天下御免のトラック野郎として爆走するクライマックスは名物となっている。


登場人物編集

一番星桃次郎(星桃次郎)編集

ド派手な装飾に包まれた大型10tトラック(デコトラ)「一番星号」で全国津々浦々走る長距離トラック運転手こと「天下御免のトラック野郎」。自宅を持たないらしく、川崎のトルコ(現称・ソープランド)に本籍を置いている。トルコを心の故郷としているが、実際の故郷は東北地方のダムに沈んだ村であり故郷というものには並々ならぬ想いを持っている。

アウトローな風情であり喧嘩っ早いが義理人情に篤く、同じトラック野郎を生業とする仲間の死にはトラック野郎なりの弔いで見送る等仲間想いのところがある。

マドンナに惚れると職業を偽る癖がある。しかも大抵ひどい状況下で出会うのがほとんど。

腹が弱いのかやたら便意を催すシーンが多く、ひどい場合は茂みで野グソまでやる始末。

ジョナサン一家とは家族ぐるみの付き合いがあり、たまに転がる事もある。

右肩に「☆」「一番星」の刺青がある。また、衣装にも星をあしらったマークを入れている事が多い。

ちなみに赤フン(ふんどし)派。


トラックの後部は「昔桃太郎、今桃次郎」と書かれている。


やもめのジョナサン(松下金造)編集

一番星の相棒で、元警官でありながらパトカーで飲酒運転して懲戒免職された果てにトラック野郎になった異色の経歴の持ち主。

川崎辺りに自宅を持ち、肝っ玉母ちゃん・君江(演:春川ますみ)と子沢山の大家族である。中型4tトラック「ジョナサン号」には一万円札をデザインしている。

喧嘩は弱いが桃次郎とは仲が良いコンビで時には喧嘩をする事も。

帰宅する度に母ちゃんには「夜のおねだり」される為、半ばうんざり気味。ちなみに母ちゃんもジョナサン号を運転できる。

「日本銀行御用達」「やもめのジョナサン」と書かれた行灯があるが、妻帯者のくせに「花嫁募集中」という行灯まである。


ある時、過積載取り締まりによって免停を食らいトラック運転手として成り立たなくなった挙句に壮絶な死を迎えたトラック野郎の話を耳にしたジョナサン。あまりにも非情な取り締まりをした警官が誰なのか義憤に駆られて問うと、なんでもその昔に花巻の鬼台貫(※)の通り名で呼ばれる鬼代官のような情け容赦ない取り締まりで有名な警官に引っかかった故だったという。


「花巻の…鬼台貫…」


ジョナサンは言葉を失った…彼はその通り名に確かな聞き覚えがあった。それもそのはず、花巻の鬼台貫と呼ばれた警官はジョナサンの過去だった。取り締まりで食い扶持を失う事がどうなるかをその頃は全く気にもとめずに非情な取り締まりをしていたが、トラック野郎に転身してそれがどれだけ重くのしかかるかを知った彼は自分を責めてしまった。そして過積載検問所で取り締まる警官と土下座して見逃してくれと必死で嘆願するトラック運転手の姿を目の当たりにした時に過去の自分が重なり、過去の贖罪の感情とトラック野郎達を守る為についにジョナサン号で検問所を破壊してしまった。


※ いわゆるトラックの過積載を取り締まるための計量器とその取り締まりの警官のこと。代官と台貫をかけている。


シリーズタイトル一覧編集

タイトル主な舞台
第1作御意見無用岩手県盛岡市~青森県青森市
第2作爆走一番星兵庫県姫路市~長崎県長崎市
第3作望郷一番星北海道釧路市~静内町~札幌市
第4作天下御免愛媛県宇和島~松山市
第5作度胸一番星新潟県新潟市~佐渡島~石川県金沢市
第6作男一匹桃次郎佐賀県唐津市~熊本県熊本市~鹿児島県鹿児島市
第7作突撃一番星三重県鳥羽市~岐阜県下呂温泉
第8作一番星北へ帰る岩手県花巻市~福島県福島市
第9作熱風5000キロ長野県上松町~富山県魚津市
第10作故郷特急便高知県高知市~大阪府大阪市

※…シリーズの中で特にシリアスな内容とした事でも有名で、唯一テーマ曲が「一番星ブルース」ではない。


余談編集

劇中で登場した車輌のうち、唯一現存している一番星号(ベースは三菱ふそう・FU113S型トラック)は何度もレストアを繰り返してきたものであり、伝説のデコトラとして知られている。

ただし、本当に一時期は廃車同然の扱いをされていたという。


その一方で、ジョナサン号(ベースは三菱ふそう・T652型トラック)は最終的に廃車解体となって現存していないが、2010年代に入って群馬県にあるトラックパーツショップの手によるレプリカが制作された。


トラック野郎といえば主題歌の「一番星ブルース」をはじめ、「演歌」「歌謡曲」が劇中歌のイメージで固まっているが、初期は先述のロードムービーを手本にした為か、ロックバンド「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」による挿入歌「トラックドライビングブギ」が使われていた。


なお、愛川が菅原にまたトラック野郎の新作をやらないかと持ちかけた時、菅原はもうトラック野郎には未練が無かったという。


関連タグ編集

東映 映画 デコトラ アウトロー ロードムービー

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